視点
6年間のアラブ連合軍の対イエメン戦争関連の統計分析
-
アラブ連合軍の対イエメン戦争
イエメン戦争は、今月26日をもって遂に開戦から7年目に突入しました。
サウジアラビアはアメリカ、UAEアラブ首長国連邦、その他数か国の支援を得て、2015年3月からイエメンへの軍事侵攻を開始し、同国を全面的に封鎖しています。
この戦争でこれまでに1万7000人以上が死亡、数万人が負傷したほか、約400万人が住む家を失い難民化し、イエメンのインフラの85%以上が破壊されています。
この戦争に関する統計は、以下にあげる複数の側面から検討する必要があります。
第1の側面は、サウジアラビア主導アラブ連合軍が過去6年間に行ってきた多数の攻撃の回数です。イエメン政府関係者の話によりますと、同連合軍はイエメン各地を合計26万回以上にわたり爆撃しているということです。これらの攻撃により、数万人が死傷したほか、多数の市町村や民家、街道網やモスク、公共・民間施設が破壊されました。このため、これらの攻撃がもたらした結果は、イエメンに突きつけられた甚大な人的・物的損害ということになります。今や同国は21世紀最大の人道上の大惨事に瀕しており、同国の社会的インフラの85%以上が破壊されたことから、仮に現時点でこの戦争が終結したとしても、イエメンの復興再建には数十億ドルが必要となってきます。いうなれば、この戦争はイエメンの子供たちの現在を破壊したのみならず、彼らの将来にも甚大な影響を及ぼしていることになります。
第2の側面は、イエメンの政府軍及び、人民委員会と呼ばれる義勇軍が講じた防衛措置の規模です。イエメン武装軍のヤフヤー・アルサリーア報道官の発表した統計によりますと、イエメンの武装軍は過去6年間において6174回もの防衛作戦を実施しており、さらに開戦当初から現在までに1348発もの弾道ミサイルをアラブ連合軍側の標的に向けて発射しています。これだけの回数にのぼる作戦を分析してみると、以下のような点が明白になってきます。
第1に、ムハンマド皇太子の監視・管轄下にある、特に国防省をはじめとしたサウジアラビア政府は、対イエメン戦争の開戦により、同国主導アラブ連合軍の侵略に対抗しようとするイエメン側に内在する力や意志を正しく分析・識別できなくなり、開戦後満6年を迎えた今、もはや行動のイニシアチブ・主導権がサウジアラビアのものではなくなっているという点です。
第2に、イエメンの政府軍と義勇軍がアラブ連合軍側に甚大な人的被害を与えた点が指摘できます。ヤフヤー・アルサリーア報道官によりますと、開戦以来1万400人のサウジ兵や将校、1240人以上のUAE軍兵士と8634人のスーダン人傭兵、そしてアラブ連合軍側についたイエメン武装組織からも、合計22万6615人の死傷者が出ました。換言すれば、アラブ連合軍はこの戦争で合計24万6889人という膨大な数の死傷者を出したことになります。この統計は、サウジおよびUAEが、自国軍やほかの諸国からの傭兵、イエメン武装組織を大切に扱っておらず、盲目的な攻撃により雇い入れたこれらの傭兵の命を危険にさらしていることを示しています。
第3の点として、サウジアラビアに対するこれだけの回数のイエメンの軍事作戦により、サウジ政府が自らの起こした戦争で深刻な物的損害を蒙ったという、自業自得の実態が明らかになっています。一部のアナリストはこの戦争の開始当初、サウジが対イエメン戦争で自らの軍事力を誇示しようと目論んだ一方で、この戦争をサウジ空軍のための訓練にしていると解釈していました。しかし、ヤフヤー・アルサリーア報道官が示した複数の統計から、こうした解釈・分析が正しいものではないことが証明され、逆にこの戦争でサウジの軍事力が疑問視されたことが判明しました。それは、サウジが西アジア地域のアラブ圏最貧国であるイエメンとの戦争にすら勝てなかったからです。
これらのことから、結論として言えるのは、過去6年間の戦争で確かにイエメン側は甚大な物的・人的被害を受けたものの、この戦いはサウジ政権の軍事・政治的な威信に大きな疑問を提示し、この戦争を継続してもサウジの敗北の可能性を増すことになる、ということです。さらには、アメリカがサウジに対して出したイエメン戦争開戦のゴーサインが、実はサウジの地域的な地位を弱めることになる、サウジにとっての罠だったということも付け加えられるでしょう。
ラジオ日本語のユーチューブなどのソーシャルメディアもご覧ください。
https://twitter.com/parstodayj