7月 14, 2018 23:36 Asia/Tokyo
  • イラン南東部ケルマーン州にあるマーハーン庭園
    イラン南東部ケルマーン州にあるマーハーン庭園

今回は、イラン式の庭園を構成する要素について見ていくことにいたしましょう。

これまで数回に渡り、イランの様々な時代の庭園作りの歴史についてお話してきました。イランの庭園作りには古い歴史があり、その古さを示す資料も残っています。イランの広大な地理や多様な気候により、歴史の中で、様々な種類、スタイルの庭園が造られてきました。

 

イランの庭園作りでは、自然の要素と独自の建築の融合が見られ、それがイランの庭園を、外国の公園や自然の空間よりも優れたものにしています。庭園の建築と共に、植物、水、空気、光といった自然の要素が重要な役割を果たし、人間の精神的なニーズを満たしています。この中でも特に重要なのは、植物と水の2つの要素です。庭園に存在する他の要素は皆、水と植物によって引き立てられ、それぞれが独自の魅力を持っています。

イラン中部カーシャーン市にあるフィン庭園

 

庭園に水が存在し、それが動きを持っていることが、イランの庭園に共通する最大の特徴です。庭園の様々な箇所に水が流れていれば、大気の湿度が高くなり、イランの乾燥した空気に非常に適したものとなります。また水は環境を美しくする要素として価値が高く、コーランでも繰り返し、楽園の最大の特徴として水の存在が挙げられています。水は、生きていく上で欠かせない要素として、イランの庭園でも決定的な役割を果たしています。それぞれの庭園には、一つ、あるいはそれ以上のカナート・地下水路や泉があり、常に流れを持っています。水は大抵、初め庭園に入り、その中を完全に潤した後、農業など、別の用途に使用されます。イラン式庭園は、地面の傾斜や水が流れる方向に合わせて造られています。水不足によって、設計者はイニシアチブを発揮し、庭園の中の水の巡りをよくし、それを美しく見せようと努めています。そのため、庭園の中に様々な形の噴水や池、プールや小川、滝などが活用されています。

 

庭園の中央に水を導き、庭園内の植物を潤したり、庭園の外に流したりするため、削った石を並べて作った水路が利用されています。これらの水路の底には、時に水色のタイルが敷き詰められることもあります。イランの庭園やイラン人の家にある池は大きな重要性を持っており、様々な形のものが見られます。大抵、池やプールは家や庭園の空間の中央に造られます。その長さは、家や庭園の空間の長さに匹敵するものであり、そこに水がたまると、周囲の水路に流れ出るようになっています。

イラン中部ヤズド州にあるドーラト・アーバード庭園

 

イランの芸術家は、生きる上で欠かせない要素であり、また空気を清浄かつさわやかに保つ要素である水を利用するために、噴水や小川、池によって自らの才能を発揮しています。池やプールの水は、庭園に安らぎや静けさを与えます。水深のあるプールは、水を蓄える役割を担っています。その代表的なものは、イラン北西部・タブリーズにある**庭園のプールで、広さは5万4675平方メートルです。水深の浅いプールは、メインの建物の前に置かれたり、時には、さらに小さなものが、メイン通りが交差する場所やあずまやの前に置かれます。これらの噴水は、池の部分が浅く広くなっており、たいてい、青いタイルで覆われ、植物の次に、庭園の空間を飾る重要な要素となっています。

 

 

あずまややエイヴァーン・テラスの姿を映し出し、その魅力を倍増させるような大きなプールや池の設計では、次の3つの技術的な点が注目されています。一つ目は、水深がある程度なければならないことです。二つ目は、プールの壁が暗い色であること、これは、壁が白やトルコブルーなどの明るい色で覆われると、建物ではなく、池の底が水面に映ります。そのため、池の壁は暗い色で覆われる必要があるのです。三つ目は、重要な物質的原則で、池の場所から建物までの距離で、それは建物の高さに合わせて変化します。概して、多くの池やプールは四角形をしており、自由な曲線のものは、円形以外、見られません。

イラン南部シーラーズにあるエラム庭園

 

一部の庭園では、一部の自然の要素により、庭園の中にあずまやのような建物が造られ、その場合、大きなプールや池も、庭園の中央や、メインの通りが交差する場所に置かれていました。タバスのゴルシャン庭園は、四角形の敷地の中央に池が置かれた代表的な例となっています。

 

植物も、イラン式庭園を飾る重要な要素の一つです。イランの庭園に見られる植物は、日陰を作ったり、美しく飾ったり、また果実を収穫したりする目的で栽培されています。植物の多くは、果実や日陰ができるもので、観賞用の花や植物の割合は少なくなっています。それらの植物は、樹木、観賞用の花、潅木の3つのグループに分けられます。イラン式庭園の樹木は、観賞用のものと、果実をつけるものの2種類があります。観賞用の樹木は、柳やプラタナスなどで、庭園に日陰を作り出すために利用されています。庭園の中央には、杉やプラタナスなどの木が並べられており、多くの場合、杉とプラタナスが交互に植えられています。一年の四季の移り変わりの中で、プラタナスの木が葉の色を変えたり、葉がすっかり落ちたりする一方で、杉の木は常に緑の葉をつけており、それが庭園の雰囲気に多様性をもたらしています。プラタナスは春と秋が美しく、冬の間は、杉の木の存在によって、庭園の緑が保たれます。概して、プラタナスや杉の木は人々に好まれ、これらの木の高さと葉っぱの多さが、イラン式の庭園に緑の空間を作り出す上で重要な役割を果たしています。

 

アーモンド、桃、りんご、ピスタチオ、クルミ、オレンジ、レモン、チェリー、西洋梨、サワーチェリー、イチジク、ザクロなどの木は、果実をつけるグループに入ります。これらの木は張るには色とりどりのつぼみをつけ、夏と秋には果物をつけるため、多くの庭園では、広範囲にわたって果樹が栽培されています。観賞用の花は、通常、建物の前の花壇や入り口、中央の通路に植えられています。