1月 06, 2021 15:30 Asia/Tokyo

コーラン第33章アル・アハザーブ章部族同盟、第18節~第21節

慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において

第18節

「明らかに、神はあなた方のうち、他者を[ジハードから]妨げた人々、同胞たちに『私たちの方に来て[、戦争には行かないように]』と言っていた人々のことをよく知っている。また彼らはわずかな間を除いて、戦場には行かない。」

(18) قَدْ یَعْلَمُ اللَّهُ الْمُعَوِّقِینَ مِنْکُمْ وَالْقَائِلِینَ لإخْوَانِهِمْ هَلُمَّ إِلَیْنَا وَلا یَأْتُونَ الْبَأْسَ إِلا قَلِیلا

 

第19節

「彼らはあなた方に出し惜しみをしている。いつでも[戦争への]恐怖が起こると、汝は、彼らの目がぐるぐる回り、死が訪れた人のように汝を見つめるのを目にするだろう。しかし、恐怖が去ると、彼らは鋭く厳しい口調であなた方を苦しめ、恩恵に対して吝嗇になる。彼らは信仰を寄せていない。神は彼らの行いを無効にする。これは神にとって容易なことである」

(19)أَشِحَّةً عَلَیْکُمْ فَإِذَا جَاءَ الْخَوْفُ رَأَیْتَهُمْ یَنْظُرُونَ إِلَیْکَ تَدُورُ أَعْیُنُهُمْ کَالَّذِی یُغْشَى عَلَیْهِ مِنَ الْمَوْتِ فَإِذَا ذَهَبَ الْخَوْفُ سَلَقُوکُمْ بِأَلْسِنَةٍ حِدَادٍ أَشِحَّةً عَلَى الْخَیْرِ أُولَئِکَ لَمْ یُؤْمِنُوا فَأَحْبَطَ اللَّهُ أَعْمَالَهُمْ وَکَانَ ذَلِکَ عَلَى اللَّهِ یَسِیرًا

 

前回の番組では、アハザーブの戦いでイスラム教徒の士気を弱める上でのメディナの偽善者たちの役割に触れていました。この2つの節は、続けて次のように語っています。「この偽善者たちの一団は、人々が敵に対峙するのを妨げようとし、彼らに向かって、『戦争から手を引いた私たちと同じように、あなた方も手を引き、私たちに加わりなさい』と言っていた」

 

彼らは神の道における戦い・ジハードで命を惜しむだけでなく、戦士や彼らの家族への援助において財産も出し惜しみし、吝嗇に走ります。彼らの神への信仰心は弱く、危険が及んだときには恐怖に震え上がり、敵に命を奪われる前に、自ら命を捧げようとするかのようです。しかし、イスラム教徒に勝利が訪れると、自分たちもその勝利に貢献したと考え、戦利品を集めることに貪欲になります。また、厳しい口調で話し、戦利品の分け前を求めます。

 

とはいえ、コーランが預言者の時代の偽善者の特徴について語っている事柄は、この時代だけに限られません。いつの時代、いつの場所においても、イスラム教徒の中にはこのような人々が存在し、危険が迫った際には逃げ、平穏の中では権力と財産を求め、自分は他人よりも優位にあると考えます。

 

第18節~第19節の教え

  • 敵に対抗する上では、自分たちの内部にいる信仰心の弱い人たちに警戒しましょう。彼らは戦場から逃げてきただけでなく、希望を失わせるような言葉によって、他の人たちにも、戦争に参加させまいとします。
  • 偽善者は、危険や困難が迫った際、戦士たちを助けたり、戦いに参加したりすることを惜しみ、危険が去った後には、財産や戦利品を貪欲に集めます。これは偽善者のしるしです。
  • 困難や戦争の際には敵に対して恐怖や弱さを見せ、平穏の中では、仲間たちに厳しい態度で接するのも、偽善者の特徴です。

 

