デーツ・ナツメヤシの特徴
今回は、中東地域の健康食として知られるデーツ、即ちナツメヤシの特徴についてお話することにいたしましょう。
ナツメヤシは、非常に価値のある食物の1つであり、医学的な効能もあります。イスラムの聖典コーランでナツメヤシが取り上げられていることは、この食物の重要性、食物としての高い位置づけ、そして医学的な効能を示しています。
ナツメヤシの栽培は、今からおよそ8000年から6千年前、メソポタミア地方で始まりました。当時はそれ以外の果物は栽培されていなかったと考えられています。そして、おそらくそのために、ナツメヤシは常に類文明と共にあったのかもしれません。
ナツメヤシは、エジプト人の間で非常に大切にされていました。また、イラク人の間で崇拝の対象とされていたこともありました。ユダヤ教の礼拝の中心地であるソロモン神殿の壁には、ナツメヤシが描かれていました。また、ハンムラビ法典にも、ナツメヤシの栽培方法に関する戒律が見られます。さらに、メソポタミア南東部のカルデア人は、ナツメヤシを生活の樹木と見なしており、古代ギリシアでは勝利のシンボルと考えられていました。世界でナツメヤシの重要性が日増しに高まったことから、FAO・国連食糧農業機関は1987年、イラク・バグダッドにナツメヤシの研究開発所を設置しました。
コーランでも、ナツメヤシは他の果物より注目されており、およそ20回にわたってナツメヤシとその樹木の名前が出てきます。例えば、コーラン第19章、マルヤム章、「マルヤム」第23節から26節では、聖母マルヤムは神から、預言者イーサーを出産した後には、ナツメヤシを食べて栄養をつけるように勧められています。
“そして、産みの苦しみのために、彼女はナツメヤシの木の元に赴き、次のようにつぶやいた。「ああ、こんなことになる前に私は死に絶え、忘れられていたらよかったのに」
するとその時、お告げの声が聞こえた。「悲しんではならない。主は、あなたの足もとに泉と高貴な子どもを置かれた。またナツメヤシの木の幹を、あなたの方に揺り動かすがよい。新鮮な熟したナツメヤシの実が落ちてこよう。そして、食べて飲み、明るい視界が開けるようにするがよい」”
現代の学問においても、ナツメヤシの効能が指摘されていますが、その一部はイスラムの伝承に起因します。医学者の間では、ナツメヤシは、特に鉄分を初めとするミネラルが豊富に含まれていることから、出産後の女性の体の回復に大きな効果があるとともに、それらの栄養が母乳を通して乳児に行き渡るとされています。また、出産直後の女性の体からは大量の水分が失われ、またナツメヤシが水分を吸収する性質を持つことから、ナツメヤシを水分とともに摂取することで、産後の回復が早まることになります。
また、現代の科学的な研究により、ナツメヤシからはホルモンの1種であるオキシトシンに類似したホルモンが発見されています。このホルモンは、出産時の子宮の収縮を促すことにより、出産後の出血や痛みを和らげるとともに、出産時の母親の血圧の上昇を抑えるはたらきがあります。
ナツメヤシに含まれる糖分は急速に消化・吸収され、すぐにエネルギーとなることから、出産のときの母体の忍耐力を高めます。また、ナツメヤシには軟化作用があることから、分娩の進行を促します。ナツメヤシという植物性の下剤を使うことは、化学物質でできた下剤よりも大きなメリットがあります。さらに、イスラムの伝承においては、特に出産を間近に控えた時期のナツメヤシの摂取が奨励されています。
また、ナツメヤシは総合的な栄養価の点でも、水分のほか、たんぱく質や糖分、脂肪分、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄分、銅、ビタミンA,B1,B2,C、ナイアシンを含んでいます。ナツメヤシ100グラム当たり、157カロリーから383カロリーの熱量を生み出すとされ、ナツメヤシ1キロ当たりのエネルギー生産量は、肉1キロのエネルギー生産量に相当します。
今日、体内のマグネシウムが不足した場合、ガンに罹りやすくなりますが、ナツメヤシには豊富なマグネシウムが含まれていることが証明されています。食糧が少ない砂漠の民やアラブ民族は、ナツメヤシを食べているためにガンにかからないのです。
また、ナツメヤシは食物の消化・吸収を促進します。特に、体内でたんぱく質がより効果的に利用されます。
熟したナツメヤシは、医学面でいくつかの効用があり、副腎皮質ホルモンの一種であるコルチノイドに似た働きがあります。コルチノイドは、最近になって開発された高額な医薬品であり、各種の感染症や腎炎の治療に効果があります。この物質はまた、脱毛を防ぐ効果もありますが、糖尿病の患者には適していません。しかし、ナツメヤシに含まれるコルチノイドは、天然で有益な植物性ホルモンです。
さらに、ナツメヤシにはペクチン酸が含まれることから、ナツメヤシ60グラムを1リットルの水と共に沸騰させると、鼻かぜや喉の痛み、肺の感染症などの緩和に効果的です。
20世紀前半のフランスの美食評論家で、キュルノンスキーという別名でも知られるモーリス・エドモン・サイヤンは、ナツメヤシに関する著作において、次のように述べています。
「ナツメヤシは、ほかの糖分の摂取よりもはるかに栄養面で優れており、また疲労の回復にもより大きな効果がある。なぜなら、ナツメヤシの糖分は体に吸収されやすいからだ」 サイヤンはまた、スポーツ選手にナツメヤシを食べるようすすめています。
ナツメヤシは、激しい空腹を感じている人にも非常に効果があります。すぐに消化され、短時間のうちに体に必要な栄養分を全身に行き渡らせます。
イスラムの伝承においても、断食した後にはまずナツメヤシを食べることが奨励されています。栄養学の専門家の間では、ナツメヤシには単糖類であるグルコースの一種・デキストロースとフルクトースが含まれ、それらが迅速に消化吸収されることから、食欲が満たされ、また胃炎を防ぐ効果があるとされています。さらに、ナツメヤシには、断食の際に生じる血糖値の低下を抑え、体に必要なエネルギーを供給すると共に、脂肪分の蓄積や肝不全を阻止するはたらきがあります。このように、ナツメヤシは断食をする人の肝臓にもやさしく、病気に対する体の免疫力を強化します。
このように、ナツメヤシは価値のある食品です。コーランでナツメヤシに触れられていることが、その重要性を物語っています。現在でこそ、妊娠中の女性に効果があることなど、ナツメヤシのさまざまな効果が分かっていますが、それが今から1400年前にコーランですでに述べられていたことは、この聖典の奇跡のひとつです。
次回もどうぞ、お楽しみに。
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