視点
イラン最高指導者によるウクライナ戦争関与の明確な否定
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ハーメネイー師
イラン政府はウクライナ戦争が始まって以降、ロシア・ウクライナ双方に対し見解の相違を対話で解決する外交的方法を探るよう求めてきました。また、イラン自身もそれに向けた行動を取ってきました。
イランのアミールアブドッラーヒヤーン外相は、2022年8月下旬にロシア・モスクワを訪問し、ウクライナ戦争とその解決に向けたイランの仲介について話し合うため、ラブロフ外相をはじめとしたロシアの高官らと会談しました。この訪問は、イランのライースィー大統領がフランスのマクロン大統領より、ウクライナ戦争をめぐる「橋渡し役」を務めるよう要請されたことを受けて行われたものでした。
イランが善意をもってウクライナ戦争終結に向けて様々な努力を重ねたにもかかわらず、西側は彼らを偏重するウクライナ政府とともに反イラン・プロパガンダを始めて、イランがロシアへ多数の無人機を供与するなどの武器支援を行っていると主張しました。またウクライナも、2022年9月末に非友好的な措置を取り、自国からのイラン大使の追放およびイラン大使館職員数の削減を求めました。
この一方、アミールアブドッラーヒヤーン外相はイランに対するこのような非難に対し、ウクライナ戦争開始前に数機の無人機をロシアに提供したと発表し、イランがこの戦争においてロシアの利益のために介入することは一切ないとの立場を明確にしています。
ウクライナおよび西側諸国、中でもアメリカの当局者は、ロシアがウクライナ国内のインフラへの攻撃に用いている無人機がイラン製であると、繰り返し主張しています。また、ウクライナもロシアによるイラン製無人機使用を主張することで、西側にはイランに対し新たな制裁措置を取る口実が用意されました。
EUとアメリカは、ウクライナ戦争でのイラン製無人機使用という証明もされていない主張に基づき、新たな対イラン制裁を発動しました。また、イギリス、フランス、ドイツの欧州3カ国は2022年10月末に国連へ書簡を送付し、同様の証明されていない主張を繰り返しながら、この問題が安保理決議第2231号に反するか否かを調査するように求めました。
イランは、これらの主張をその都度否定しています。また、それがイラン恐怖症の流れと新たな対イラン制裁措置への下地作りのために西側が行う、心理戦およびプロパガンダ戦の一部であると指摘しています。イランから見れば、このような主張には何ら根拠がないものの、西側はそれを知りながら意図的に世論操作を行っているのです。この点については、イランの高官らも繰り返し強調しています。
このような状況の中、イラン・イスラム革命最高指導者のハーメネイー師は、イラン暦1402年を迎えるにあたり行った21日の演説において、イランがウクライナ戦争に関与したとする西側の主張を誤ったものだと否定しました。
ハーメネイー師はこの件をめぐり、「我々は、ウクライナ戦争への関与についてはっきりと明確に否定している。このようなことは、全くもって真実ではない。ウクライナ戦争とは、米国がNATO北大西洋条約機構を東方に拡大させるために始めたものである。米国および同国の兵器製造企業は現在、ウクライナの人々が様々な問題にあえいでいる中で、この戦争から一番の利益を得ている。彼らはそのために、戦争終結に必要な措置を妨げているのだ」と述べています。