ペルシャ湾のイルカ
今回は、ペルシャ湾に生息するイルカの生態についてご紹介することにいたしましょう。
ペルシャ湾とオマーン海に浮かぶ島々を訪れる人々の間では、エメラルドグリーンに輝くこの海域でイルカがさざ波に合わせて泳ぐ光景が、1つの見所として注目されています。例えば、この海域に浮かぶヘンガーム島でも、周辺海域におけるイルカの存在が島の美しさをさらに引き立たせています。
しかし、今日では人為的な原因、特に環境汚染により、この水生哺乳動物の生存に危険か忍び寄っています。このため、イルカもそのほかの水生哺乳動物と同様に、国際自然保護連合から絶滅が危惧される動物に指定されています。
イルカは、太古の昔から様々な民族の伝説や文化に登場しています。イランの文化でも、イルカはある種のシンボルとして存在してきており、色鮮やかなペルシャ絨毯の図案にもイルカがシンボル的に描かれています。
イルカは、哺乳動物の一種で海洋に生息し、体型は水中を動き回りやすい紡錘形をしています。イルカにはいくつもの種類がありますが、体の色は大抵は灰色です。また、イルカの頭部は超音波を発信、受信する役割を果たしており、さらに頭頂部にある小さな穴により呼吸しています。
イルカは、他の多くの哺乳動物とは異なり、体毛がありません。口の周りに生えているわずかばかりの毛も出生の直前或いは直後に抜け落ちてしまいます。また、イルカの多くは鋭い視力を持ち、さらにイルカが聞き取れる音の周波数の範囲は通常の人間の10倍にも及びます。
イルカは、超音波を発しその反響を聞くことで物の位置や形状を把握するという、エコーロケーション能力を持っています。また、触覚も非常に優れており、特に口の周りや胸鰭、生殖器の周りを初めとする皮膚に神経が集中しています。しかし、においを感じる神経がないため、臭覚はありません。
イルカは、社会性の高い動物であり、群れを成して行動します。また、超音波を発して仲間とのコミュニケーションをはかります。イルカの間における社会的な仲間意識は非常に強く、研究調査によれば仲間集団のいずれかの個体が負傷したり、病気になったりした場合には、そのイルカに他のイルカが寄り添い、呼吸ができるように水面にまで連れて行くことが分かっています。しかも、イルカのこのような友愛的な行動は、仲間のイルカのみならず、他の海洋哺乳動物に対しても行われるということです。
イルカがえさとする動物は多岐にわたりますが、中でも魚やイカが主流です。イルカは普通、他の魚を捕まえる際には、狙っている獲物となる魚の群れを集団で取り囲み、ボール状に結集させてから、獲物が右往左往しているところを攻撃するか、あるいは、獲物を浅瀬にまで追い込んで捉えます。
ペルシャ湾に生息するイルカは、体重がおよそ250キロから600キログラムにも及び、全長はおよそ2メートルから4メートルで、22本から26本の歯が生えています。また、通常は2年に1回の割合で出産し、生まれてくる子どもは全長1メートル、体重は15キロから30(377キロはちょっと大きすぎますよね?)キログラムほどです。イルカの子どもは、1年間に渡って母乳を飲み、寿命はおよそ26年から30年ほどとされています。
これまでに、ペルシャ湾とオマーン海では13種類のイルカの生息が確認されていますが、その中でも特に重要なものとしてウスイロイルカ、ハナゴンドウ、ハンドウイルカを挙げることができます。ペルシャ湾内でも特にイルカが集中している海域は、ゲシュム島とヘンガーム島の間の海域です。この2つの島の海岸では、小船と共に泳ぎ、戯れるイルカの様子を間近に観察できます。しかし、今日では、環境汚染などの人為的な原因により、イルカの生態が脅かされています。
国連の統計によりますと、イルカが死亡する最大の原因は人間による漁業活動とされています。一方で、ペルシャ湾に生息し、イルカのエサとなるイワシが、特にその繁殖期に人間に捕獲されて、エサがなくなってしまうことも、イルカの生存を脅かしています。さらに、イルカ自身が漁獲用の網にかかって死亡するケースも後を絶ちません。
イルカは、他の哺乳動物と同様に肺呼吸をすることから、漁獲用の網にかかってしまうと呼吸ができなくなり、死亡に至ります。或いは、他の魚と共に船舶の甲板に迷い込んでしまってから、そのストレスを受け、海中に放されたとしても命を落とすことがあります。
また、イルカの生存を脅かすその他の原因として、油田や原子力発電所からの廃棄物による温度ストレスがあります。一部の有識者は、ペルシャ湾とオマーン海を結ぶホルモズ海峡におけるイルカの死亡原因の1つとして、潜水艦を初めとする船舶が発するソナー音波が挙げられます。
ペルシャ湾とオマーン海のエコシステムにおけるイルカの重要性が否定できないものであることから、ペルシャ湾のイルカを保護するプロジェクトが立ち上げられ、この稀少動物の絶滅の阻止に向けた措置が講じられています。このことから、イランでは様々な団体や組織がイルカの保護に関する協力の意向を表明しています。
このような組織や団体は、漁村などにおける定期的な講習会の開催により、イルカの生殖の方法や時期、食形態について漁業関係者に教育を行っており、その1つにイラン南部のゲシュム島自由特別区の組織であるジオパークが挙げられます。もっとも、このような理念や措置は、ペルシャ湾やオマーン海の全ての沿岸諸国が共同でイルカの保護に取り組んで初めて、効果を発揮するものなのです。
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