光の彼方への旅立ち、アル・ゲサス章(1)
コーラン第28章 アル・ゲサス章 物語り 第1節~第4節
慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において
第1節
「ター・スィーン・ミーム。」 (28 :1)
طسم!
第2節
「これは明白な書物の節である。」(28 :2)
تِلْکَ آيَاتُ الْکِتَابِ الْمُبِينِ (2)
第3節
「[預言者よ、]我々はムーサーとフィルアウンの運命の一部を、信仰を寄せた人々のために正しく汝に読み上げる」 (28 :3)
نَتْلُو عَلَيْکَ مِنْ نَبَإِ مُوسَى وَ فِرْعَوْنَ بِالْحَقِّ لِقَوْمٍ يُؤْمِنُونَ (3)
ナムル章が終わり、今夜からは、次のアル・ゲサス章に入りました。この章は全部で88節あり、イスラムの預言者ムハンマドがメディナに移り住む前にメッカで下されたものです。この章のほぼ半分の40節までは、預言者ムーサーの誕生、幼少時代から結婚と、その後預言者としての使命を授かった人生が述べられています。
アル・ゲサス章もまた、コーランの他の28の章と同じように、アラビア語の独立したアルファベットで始まり、その後すぐに、天啓の書の節に触れています。神が永遠の奇跡である天啓の書物の節を、誰もが理解できるアルファベットで始めているのは、“可能であれば、同じものをもたらしてみるがよい”と、おそらく私たちに挑戦しているためだということを以前にもお話しました。コーランはすべての節が明白であり、真理と偽りが明確に区別され、正しい道が示されている書物です。
この節は続けて、フィルアウンの時代の預言者ムーサーの物語について触れています。「我々はこのコーランの中で、事実に反する誤ったあらゆる内容から遠ざかり、事実のみに基づいて、過去の民や預言者の運命を述べている。それは、敬虔な人間に、信仰を持った善良な人間が、かつて、どのような災難や困難に直面していたか、彼らがその当時の困難に、どのようにして耐え忍んだかを知らせるためである。」
第1節~ 第3節の教え
● 神の掟は歴史の中で不変のものであり、過去の民たちに関する神の掟を知ることは、私たちと未来の人たちにとっても教訓となりえます。
● 偶像や圧制者と戦うのが神の預言者たちのやり方です。敬虔な人々は、預言者たちの道を手本にすべきです。
● コーランの物語は、皆、事実に基づいたものであり、そこに事実に反する内容や伝説、空想は存在しません。
第4節
「まことにフィルアウンは、[エジプトの]地において横暴を極め、人々の間に分裂を生み出した。彼らの一団を無力にし、男児の首を切り、女性たちを生きたままにした。本当に彼は堕落した人間だった」 (28 :4 )
إِنَّ فِرْعَوْنَ عَلاَ فِي الْأَرْضِ وَ جَعَلَ أَهْلَهَا شِيَعاً يَسْتَضْعِفُ طَائِفَةً مِنْهُمْ يُذَبِّحُ أَبْنَاءَهُمْ وَ يَسْتَحْيِي نِسَاءَهُمْ إِنَّهُ کَانَ مِنَ الْمُفْسِدِينَ (4)
この節は、フィルアウンの横暴な性質に触れ、こう語っています。「フィルアウンは、イスラエルの民を弱いままにとどめて彼らへの支配を続けるため、さまざまな手段を用いていた。彼は人々の間に分裂を生じさせ、彼らが団結して自分の圧政的な政権に敵対するのを防ごうとした」
現在も、「分裂を生じさせて支配する」という政策が、他の国や国民を支配するための手段として、大国に利用されています。
フィルアウンは、エジプトにもともと住んでいたコプト人に生活上のさまざまな可能性や福祉を与え、統治体制のあらゆるポストを彼らにゆだねていました。それに対し、エジプトに移住してきたイスラエルの民は、召使いや奴隷として、コプト人に仕え、困難な仕事を任され、最低限の生活を送る権利すら与えられていませんでした。
フィルアウンは、イスラエルの民から危険を感じたため、イスラエルの民の間に子供が生まれたとき、その子が女の子であれば生かしておき、召使いにするが、もし男の子であれば、殺害するよう命じました。彼はこのような方法により、イスラエルの民の若者や男性の人口の増加を防ぎ、彼らが統治体制に反対して立ち上がることができないようにしたのです。ちょうどその頃、ムーサーが生まれました。彼の母親は、子供の命を守るため、彼を箱の中に入れてナイル川に流しました。
第4節の教え
● 人々が団結、連帯する限り、圧政的な統治体制に支配されることはありません。そのため、圧制者は常に、人々の間に分裂を生じさせようとします。
● 男性から勇気を奪い、女性を“女性の自由”の象徴として悪用することは一つの政策であり、現代の世界において、さまざまな形で用いられています。