コーランとは?(1)
コーランとはどんな書物で、どのような目的を持つのか、どのような内容なのか。その疑問に答えていきます。
「これは、我々が[汝に]下した恩恵に溢れる啓典である。だからこれに従い、敬虔さを守りなさい。そうすれば、慈悲に授かるであろう」
イスラムの聖典コーランの第6章アル・アンアーム章家畜、第155節
この番組では、聖典コーランについてお話ししてまいります。コーランとは何で、どのような目的を持つのでしょうか?また、人間の生活においてどのような役割を果たし、どのような内容になっているのでしょうか?これは、長い歴史の中で、思想家や研究者たちが研究してきた事柄です。この天啓の書物を知る方法は様々です。コーランは、神から、イスラムの偉大なる預言者に下された節が集められたものです。この永遠の書物の最大の目的は、人間に正しく生きる道を教え、人間を幸福の道に導くことです。言い換えれば、コーランは、誰でも自分の能力に応じて利用できるよう、至高なる神が、その使徒であるムハンマドを通して人々の間に広げた天の食布です。そのため、コーランの節を正しく注意深く読み、その内容を実践することが必要です。
明らかに、コーランを読み、その節の内容や意味について考えることは、この啓典を知るための最良の方法です。コーランのそれぞれの節が独自の特徴を持っており、それらについて語ることは、興味深いことであると同時に、私たちにコーランの教えや文化を総体的に教えてくれます。これについて、まずは、コーランの章や節が、どのようにして集められ、まとめられたのかを見ていくことにいたしましょう。
コーランは、天と地の主であり、全ての創造物のことを完全に知り尽くす神の言葉です。そのため、コーランは、人類を導くもの、イスラムの預言者ムハンマドの永遠の奇跡と見なされています。聖典コーランは、世界に公正を確立するための道しるべ、ふさわしい行い、信仰、思想の書物です。この書物は、人類の歴史や文明に影響を与えるための大きな可能性を有しており、社会を、正しい政策、公正な法の制定、人間性へと導きます。この聖典は、23年をかけて、様々な折に少しずつ、神から預言者ムハンマドに下された章や節の集大成です。これらの章や節が集められ、一つの完全な書物となったのです。
コーランは、一節ずつ、一章ずつ下され、それは神の最後の預言者であるムハンマドの晩年まで続きました。預言者が生きた時代、様々な出来事が起こった際や、イスラム教徒が問題に直面した際など、時にはそれらの問題について節が下されたり、また時には章が下されたりしました。それらは、「節が下された際の事柄」と呼ばれ、それらを知ることは、多くの節を正確に理解するために必須です。コーラン研究者の間では、コーランが少しずつ下された理由の一つとして、様々な節が色々な出来事に際して下され、コーランの教えが、人類社会のニーズや問題と明らかな調和が取れていたことを挙げています。コーランが少しずつ下されたことで、預言者とイスラム教徒は、常に、自分たちは神の特別な恩恵を授かっている、至高なる神は自分たちの加護者だと感じていました。それが継続的に下されたことで、彼らの心には信頼と安心が生まれていました。
このように、イスラムの戒律、法則、信条は、神の啓示を通して預言者に届けられ、預言者ムハンマドは、その書物の節を人々に伝えていました。コーランの節の驚くような魅力や表現力、文章のなめらかさと、神の言葉を覚えようとするイスラム教徒の熱情により、彼らはそれらの節をあっという間に暗記してしまいました。コーランの節が下されるたびに、預言者はそれらを繰り返し、自分自身もそれらを暗記するとともに、啓示の記述者がそれらを記録できるようにしたのです。節の記録者は、「啓示の書記」として知られ、その最も著名な人物は、シーア派初代イマーム、アリーです。
啓示の書記は、下された節を、当時の可能性に従い、木の皮や葉、あるいは動物の皮、骨や石、陶器の上に記していました。最初に下されたのは、第96章アル・アラグ章凝血の最初の数節で、それはムハンマドが預言者に任命されると同時に行われました。その後、しばらくの間、一節も下されませんでしたが、再び復活しました。
一章の節は、大抵、それらが下された順番に従って記されていましたが、預言者から、どこの場所に、どの章に入れるかについて、特別な指示があった場合のみ、例外でした。次々に少し間隔をあけて、あるいは間隔をあけずに下された節は、啓示の書記が、「慈悲深く、慈愛あまねき神の御名において」という節が下るまで、次々に記録していきました。この言葉がくれば、新しい章に入ったことの合図になります。下された言葉は、まとめられるまで預言者の家に保管されていました。
コーランの節は、預言者が亡くなる前日まで下されました。そのため、多くの宗教学の専門家によれば、預言者が亡くなる前に、コーランの全ての節は記録されていましたが、一つの書物としては整理されていませんでした。そのため、それは預言者が亡くなった後に行われました。そして預言者は、そのような重大な責務をイマームアリーに委ねたのです。イマームアリーは、コーランを下された日付に従って整理していきました。
3代目カリフ、オスマーンの時代、コーランの朗誦方法について見解の対立が起こりました。そのため、全ての写本を集め、最もよく知られる朗誦方法に基づいて、一つの写本を作る作業が行われました。このコーランの収集は、イマームアリーにも認められました。内容を統一するために、その写本から、そっくりそのままの幾つかの写本が記され、それらはメッカ、バスラ、クーファ、エジプト、イエメン、現在のシリア、バーレーンに送られました。また原本となる写本は、メディナに保管されていました。
現在のコーランに見られる順番は、章や節が下された時期、つまり時系列ではありません。これまで、コーランの章や節が下された時期的な順序については、多くの研究が行われてきました。概してコーランには、6200を超える節があり、それらは30の部分に分けられ、それぞれがさらに4つに分けられます。それぞれの章は、「節」と呼ばれる幾つかのまとまりや文章を含んでいます。第9章タウバ章悔悟を除く全ての章は、「慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において」という言葉で始まります。最も長い章は、第2章アルバガラ章雌牛で、286節あります。一方、最も短い章は、第108章アル・カウサル章潤沢で、3節しかありません。
コーランは全部で114章です。章はコーランの一部であり、様々な意味を有しています。章を表す「スーレ」という単語は、「スール」という言葉に由来しています。スールには、柵や壁によって周囲から切り離された町など、様々な意味があります。114章のそれぞれに名前がつけられていて、その名前は多くが、そこで語られている内容、特に強調されている内容など、重要な問題に沿ったものとなっています。中には、名前が複数ある章もあります。例えば、第1章には、20を超える名前があります。この他、一部の章には人物の名前がつけられています。ユーヌス、フード、ユーソフ、イブラヒーム、ムハンマド、マルヤム、ログマーン、ヌーフなどがそれにあたります。その他、ただのアルファベットが名前になっている章もあります。他には、自然の現象、動物、社会的なグループ、歴史的な出来事などの名前がつけられています。
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