金曜広場 2018年 5月18日 【山口・芝田】
金曜広場 2018年 5月18日 【山口・芝田】
(山口)さて、暦の上では5月も半ばを過ぎて、すっかり初夏の陽気となりました。「目に青葉山ほととぎす初鰹」といわれるように、新緑のきれいな季節を迎えていらっしゃることと思います。確か日本では先月末に、早くも真夏日を記録したとのニュースを、インターネットで見ました。特にテヘランは春と秋の陽気の本当にいい時期はあっという間に終わってしまって、すぐに暑さや寒さがめぐってくるという感じがしますが、芝田さんはどう感じますか?
(芝田)そうですよね。テヘランは日本に比べて、春と秋が短いです。今年の春も、4月の初めにすでに気温が30度近くまで上がって、このまま夏になったらどうしようと思っていたら、少し気温が下がりました。日本もなんだか、暑くなったり寒くなったりを繰り返しているようで、この時期はお天気がめまぐるしく変わるので、体調管理も大変です。
(山口)そして目下、イランをはじめとするイスラム圏は聖なる断食月・ラマザーン月に入っています。日照時間が長い中での断食は、決してたやすいことではないと思いますが、聖なる目的達成のため、また日ごろの自分の言動を見直し、修正するための絶好のチャンスでもあります。ついこの間のノウルーズという祝祭モードとは違って、独特の厳粛なムードが漂っていますが、現在が聖なる月であるということを再認識して、日々の言動にもいっそう注意を払っていきたいと思います。
●リスナーより
「ノウルーズ期間中のイランのテレビ放送は、特別番組が多いですか」
●ラジオより
(山口)F・Yさん、ご質問有難うございます。ノウルーズは、革命記念日や断食明けの祝祭などと並んで、イランで盛大に行われる祝祭の1つですが、その前から皆さんとてもご熱心に準備をされてますよね。それから、ノウルーズ期間中の旅行や帰省による「民族の大移動」も風物詩といえるかもしれません。そしてもちろん、イランのテレビ番組でも年が切り替わる瞬間までのカウントダウン、そして切り替わった瞬間に「新年おめでとうございます」と発表する番組は、かなり華やかですよね?
(芝田)そうですね。今年は見落としてしまったのですが、イランのテレビドラマで人気のある俳優、女優さんが出てきたりしているのを、見たことがあります。カウントダウンも、年が移り変わる何時間も前から生放送で、いろいろなゲストが出てきて、スタジオの装飾も凝っていますし、確かに本当に華やかです。
(山口)ノウルーズ期間のみならず、最近イランのテレビ番組も、宗教やコーランの専門のチャンネルをはじめとして、健康に関するチャンネルやお料理番組、ドラマ、旅行、クイズ番組など、以前より番組内容やチャンネル数も増えてバラエティ化しているようです。放送局はやはり視聴者がいなければ成り立ちませんから、放送する側も時代のニーズに合わせて視聴者を獲得すべく、いろいろ知恵を絞っているのだと思います。最近のイランの世相を知るうえでも、また、より高度なペルシャ語の習得のためにも、イランのテレビやラジオの放送番組はとても有益だと思いますので、これはぜひ活用したいですね。
●リスナーより
「イランの新年に欠かせない飾り物のハフトスィーンについて、最近金魚を飾る事を省いている傾向が見られるということがSNSでいわれているのですが、実際はどうなのでしょうか」
●ラジオより
(山口)K・Oさん、いつもお便り有難うございます。イランのノウルーズの縁起物には、いわゆるハフトスィ―ンと呼ばれる7つの縁起物のほかに、コーラン、生命と創造の象徴である卵、透明性の象徴としての鏡、春の訪れを知らせるヒヤシンスの花、そして財産や労働の繁栄を意味するコイン、さらに金魚などが添えられることが多くなっています。ちなみに、ゾロアスター教徒の場合は、コーランの代わりにゾロアスター教の聖典であるアヴェスターが添えられているのを見たことがあります。では、金魚は何を意味するかというと、イラン暦の最後の月であるエスファンド月(魚座の月)に由来し、活力や人生を象徴しているということです。実は今回、我が家でもノウルーズの縁起物に金魚を飾らなかったのですが、実は今年は、年始回りのほかにも所用で出かけることが多く、きちんとエサをあげられないことが予想されたためなんです。イラン人の全てのお宅で、7つの縁起物のほかにも先ほどご説明したようなものを、全部きちんと飾っているというわけではないと思います。一番大事なことは、みんなが無事にそろってノウルーズを迎えられたことであって、縁起物は主要な7つのもの以外は、それほど厳密にしなくてもよいのではと思いますが、いかがでしょうか?
