7月 03, 2018 21:36 Asia/Tokyo
  • カアバ神殿
    カアバ神殿

今回の物語は、イスラムの預言者ムハンマドの時代に起きた出来事つまり礼拝の方向の変更について語っています。

イスラム教徒はひしめきあいながら礼拝の列に並んでいました。あたりは一体感に包まれ、「神は偉大なり」の声と共に、全ての存在物が頭を垂れ、唯一の神の偉大さを証言しているかのようでした。そのとき、遠くからこの光景を眺めていたユダヤ教徒たちが預言者に近づいて来ました。彼らは預言者とイスラム教徒の言葉を聞こうとしていました。一人がこう言いました。

 

「知っているか?ムハンマドは、私たちの宗教は真理だといっている。だが彼らはまだ、自分たちの礼拝の方向さえ決まっていない」

 

別の一人が言いました。

 

「そうとも。彼は13年間、メッカでベイトルモガッダスに向かって礼拝を行ってきた。そして今もまた、メディナで私たちユダヤ教徒の礼拝の方向に向かって祈りを捧げている」

 

また別の一人も言いました。

 

「これは私たちの宗教が正しいものであることを示している。私たちはイスラム教徒を蔑むべきだ」

 

 

礼拝が終わり、ユダヤ教徒の嘲笑を悲しんでいた人々は、神にご加護を求めながら、それぞれの場所へと帰っていきました。預言者ムハンマドも家に帰りましたが、夜中に家を出ると、空を見つめました。その日から毎晩、預言者はその行為を繰り返し、何時間も空を見つめていました。何か重要な出来事が起こるのを待っているかのようでした。預言者の周りの人々は、一体何が、偉大なる預言者にそのような行動を取らせているのかと不思議に思っていました。

 

 

暑い日のことでした。正午になり、礼拝の時刻を告げるアザーンが人々をモスクへと向かわせていました。礼拝者たちは、いつものようにバニーサーレムのモスクにやって来て、預言者の後ろに立ちました。神の預言者ムハンマドは、正午の礼拝をベイトルモガッダスに向かって行いました。そのとき、神の啓示が預言者に下りました。

 

「預言者よ、我々は汝の期待を込めた天へのまなざしを知っている。今、汝も満足するような礼拝の方向へと汝を向かせる。だから汝はカアバ神殿のあるマスジェドルハラームの方を向きなさい。そしてどこにいようとも、その方向を向くがよい」

 

大天使ジブライールは、礼拝の方向が変更されたことを告げ、預言者が礼拝を続ける中、そのままカアバ神殿の方向へと向かせました。預言者の後ろに立っていた礼拝者たちは非常に驚きましたが、神の預言者に従い、全員がメッカの方向を向き、そのままカアバ神殿に向かって礼拝を続けました。

 

礼拝が終わると、「神は偉大なり」の叫びがモスクに響きました。イスラム教徒は、預言者に神の啓示が下ったことを喜んでいました。そのとき、何人かのイスラム教徒が預言者のもとにやって来て言いました。

 

「礼拝の方向を変えたことが、ユダヤ人を悩ませるのは好ましいことではありません」

 

そのとき、再び神の啓示が預言者に下りました。

 

「預言者よ、我々が、以前にそこを礼拝の方向に定めたのは、ただ、預言者に従う人々と、無知に戻る人々を見極めるためであった」

アクサ-モスク

 

礼拝の方向が変更されたことは、イスラム教徒を互いに近づけ、彼らの連帯を強めました。驚いたイスラム教徒の敵たちは、様々な風聞を流しました。

 

「ムハンマドははじめ、過去の預言者たちの礼拝の方向に注目していた。それなのに今、数々の成功を手にし、自分たちが優位であることを示そうとしている」

 

別の一人は言いました。

 

「彼はユダヤ教徒とキリスト教徒の注目を惹きつけるためにベイトルモガッダスに向かって祈っていた。だがそれが功を奏さなかったため、今、カアバ神殿に向かって礼拝を行っている」

 

預言者の周りにいた人々は、預言者の光り輝く表情が変化し、このような神の節を呟いているのを聞きました。

 

「まもなく愚かな人々は言うであろう。『イスラム教徒は何のために、以前の礼拝の方向に顔を背け、カアバ神殿の方を向いたのか』と。預言者よ、言え、『東と西は神のものである。神を求める者は誰でも、正しい道へと導かれる』」

 

今回紹介した物語は、コーラン第2章アルバガラ章の第141節から144節に述べられています。

 

 

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