6月 30, 2018 22:04 Asia/Tokyo
  • 洞窟の民
    洞窟の民

今回も前回に引き続き、信仰を持つ勇敢な人々の物語をお届けしましょう。抵抗によって唯一神信仰の精神を蘇らせたために、神からの導きを増やされた洞窟の民のお話です。

洞窟は、非常に高い場所にあり、太陽の光が時折、山の割れ目から差し込んでいました。もし注意深く見る人があれば、その洞窟に、信仰を持った勇敢な人々の姿を認めていたことでしょう。彼らはダギヤーヌースの圧制から逃れ、洞窟の中に身を潜めていました。そして目を開いたまま、深い眠りについていました。彼らは時折、右から左へ、左から右へと寝返りを打っていました。

 

昼近くなって、洞窟の入り口に足を広げていた犬が目を覚まし、洞窟の人々も、一人、また一人と目を覚ましていきました。一人が尋ねました。「どのくらい眠っていたのだろう?」 まだ寝ぼけた様子のヤムリハが答えました。「ずいぶん長い時間、眠っていたような気がするが、あなたはどう思う?」 マクスィー・ミリヤンは言いました。「空腹も感じるし、体が弱っているような気がするから、きっとまる一日眠っていたに違いない」 すると別の一人が言いました。「私たちは朝に眠ったはずだ。まだ太陽が沈みかかってはいないのだから、昼のうちの数時間の間、眠っていたのだろう」 

 

ヤムリハは、彼らの言葉を遮って言いました。「こんなことで話し合うのはやめにしよう。神が、私たちの眠っていた時間をよりよくご存知のはずだ。今は、誰かが町に行き、誰がより清らかな食料を持っているかを確かめ、そこから少し用意して、ここに持ってくる必要がある。だが、誰にも私たちの状況を悟られないように、十分注意しなければならない。気づかれてしまえば、私たちは石打ちの刑に処されるか、または以前の教えに戻されてしまう。そうなれば、救われることはないだろう」

 

マクスィー・ミリヤンが立ち上がって言いました。「私が食料を用意するために町に行こう」 そして、洞窟から出て行きました。洞窟を出ると、奇妙な不安に教われました。彼は恐怖と不安に駆られながら、辺りを見回していました。町に着くと、マクスィー・ミリヤンは考えました。「不思議だ。町の様子がずいぶんと変わっている。建物はすっかり姿を変え、人々の着ている物も、見たことがないようなものだ。一体、何が起こったというのだろう。私は道に迷ってしまったのだろうか」 マクスィー・ミリヤンは、急いで一件の店を訪れ、そこで数枚の硬貨を店の主人に渡し、食料を買いました。すると、店の主人は驚いた様子で硬貨を見つめ、尋ねました。「若者よ、あなたは財宝でも見つけたのですか?」

 

マクスィー・ミリヤンは言いました。「いいえ。この金は、昨日、手に入れたばかりのものです」 店の主人はあざ笑いを浮かべて言いました。「でも、この硬貨が鋳造されてから、300年以上が過ぎています」 彼らの会話が激しさを増していったため、次第に人々が集まってきました。マクスィー・ミリヤンは、驚いたまま、ダギヤヌースの軍勢が、今にもやって来て、彼を捕らえてしまわないかと、そればかりを恐れていました。すると、人々の中の一人が言いました。「恐れることはありません。あなたの言う王様は、300年前に亡くなりました。今は唯一の神を信じる王様が統治しています」

 

マクスィー・ミリヤンにとって、すべてのことが夢のようでした。彼は、友人たちと共に、あの多神教崇拝に穢れた環境から救われたことを知りました。しかし、人々と彼らの間には、深い溝が出来ていたのです。彼は王様のもとに連れて行かれました。王の側近たちは、マクスィー・ミリヤンに言いました。「過去の歴史に、信仰を持った若者たちのことが記録されています。彼らは圧制と偶像崇拝から逃れるために洞窟に行き、それから二度と戻らなかったと」 マクスィー・ミリヤンは悲しそうに言いました。「私が洞窟に戻って、友人たちに全てを話すのを許可してください。今頃彼らは、私のことを心配しているでしょう」 王様は言いました。「私たちもあなたと一緒に行きます。あなたたちの友人を実際に見て、あなたが私たちに本当のことを言っているのかを明らかにするために」

 

町では至る所で、洞窟の民のことが噂されていました。人々はところどころに輪を作って、それぞれが思い思いのことを語っていました。一人が言いました。「大きな奇跡だ。何人かの人間が、王様の宮殿での生活を捨て、信仰を守るために洞窟に逃げ、300年経った今になって、この世界に戻ってくるとは」 別の一人が言いました。「神はこのしるしによって、私たちが再び蘇らされることを証明されたのだ」 また別の一人は言いました。「その通りだ。私たちは今、神の復活の約束が真理であり、現世の終わりと最後の審判に疑いはないことを悟るべきだ」 マクスィー・ミリヤンは、集団の先頭に立って進んでいました。洞窟の近くに着くと、彼は言いました。「あなたたちはここで待っていてください。もし突然、私の友人のもとに姿を現せば、彼らは恐れてしまうでしょう。私は彼らに、まずこの事実を受け入れる心の準備をさせなければなりません」

 

マクスィー・ミリヤンは洞窟の中に入って行きました。そして、それまでのいきさつを友人たちに語って聞かせました。それからこう言いました。「今、私たちを知る者は誰もいません。彼らとも、何百年も離れた遠い存在です。だから、信仰のもとでのこの生活は、とても苦しいものになるでしょう。さあ、祈りましょう。私たちを神のもとへと立ち返らせ、慈悲を与えてくださるよう、神に求めるのです」 洞窟の民が祈りを捧げてからまもなく、彼らの魂の抜けた亡き骸が、地面に倒れました。

 

しばらくの時間が経っていました。王様とその側近たちは、何も起こらないのを見て、自分たちから洞窟の上に登っていきました。しかしそこには、数人の遺体があり、彼らの顔には独特の光りと輝きがありました。そのとき、2つのグループの間で対立が起きました。この驚きの事実を忘却に追いやりたかった人々は、言いました。「洞窟を埋めて、彼らを永遠に、人々の目から隠すことにしましょう」 しかし、この洞窟の民の物語を、人々のために、最後の審判と、信仰の道における抵抗や忍耐の記憶として留まらせたかった人々は言いました。「彼らの記憶が忘れられないように、この傍らに礼拝所を作りましょう」 

 

現在、考古学者たちは、ヨルダンで、この礼拝所と洞窟の痕跡を発見しています。この物語は、コーラン第*章アル・キャハフ章洞窟の、第9節から26節で述べられています。