アルバインの行進とその影響
現在、世界各地から、何百万人という人々が、イラクのナジャフからカルバラまでのおよそ80キロのアルバインの行進に参加し、世界の人々を驚かせています。これは、シーア派3代目イマーム、ホサインへの敬愛を示しています。
イマームホサインを敬愛する人々は、イスラム教徒やシーア派教徒だけではありません。世界の自由を求める人々、人道や美徳を愛するほかの宗教の信者たち、世界中の人々が、この国際的な集会に参加しています。イマームホサインの殉教から40日目のアルバインの日に際し、この時間は、アルバインの行進の個人的、社会的な影響について見ていくことにいたしましょう。
宗教は、常にあらゆる側面において、現在の喧騒に溢れた世界にアイデンティティと意味を与えています。近代化のプロセスにより、宗教は消えたという一部の考え方に反し、宗教は、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、ヒンズー教徒など、世界の多くの人にとって、意味とアイデンティティを与える基礎となるものです。
アルバインの行進では、純粋なイスラムの姿が世界に示され、イスラムの真理とその真の信者たちの美しい姿が映し出されます。世界の人々は、この、精神性に溢れた美しく壮大な出来事を目にし、カルバラでのイマームホサインの蜂起について知りたいと考えます。これは、世界中にイスラムの真理を輝かせるための機会を整えるものであり、タクフィール主義などのアメリカが示すイスラムを消滅させることになるのです。
「あなた方はアルバインの行進の中で、シーア派のアイデンティティの実感と覇権主義の排除における大きな社会的財産を目にすることができる。アルバインは、シーア派としてのアイデンティティを理解するための象徴である。アルバインほど、シーア派であることや宗教への信仰を人間に自覚させるものは存在しない。それは、あなた方が、メッカ巡礼に行くまで、イスラム教徒であることを本当に実感し、経験することができないのと同じである。この大きな集会で、人々は追悼儀式のためにやって来たのだが、その表情には悲しみや孤独感がない。彼らは、どこからやって来ていようと、そこが彼らのアイデンティティを結びつける場所だということを感じている」
個人的な側面からも、アルバインの行進は、魂を浄化するための機会だと言えます。人間が、日々の喧騒から離れ、イマームホサインの聖廟を巡礼する目的で、この大きな集まりの中に立つとき、おのずと心が軽くなります。これは、心から罪が取り払われたことのしるしのひとつです。
このプロセスの中で、道徳や行動の面で大きく成長し、他人との付き合いが上達する人が数多くいます。実際、ここで起こることは、驚くべき成長であり、人間は、一生において手に入れようとする事柄を、3日間の旅の中で手に入れることができます。
アルバインの旅の教育的な側面は、イマームホサインの巡礼者が、この間に、類まれなる新たな生活様式を経験することです。この時期、すべての事柄は、イマームホサインを中心に形作られます。すべての人の動機はイマームホサインであり、巡礼者たちは、イマームを中心に、互いへの寛容な心、親切、愛情、自己犠牲に至ります。このような生活様式は、世界のどの場所でも見られることはありません。
預言者ムハンマドの時代、彼の教友たちは、兄弟の契約を交わすほどに強い結びつきを持っており、何も食べるものがないときには、他の人に分けてあげるために、ナツメヤシ一つ食べることすら我慢していました。アルバインの行進では、イマームホサインを敬愛する他の人々との共感や協力を、心の内側から感じることができます。
アルバインの行進に参加したことのある人は、このように話しています。
「長い距離を歩いた後、疲れて休もうとしたら、知らない人が近づいてきて、私の前に立った。私はその人の邪魔にならないように少しよけてみた。するとその人はさらに私に近づいてきて私の前に立った。私は驚いて、なぜその人がそのようなことをするのか、理由を尋ねてみた。しかし、彼の答えに私は心から恥ずかしくなった。彼はこう言ったのだ。『あなたに太陽の日差しが当たってまぶしい思いをしないようにと思ったのです』」
イランの心理学者、アスガリー・ネカーフ博士は次のように語っています。
「アルバインの行進に参加する人々は、自己犠牲やもてなし、巡礼者への奉仕、預言者一門への敬愛といった行動を実際に目にする。このような好ましい行動を知り、それを実際に経験することにより、これらの特徴を身につけることができる。この他、この行進の心理学的な影響のひとつは、周囲の人々との相互理解に至り、仲間と助け合うことだ。計画を立て、困難を受け入れることにより、アルバインの行進に参加するための集団を形成する人々は、理想的な目的を達成するために仲間と協力する方法を訓練する。この技術を学ぶことは、非常に価値がある」
この他のアルバインの魅力は、この行進が非常に秩序だっていることです。規律が破られることはなく、集団は整然と、明確な目的に向かって進みます。道の途中では、人々は互いに優しく、秩序を乱すような動きは見られません。ただ、清らかさがあるのみです。
実際、アルバインの行進は、西洋の人文科学の見解に根本的な疑問を呈し、物質主義に埋もれ、精神性から遠ざかった人類に、美徳に帰るよう呼びかけています。とはいえ、この壮大な動きは、物質的な利益や損害に基づいて分析するような、理性的な考えを基盤としたものではありません。また、目的のない、感情的なものでもありません。そうではなく、人間の理性と愛情の頂点、心理や神を求める本能的な叫びに応じるための、世界的な運動です。
近年のアルバインの行進は、宗教に留まり、人類が平和と公正に基づいた別の形の世界を経験し、預言者たちの至高なる教えを守ることができるようになる可能性を生み出しています。人間の前に精神的な空が開かれ、世俗主義の歴史が廃れ、神が人間の生活の中心に見られるようになります。これこそが、アルバインの行進の中で、人々が実感するものなのです。
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