コーラン第23章アル・ムウミヌーン章信仰者(2)
今回も引き続き、コーラン第23章アル・ムウミヌーン章信仰者についてお話ししましょう。
慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において
アル・ムウミヌーン章の続く節は、神を知るためのしるし、天と地における神のしるしに触れ、天と地、人間や動植物の創造における世界の驚くべき秩序の様々な例を挙げています。
コーラン第23章アル・ムウミヌーン章第12節は、アーダムからその子孫にいたる人間の創造の始まりに触れ、全ては泥から創られたとし、このように語っています。
「我々は人間を土の精髄から創造した」
人間は、これほど多くの能力や偉大さを備えていながら、価値のない泥から創造されました。これは、そのような取るに足らない物質から、比類のない人間のような存在物を作ることのできる、創造主である神の力を示しています。
続く第13節は次のように語っています。
「それからそれを精液として、確かな場所に据えた」
人間の創造の始まりは泥からでしたが、その後の人間の子孫は、精子と卵子の受精卵が子宮に据えられることで存続します。
第14節は、母親の子宮の中で受精卵がどのような段階を経るか、次々に現われる創造物の様々な姿に触れ、このように語っています。
「それから我々は受精卵を血の塊にし、その血の塊から肉のような塊を創った。次にその肉の塊から骨を作り、それらの骨を肉で覆った」
胎児学の観点から、コーランで描かれている人間の胎児の成長段階は、驚くべきものです。学者たちは、胎児に関して何の知識もなかった時代に、コーランがこのような胎児の成長段階について語っていることに驚いています。この節で興味深いのは、骨を肉で覆ったとされていることです。この表現で、筋肉が服になぞらえられています。服が人間の体を覆うように、筋肉が骨を覆います。もしこの服が骨を覆っていなかったら、人間の体は、骨ばかりの非常に醜いものとなっていたでしょう。一方で、服が人間の体を暑さや寒さから守ってくれるように、筋肉も骨を守り、もしそれらがなかったら、体がダメージを負うたびに、骨にその被害が及んでいたことでしょう。体の柱ともいえる骨を守る上で、筋肉は大きな役割を果たしています。これらは、コーランの表現が非常に注意深く繊細なものであることを物語っています。
第14節は最後に、実際、人類の創造の最も重要な段階である最後の段階に触れ、次のように語っています。「それから我々は別の新たな創造物を現した」 この段階で、胎児は人間の生の段階に入り、感情や動きを見せます。イスラムの言い伝えによれば、それは人間に魂が吹き込まれる段階とされています。このとき、人間は、大きな飛躍によって、人間の世界に足を踏み入れます。ここで人間は、世界のあらゆる創造物よりも優れた特徴を得、地上の神の創造物としてのふさわしさを身につけます。この節はその後、このように語っています。「称賛と服従は、最高の創造者である神のためにある。母親の胎内という暗闇の中で、これほど驚嘆すべき存在を作り、その取るに足らない存在の中に、これほどの能力を作り出した神を称える」
アル・ムウミヌーン章は、コーランの他の多くの節と同じように、教訓となる、他の預言者たちの物語を述べています。例えば、最初の預言者であったヌーフの物語などです。
預言者ヌーフが生きた時代、有力者たちが弱い立場の人々に圧制を加え、社会的な公正が存在せず、人々は多神教や偶像を信仰していました。その頃、神は預言者ヌーフを、啓典と唯一神信仰の教えと共に人々のもとに遣わしました。ヌーフは人々を唯一神信仰へといざなう中で、多くの努力を行いました。しかし、その民の高慢な貴族たちは言いました。「彼はあなた方と同じ人間である。ただし、自分の方が優れているという思いが彼の中で大きくなり、あなた方を支配したいのだ」 彼らは言いました。「神や唯一神信仰、宗教に関するヌーフの言葉は皆、あなた方を支配するための口実である」 彼らにとって、ヌーフが天使ではなく、人間であることが問題でした。そのためにこのように語りました。「もし神が使徒を遣わそうとするのなら、きっと、天使を下していただろう」 彼らはこのような根拠のない口実を完成させるために言いました。「私たちは決して、そのようなことを先祖たちから聞いたことがない。人間が、自分自身を神の使徒や代表者と見なすとは」
とはいえ、この偉大なる預言者の魂に、多神教徒の根拠のない主張が影響を及ぼすことはなく、ヌーフは人々への唯一神信仰へのいざないを続けました。それを受け、人々は彼を狂人呼ばわりし、次のように言いました。「彼は狂人になった人物であり、彼が死ぬか、あるいはこの狂気から解放されるまで、しばらく辛抱しなければならない」
預言者ヌーフは950年生き続けました。しかし、わずかな数の人々を除いて、彼に信仰を寄せた人はいませんでした。そのとき、ヌーフは神に願いを捧げ、それによって、神の助けを得る土台が整ったのです。
アル・ムウミヌーン章の第26節と27節には次のようにあります。
「ヌーフは言った。『主よ、否定する人たちに対して私を助けてください』 それで我々はヌーフに啓示を下した。我々の監視のもとで我々の啓示に従い、船を作るがよいと」
ヌーフは水の流れていない土地で船を作り始めました。人々が彼のそばを通る際、彼を嘲笑し、罵声を浴びせていましたが、ヌーフはとうとう、その船を完成させました。
第27節は続けてこのように語っています。
「動物の中からメスとオスの一つがいと自分の家族を船に乗せるがよい。ただし、以前に滅亡が約束された人は別である」
その後、第28節と29節は次のように語っています。
「またあなたとその仲間たちが船に乗ったとき、言え、『称賛と感謝は神のためだけにある。神は我々を圧制的な民から救ってくださった』 言え、『主よ、私に恩恵に溢れる地位をお授けください。あなたは最もよいものを下される方である』」
ヌーフはその啓示の通りにしました。そして少しずつ、責め苦のしるしが明らかになりました。洪水のような雨が天から降り、川が荒れました。水は地表から溢れ出し、辺りに広がりました。山のような波が立ち、ヌーフの船はその波の間を進み始めました。このようにして、嵐が起こり、圧制的な人々は皆、溺れ死にました。そのとき、神は水を沈めるよう大地に命じ、天は雨を止めました。ヌーフとその仲間たちは船から降り、神に感謝を捧げ、神の唯一性と偉大さを称えました。
アル・ムウミヌーン章の第30節は、ヌーフの物語を総括し、次のように語っています。
「ヌーフの物語と彼の圧制者に対する勝利、反抗的な民への懲罰の中には、考える者たちへのしるしがある」