視点
EU上級代表のテヘラン訪問、ウィーン協議の行き詰まりは打開できるか?
EU欧州連合のボレル外務安全保障政策上級代表がテヘランを訪問し、25日土曜アミールアブドッラーヒヤーン外相と会談しました。
ハティーブザーデ・イラン外務省報道官によりますと、今回のブレル上級代表のイラン訪問は、イラン・EU間で進行中の協議の枠組みで実施されており、両者間の関係のほか、地域・国際問題の一部、そして制裁解除を目指すオーストリア・ウィーン協議の最新状況をめぐる議論・意見交換が行われる、ということです。
ボレル上級代表も、ツイートの中で、外交は、核合意の完全な実施への唯一復帰方法だ、としています。
アミールアブドッラーヒヤーン外相は今月23日にテヘランを訪問していたラブロフ・ロシア外相との共同記者会見で、「我々は、近いうちにウィーン協議が再開されるよう希望する」と表明しています。
対イラン制裁の解除を目指してのオーストリア・ウィーン協議の第8ラウンドは2021年に開始されました。去る3月11日はボレル上級代表の提案により小休止が入り、各国の協議団は本国政府との相談のためそれぞれの国に帰国しています。それ以来、協議のプロセスはイランや核合意に対する自らの違法行為の補填に向けたアメリカの決定が遅れているために、ほぼ頓挫した状態に陥っています。
実際、ウィーン協議が停止された理由は、バイデン米政権がトランプ前政権の失敗した政策である「最大限の圧力行使」政策を批判しながらも、この政策を変更しようとせず、各種制裁の解除やイランへの有効な確約提供に応じなかったことにあります。現在、核合意の復活および、アメリカのこの合意への復帰の条件は、イランの利益を保証することにあります。
イランの視点から見て、合意成立を確実にするものは各種制裁の効果的な解除および、今後の合意で予想されるイランの利益の保証です。これに基づき、イランは協議が成果に至るために必要なイニシアチブや提案を出してきています。
アミールラブドッラーヒヤーン外相は先週、ボレル上級代表との電話会談で、核合意復活に向けた協議の継続という要請に対し、「イランは成果につながる論理的な協議を常に歓迎してきている。だが、良好で恒久的な合意成立のためには、相手側が矛盾した行動をやめる必要がある」と語りました。
西側諸国の矛盾したダブルスタンダードな行動の実例は、IAEA国際原子力機関理事会での対イラン決議採択という、アメリカおよび英独仏の非建設的な行動に見て取ることができます。イランはこれに強く反発し、国内の核施設に設置されていた保障措置外のIAEAの監視カメラ27台の作動を停止しました。アメリカはさらにこの数ヶ月間、イランの複数の個人や法人に対し追加制裁を行使しています。
現在、ボレル上級代表のイラン訪問は、協議のプロセスに生じた障壁の打開に助力できるかもしれません。しかし、これはアメリカ側からの核合意復帰に向けて必要な政治的意志が見られる必要があります。24日金曜未明、エンリケ・モラ欧州対外行動庁事務次長は、ボレル上級代表とアメリカ代表団を率いるマレー・イラン担当特別代表とのワーキングディナーの写真を公開しました。そして、核合意復活交渉がこのワーキングディナーの主要な議題だったとしています。モラ事務次長はさらに、マレー代表の話として、アメリカが核合意内の責務への復帰を約束していることを明らかにしました。
明らかなことは、ボレル上級代表がテヘラン訪問でアメリカからの新たなメッセージを持ってきていれば、ボレル氏とイラン側との協議ではアメリカが本当に核合意に復帰し、イランや核合意に対する自らの政策を変更する気があるのか、それとも過剰な要求や政治的決断を渋って協議での合意成立を阻むのかが明らかになるということです。