(芝田)そうですね。私はこの金魚が飾られなくなった理由について、やはり、死んでしまう金魚が多くて、金魚の命を大事にしよう、安易に生き物の命を無駄にしないようにしよう、という呼びかけから、こうした傾向になったと聞きました。とはいえ、今年も道端ではたくさんの金魚が売られているのを目にしたんですが、実際はどうだったのでしょうか。私も飾り物の一つであるヒヤシンスの花、お正月前にはお花屋さんの前にたくさん飾られていてきれいだったじゃないですか。本当に買いたい、買いたいと思っていたんですが、私の家は日当たりも悪くて、鉢植えがすぐに枯れてしまいます。何年か前にも植木鉢を買ってすぐに枯らしてしまったことがあったので、それからはなるべく、我慢するようにしています。
(山口)とにかく、このノウルーズの祝祭は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されていますし、世界でイランをはじめその近隣諸国、中央アジア、コーカサス、それ以外の地域に移住したイラン人を合わせると、延べ3億人もの人々により執り行われているということです。今後、この祝祭はますます世界での認知度も上がって、さらに広い地域に伝播することが予想されます。
●北川アナウンサーによるイラン音楽のコーナー
●リスナーより
「驚くようなニュースがありました。警察の部下が、上司を射殺する、また14年前に起きた女子高生刺殺事件の犯人が逮捕されたとか。イランでは、驚くようなニュースはありますか?」
●ラジオより
(山口)M・Sさん、お便りありがとうございます。忌まわしい事件というのは、いつの時代にも、どこの国や地域でも発生するとは思うのですが、最近は情報手段の発達もあいまって、非常に巧妙な手口による犯罪が世界的にも増えているのではないでしょうか。ネット犯罪などはその典型で、以前なら考えられなかったと思いますが、いかがでしょう?
(芝田)そうですね。。。イランで驚くようなニュースは最近、目にしていないですが、それにしても、死刑が執行されるニュースが多いと感じています。あとは最近、テヘラン市内の中心部を、午前6時半から午後7時までの間に自家用車で通行したい場合、あらかじめ登録し、通行料を払わなければならなくなったことが、ちょっと印象的なニュースでした。
(山口)それから、恥ずかしながらついこの間まで知らなかったのですが、ビットコイン(仮想通貨)の出現も、私のほうが時代遅れなのかもしれませんが、ちょっと信じられないというか、いまひとつ理解しにくいという感じがします。これについては、あるリスナーさんからコメントが届いているようですので、ご紹介します。
●リスナーより
「ビットコインは、興味がないので価値が下落してもどうでもいいのですが、仮想通貨といわれているように実体のないものにお金を出せません」
●ラジオより
(山口)H・Kさん、お便りありがとうございます。ビットコインも、やはりバーチャル空間の産物なのでしょうか。それこそ実体がなく、奇妙なものだと思いますが、いかがでしょう?
(芝田)そうですね・イラン人の間でも一時期、ビットコインを購入する人が増えたようですが、最近では落ち着いてきているみたいです。
(山口)やはり何事も、ほどほどにしておくのが一番ということでしょうか。先進技術もあまり発展しすぎると、悪用されたり極端に走って、そのとばっちりが結局自分に帰ってくることになりますよね。どのような先進技術や文明の利器も、使い方に注意したいものです。
●インタビューコーナー
ゲスト;東京大学人文社会系研究科博士課程 水上 遼さん
聞き手;北川修一アナウンサー
このインタビューの続きは、来週またお届けします。どうぞご期待ください。