イランとロシアが核合意の制裁再発動を無効とする理由
https://parstoday.ir/ja/news/iran-i128994-イランとロシアが核合意の制裁再発動を無効とする理由
イランのアラーグチー外相とロシアのラブロフ外相は、英独仏が核合意内のスナップバック条項発動によりイランへの制裁再発動を企図していることについて、3カ国にそのような手段に訴える法的・倫理的資格はないとの認識で一致しました。
(last modified 2025-08-24T12:18:27+00:00 )
8月 23, 2025 20:42 Asia/Tokyo
  • ロシアのラブロフ外相(左)とイランのアラーグチー外相(右)
    ロシアのラブロフ外相(左)とイランのアラーグチー外相(右)

イランのアラーグチー外相とロシアのラブロフ外相は、英独仏が核合意内のスナップバック条項発動によりイランへの制裁再発動を企図していることについて、3カ国にそのような手段に訴える法的・倫理的資格はないとの認識で一致しました。

【ParsTodayイラン】両外相は23日の電話会談で、イランの核問題に関する動向、特に国連安保理決議2231が期限終了を前にした英独仏の動き、またイランと国際原子力機関(IAEA)の協力に関する問題について意見交換しました。

会談で両者は、英独仏が核合意内の義務を果たさなかったことと、米国と共にイランの平和的核施設を攻撃したことを踏まえて、安保理決議2231に対する重大な違反を犯したため、核合意内のスナップバック条項(イランによる核開発の加速や合意違反の際に、国連安保理決議による制裁や米国・EUによる制裁が自動的に再発動される仕組み)に訴える法的および倫理的資格はこれら3カ国にはないとの認識で一致しました。

その上で、今後の核交渉の進展について評価し、安保理決議2231の予定通りの終了を強調しました。

また、英独仏が安保理決議2231の期限延長を企図していることについて、アラーグチー外相は「我が国の見解では、安保理決議2231の延長に関する決定は安保理とその理事国の責任である」としました。

前日の22日には、英独仏3カ国の外相とEUのカラス外務安全保障政策上級代表が、アラーグチー外相と電話会談を行いました。欧州3カ国とEU上級代表は、欧州諸国として外交的解決を模索する用意があることを改めて強調する一方で、「イランが米国と交渉することが必要だ」「イランはIAEAに全面的に協力しなければならない」などとも強調しました。

これに対しアラーグチー氏は「イランとして自衛のためにしっかり行動するのと同時に、外交努力を放棄したことはなく、イラン国民の権利と利益を保証するあらゆる外交的解決に応じる用意がある」と語り、今月26日に外務次官レベルで協議が継続されることを確認しました。

このような英独仏およびEUの立場は、懸念、外交的圧力、そして法的措置のちらつかせが混在したものとなっています。

 

EUの公式立場と最近の行動

  1. スナップバック条項の発動:英独仏はこれまで、イランとの核交渉が進展しない場合、2025年8月末までにスナップバック条項を発動する可能性があると主張してきました。これに関しては、欧州が核合意における義務を果たしておらず、米国の圧力に従って行動しているため、その正当性に疑問の声が出ています。
  2. イランに対する合意違反非難:イランは核合意で定められた規定に従って、2018年の米国離脱と欧州による合意不履行を受けて、自らも義務履行を削減してきましたが、英独仏はこれを合意違反だと非難しています。
  3. 外交を通じた合意維持の意図:最近の外相会談では、欧州三国は、核合意を外交的に維持し、アメリカが合意に戻ることでその再生のための新たな空間を提供したいと強調しています。

 

英独仏の法的および政治的立場

イランは、英独仏がこのスナップバック条項を発動する資格を持たない理由として、いくつかの法的および政治的な根拠を挙げています。

●法的根拠

  1. 米国の離脱:スナップバック条項は、国連安保理決議2231の枠組みの中で定義されており、核合意参加国が義務に違反した場合に制裁を再発動することができます。しかし、米国は2018年に核合意から離脱したため、この条項を使用する資格を失っています。同様に、英独仏も実質的に義務を履行していないため、資格がないとされます。
  2. 義務不履行:イランは、アメリカが離脱した後、欧州諸国が経済的義務(例えばINSTEXの発効)を果たさなかったため、欧州も核合意違反者であり、このスナップバック条項を使用する資格がないと主張しています。
  3. スナップバック条項の性質:この条項は「重大な違反」の場合にのみ適用されるものであり、イランの行動(例えば核合意義務の削減)は、アメリカの離脱と欧州の義務不履行に対する相応措置であり、重大な違反には当たらないとイランは主張しています。

 

●政治的・外交的理由

  1. スナップバック条項の政治的利用:一部の専門家は、英独仏がアメリカの圧力を受けて、この条項を発動しようとしていると指摘しています。つまり、欧州は実質的にアメリカの政策を実行しており、スナップバック条項は法的というよりも政治的なものだということです。
  2. 多国間外交の弱体化:欧州がスナップバック条項を発動すれば、核合意が完全に崩壊し、欧州の外交的・安全保障上の利益に反することになります。

 

●国連安保理決議2231の延長に関する問題

英独仏はまた、国連安保理決議2231の期限延長を提案しています。この決議は2015年に核合意に基づいて採択され、イランのミサイル開発や一部の武器禁輸に関する制限を課しており、今年10月に期限が切れる予定です。しかし、イランは決議の延長については安保理が決定すべきであると強調しています。

 


ラジオ日本語のソーシャルメディアもご覧ください。

Instagram     Twitter