8月 09, 2018 19:11 Asia/Tokyo

イランは一年を通して多様な気候を有しています。この気候条件に合わせた伝統的な建築は、科学的、芸術的な方法により、人々が暮らしやすい環境を整えてきました。

イランの伝統建築を見ると、空気、光、太陽の熱などの再生可能なエネルギーが重視されています。この時間は、こうしたエネルギーの利用について見ていきましょう。

 

イランの伝統建築は、原材料などのコストを抑え、エネルギーを効果的に利用することが考慮されています。

 

例えば、雨や雪と、人々の日常生活における水の重要性に注目し、浄水と水資源の保護は、常に注目されてきました。イランの人々は、イスラム前も清潔さを重視していました。しかし、イスラムが入ってから、その傾向がさらに強まり、公衆浴場は、モスクや学校の次に都市の重要な建物となりました。

 

イランの伝統建築で最も重要な建物のひとつは、中部のイスファハーンにあるシェイフバハーイーの公衆浴場です。これは、さまざまな可能性を利用するための独創性が発揮された完全な例です。この公衆浴場の建物は、サファヴィー朝とガージャール朝の時代のもので、複雑なシステムにより、長い間、1本のろうそくによってのみ、熱が保たれていました。

シェイフバハーイー公衆浴場

 

この公衆浴場がたった一本のろうそくによって、どのように温められていたのかについては、多くの説があります。しかし、最も確かなのは、地下に陶器製の管が通されていたというものでしょう。

 

この地域の考古学調査により、イスファハーンの下水がこの公衆浴場に入っていたことが分かっています。実際、シェイフバハーイーは、正確な計算によって、下水がメタンガスに変わるように浴槽を設計していました。

 

都市の設計、特に砂漠地帯の都市設計は、伝統的な建物が連なり、背の高い壁と狭い路地により、太陽の強い日差しが最小限になるように設計されていました。これらの要素により、影が多くなり、人々が町の中を歩けるようになっていました。

 

歩道に屋根があるために影ができ、それは町のいたるところで見られました。これらの屋根は、イランではサーバートと呼ばれ、歩行者が暑さをしのぎ、周囲の家の壁に影を作るために利用されています。

 

熱帯乾燥地帯の家の設計では、出来る限り多くの影が作られていました。これらの家では、空間を利用し、太陽の熱や光によって、家の中の各部屋にさまざまな環境が作られるようになっていました。季節ごとに、光の加減によってそれぞれの部分が利用できるようになっていたのです。

 

通常、南側の部屋は、夏に利用されていました。また、北の部屋は冬用とされ、住民は北の部屋で過ごしていました。言い換えれば、これらの家に住む人々は、季節ごとにその変化を利用して、生活空間を変えていたのです。

カーシャーンのアーメリーの邸宅

 

イランの伝統的な家では中庭の影を増やすために、他にもさまざまな方法が用いられてきました。風を取り込むためのバードギールや、一部の地域における中庭の穴の存在などです。また、浅い池の周りに木や花が植えられることもありました。

 

中庭に木を植えて影を増やすことにより、温度が下がり、空気もきれいになって湿度が上がりました。これは、中庭の周りにある部屋を涼しくすることにもつながり、冷房を使う必要性を減らしていました。

 

一本の木を植えることで、一日に20時間、普通の広さの部屋10室分を冷やすほどの効果があると言われています。中庭に植えられた木や植物は、天然のクーラーのような役割を果たしていました。

 

一方、中庭の周りに厚い壁がめぐらされることで、熱が逃げないようにされていました。これらの壁は、冷気を夜の間に集め、それを少しずつ、気温の上がる昼間に解放していました。

 

中庭のある多くの家は、周囲を壁で囲まれていました。最も背の高い壁は南側のもので、高さはおよそ1メートル中庭よりも高くなっていました。

カーシャーンにあるタバタバイーの邸宅、イランで最も美しい歴史的建造物のひとつ

 

それほど遠くない昔、イランの熱帯地域の家の壁は、厚さがおよそ1メートルありました。これにより、熱が壁の内側に残るため、気温の変化が感じられにくくなっていました。夜の間、壁は熱を失い、昼の間もその熱を低く抑え、住民に過ごしやすさを提供していました。このように、土が熱を緩和する役目を果たしていました。

 

適切な資材が使われていたこと、厚い壁が建てられていたこと、バードギールが使われていること、これらは、熱帯乾燥地域の特徴でした。伝統的な家の資材、特にバードギールはレンガでできていましたが、この地域の気温が変化しやすいことから、この資材の利用は非常に適していました。

 

寒冷地域でも、建築では、住民を寒さから守ると同時に、エネルギーを節約するような方法が追求されています。

 

例えば、建物の中央に台所などの暖かい空間が置かれています。また、建物の内部の熱が保護されるよう、太陽の光の方向を考慮して中庭が作られています。さらに、部屋の床の温度が保たれるように石が使われています。

 

概して、寒冷地帯の建築では、建物の風や寒さの影響を減らすことが考慮され、太陽のエネルギーが部屋を温めるのに利用されるとともに、水や土などの自然の要素が重視されています。

 

伝統建築において、環境への適合が考慮された方法は、現代の建築にとっても学ぶ点が多くなっています。特に、環境を保護するために、クリーンなエネルギーを合理的に利用することで大きな歩みを進める必要があるでしょう。