6月 18, 2022 17:17 Asia/Tokyo

前回からは、イラン中部にある歴史的な町、カーシャーンをご紹介しています。カーシャーンは、イラン独自の美しく伝統的な建築と通風塔の存在で知られた町であり、その至る所に、美しい建物が見られます。

カーシャーンのフィン庭園

 

ここまで、カーシャーンのアーガーボゾルグモスクと神学校をご紹介しました。ここからは、カーシャーンにある別の見所、フィン庭園をご紹介しましょう。フィン庭園は、1000年の歴史を有し、カーシャーンの南西6キロのところにあります。この庭園は、2万3700平方メートルの面積を誇り、イランにある最も古い歴史的、伝統的な庭園のひとつです。この庭園は、その澄んだ泉の存在により、数百年もの間、存在し続けてきました。そこはかつて、王族の宮殿でしたが、時の経過の中で多くの改築が加えられ、様々な出来事を経験してきました。フィン庭園の泉は、「ダンダーネ」と呼ばれる岩場から湧き出ており、この歴史的な庭園に潤いを与え、カーシャーンの町の繁栄にも大きく貢献しています。

カーシャーンのフィン庭園

 

現在、フィン庭園の泉から湧き出る水は、チェシュメ・ソレイマーニーエと呼ばれる池に流れ込んでおり、そこからフィン庭園にある水路を通って、庭園内のイチジクやザクロの木々を潤しています。この水は最終的に、カーシャーンの町の農耕地に注ぎ込み、灌漑のために利用されています。確かな資料によれば、フィン庭園の透明な泉の周囲には、常に、美しい建物や庭園が造られてきました。その間、この庭園の建物は、社会的な変化や自然災害による破壊と修復を繰り返してきました。そして多くの場合、それまでの古い建物に、新たな建物が加えられています。1797年から1834年のガージャール朝の王、ファトフアリーの時代、フィン庭園の建物全体に根本的な修復を加える指示が出されました。透明な大理石と7色のタイルでできた大きな浴場が造られたのは、この頃のことです。この時期、フィン庭園は、失っていた美しさとみずみずしさを取り戻し、散策のための場所として、イラン全国に知られるようになりました。

カーシャーンのフィン庭園

 

フィン庭園の建物は、美しい模様、漆喰細工、ナスタリーク書体で書かれた大理石の石碑が見られます。この他、フィン庭園の貴重な建造物には、庭園の西側にある博物館、足を洗うための場所やプール、タイル細工の施された水路や美しい噴水などがあります。フィン庭園には、何本もの背の高い古木が立ち並び、中には樹齢400年というものもあります。それらが庭園に美しさを添えており、フィン庭園を、イランでも最も美しい歴史的な庭園にしています。

 

カーシャーンのフィン庭園

 

また、イランの人々にとって、カーシャーンのフィン庭園は、イランの近代化に貢献した人物、アミールキャビールの殺害という、悲しい歴史的事件を思い起こさせるものでもあります。アミールキャビールは、ガージャール朝時代のイランの偉大な政治家であり、この王朝の王、ナーセロッディーンの宰相でした。

 

カーシャーンのフィン庭園

 

アミールキャビールは、自由な思想を持つ敬虔な人物であり、文化を愛する知識人でした。彼はイランの経済、教育、文化の分野で進歩的な思想を持つ改革派として知られ、イランの政治的な独立の維持、各国の友好に基づく外交関係の樹立を訴えていました。アミールキャビールは、イラン国民を救うために全力を尽くした人物でした。

 

カーシャーンのフィン庭園

 

アミールキャビールが宰相になった頃、イラン国内の状況は、政治的にも経済的にも混乱を極めていました。彼は短期間のうちに、多くの問題を解決することに成功しました。その改革運動としては、統率の取れた軍隊の創設、新しい学問に精通した医師や技術者、優秀な兵士を教育するのための学校、ダーロルフォヌーンの設置、そして有益な書物の翻訳や新聞の発行などがあります。

 

カーシャーンのフィン庭園


アミールキャビールはさらに、宮廷の関係者の無駄な出費を削ったり、賄賂を廃止したりすると共に、国内の産業を奨励するため、国内外の取り引きを活性化させ、税制を整えました。この時期の最も重要な活動は、イランへのロシアとイギリスの影響力を制限し、外国の内政干渉を阻止したことでした。しかし、アミールキャビールの独立の追求やイランを向上させるための努力は、外国の大国や、国内でそうした国々とつながりを持つ人々の怒りと憎しみを買いました。こうして国内外の圧力に晒されたガージャール朝の王は、彼を罷免し、カーシャーンに追放することを余儀なくされ、最終的に彼の殺害を命じました。アミールキャビールは、1851年、カーシャーンのフィン浴場で殺害されました。

 


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