9.11テロをめぐり下された、イランへの非現実的な判決
アメリカの裁判所が、2001年の同時多発テロ事件をめぐり、イランに対し105億ドルの賠償金の支払いという驚くべき判決を下しました。
アボルファトフ解説員
アメリカ・ニューヨーク郡裁判所は、イランがアメリカ同時多発テロを支援しているとして、この事件の犠牲者の遺族に対し75億ドル、さらに保険会社に対し30億ドルの賠償金の支払いをイランに科しました。こうした中、アメリカ政府の正式な発表によりますと、同時多発テロにイランが関与したことについては全く指摘されていません。
アメリカ政府の正式な発表によりますと、アメリカ同時多発テロは19名のアラブ人により実施されており、そのうちの15名がサウジアラビア人だったとされています。これらの人物は、長年にわたってアメリカに在住し、操縦士の訓練を受けていました。また、彼らの一部はかなり前からCIA、もしくはFBIの監視下に置かれていたといわれています。さらに、同時多発テロ事件の前日には、アメリカ大統領府に対し、同国でのテロ攻撃の発生の可能性が報告されたということです。しかし、アメリカの情報・治安機関は同国の歴史上最大規模となったこのテロ攻撃を未然に防ぐことができませんでした。
ニューヨークの世界貿易センタービル・すなわちツインタワーが崩落した次の日からは、サウジアラビアに容疑の矛先が向けられました。国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディンは、サウジアラビアの王家と金融面で大規模な関係を有しており、同国の王子たちの一部もアルカイダの支援者であることが発覚しました。さらに、このテロ事件の実行犯の一部は、当時アメリカ・ワシントン駐在のサウジアラビア大使と関係があったと言われています。にもかかわらず、アメリカ政府はサウジアラビア政府との緊密な政治・経済関係を維持するために、3000人以上もの犠牲者を出したこの事件の責任を、サウジアラビアに問わないよう努めました。
この事件に関するアメリカ議会の民主・共和両党の独立委員会の報告書が発表されたときでさえも、当時のアメリカ政府はこの報告書のうち28ページは機密事項であるとしました。この28ページにおいては、サウジアラビア政府が捜査の対象となっているこの事件の首謀者や実行犯に資金援助を行っていたことが証明されているということです。
このテロ事件から15年が経過した現在、この事件の発生に関わったとしてイラン政府やイラン人の名前が挙がったことはありませんでした。しかし、こうした明白な事実にも関わらず、アメリカ・ニューヨーク郡裁判所は同時多発テロへのイランの関与を提起し、イランに責任があるとする判決を下しました。この裁判所はさらに最近、サウジアラビアの関与を裏付ける大量の証拠が存在するにもかかわらず、サウジアラビアを無罪とする判決を下しています。このことは、アメリカの政治勢力が同時多発テロの法的な審理に影響を及ぼすことで、この事件への関与が最も疑われる被疑者を免罪とし、正当な理由がなくともその疑いの矛先を他者に向けさせようとしていることを示しているのです。