第20節

「彼らは、敵の同盟軍は今も[メディナの周辺から]去っていないと考えている。もし敵の集団が再び戻ってきたら、彼らは“遊牧民のアラブ人の間にいて、あなた方の消息を尋ねるだけだったらよかった”と願う。もし彼らがあなた方の間にいたら、わずかな数を除いて戦うことはなかっただろう」

 (20)یَحْسَبُونَ الأحْزَابَ لَمْ یَذْهَبُوا وَإِنْ یَأْتِ الأحْزَابُ یَوَدُّوا لَوْ أَنَّهُمْ بَادُونَ فِی الأعْرَابِ یَسْأَلُونَ عَنْ أَنْبَائِکُمْ وَلَوْ کَانُوا فِیکُمْ مَا قَاتَلُوا إِلا قَلِیلا 

 

この節は、偽善者の極限の恐怖と弱さを示し、次のように語っています。「敵の軍勢が散り散りになり、メディナの町から危険が去ったとしても、偽善者たちは、彼らがまだメディナの周辺にいると考える。そのため、危険を感じ、馬やラクダの音を聞けば、敵の軍勢が襲ってきていると思い込む。彼らは恐怖のあまり、砂漠の遊牧民の間で暮らすことによって危険を回避したいと望む。そうすれば、町の様子を旅人に尋ね、完全に安全が戻ったら、町に帰ればよいからだ」

 

この節は続けて、敬虔な人々に次のように語りかけています。「とはいえ彼らが町に留まったとしても、ほとんどの人があなた方の助けに駆けつけることはなく、敵との戦いには参加しない。だから彼らが去ることを不安に思ったり、彼らが留まることに喜んだりしてはならない」

 

第20節の教え

  • 偽善者や信仰心の弱い人々は、常に、敵の方がイスラム教徒よりも強いと考えています。彼らは、対決の結果は必ず、敵の勝利、イスラム教徒の敗北となると考え、それに基づいて計画を立てます。
  • 敵に対する恐怖は逃げに走らせますが、理性や宗教があれば、敵に立ち向かい、弱さを見せることはなくなります。

 

第21節 

「間違いなく、あなた方にとって神の預言者のやり方は優れた模範である。神と最後の審判に希望を持ち、神を数多く唱える人々にとって」

(21) لَقَدْ کَانَ لَکُمْ فِی رَسُولِ اللَّهِ أُسْوَةٌ حَسَنَةٌ لِمَنْ کَانَ یَرْجُو اللَّهَ وَالْیَوْمَ الآخِرَ وَذَکَرَ اللَّهَ کَثِیرًا 

 

偽善者や信仰心の弱い人々の特徴を述べた前の節に続き、この節は次のように語っています。「だが、信仰を持つ人々は、偽善者の言動に耳を傾けたり、責務を怠ったりするのではなく、預言者の言動に注目する。彼らは預言者と同じように、敵に対して力強く立ち向かい、メディナとイスラム教徒を全力で守ろうとする」

 

歴史的な伝承によれば、イスラムの預言者ムハンマドは、メディナを守るため、この町の周囲で敵が侵入してくる危険のある場所に穴を掘るよう命じました。そして預言者自身も、他のイスラム教徒と同じように、穴を掘る作業に加わりました。このような懸命な努力の一方で、預言者は人々の心の中に神の記憶を蘇らせ、彼らに、神からの勝利の約束を与えました。

 

第21節の教え

  • 預言者ムハンマドは戦争の際、戦闘服を身につけ、指令を出しました。彼の宗教は統治と一致しており、人々の現世の安全と幸福と同時に、最後の審判での永遠の幸福も望んでいました。
  • 預言者も、他の人々と同じように普通の生活を送っていました。そのため、すべての敬虔な人間の模範となることができました。彼は地上の人間であり、地上の人々にとって人生の模範でした。また戦場でも、目に見えない知識に基づいて行動することはなく、戦争の原則を守っていました。
  • 世界のイスラム教徒が預言者を模範にしていれば、現在、敵に対してこのような屈辱を味わうことはなく、敵に支配されることを許してはいなかったでしょう。