May 07, 2024 14:25 Asia/Tokyo
  • ガラント・イスラエル戦争相と会談するオースティン米国防長官(左) 2023年10月13日、パレスチナ被占領地
    ガラント・イスラエル戦争相と会談するオースティン米国防長官(左) 2023年10月13日、パレスチナ被占領地

英ロンドンに拠点を置くオンラインニュース「ミドル・イースト・アイ」が欧州外交官の話として、「アメリカは世界の現実とのつながりを失っており、同国の諜報機関は国際情勢について馬鹿げた論拠を提示している」と強調しました。

イタリアの元外交官で中東和平プロセス調整担当政府特別代表や駐イラク・イタリア大使を歴任したマルコ・コルネロス氏は、ミドルイースト・アイが発表した分析記事において、次のように述べています;

「米諜報機関は最近、世界的な脅威に焦点を当てた年次脅威評価を発表した。この文書は、CIA米中央情報局、国家安全保障局、FBI米連邦捜査局および、その他の機関の集合的な分析と洞察を反映している」

 

米諜報機関の文書の一部には。次のように述べられています;

 

「今後1年間、米国は大国間の戦略的競争の加速、さらに激化し予測不可能で国境を越えた課題、より広範な影響をもたらす複数の地域紛争によって、ますます弱体化する国際体制に直面するだろう。さらに、野心的だが緊迫化した中国、敵対的なロシア、イランなどの一部の地域大国、そしてより強力な非政府勢力が、国際体制の旧来の法規と米の優先事項に疑問を提起している」

 

この文書ではさらに、イラン、ロシア、中国が国際体制に疑問を突き付ける邪悪な諸国とみなされています。

もっとも、このような分析は決して驚くに値しません。というのも、それこそが長年にわたりアメリカの政治的スローガンであり続けてきたからです。ここで問題なのは、この報告書が国連憲章とその条約に含まれる国際慣習法、あるいは米主導の国際体制のいずれの規則を参照しているのかが明確でないことです。主な問題は、米国の政治体制とこれに同盟する主要な西側諸国との間に区別がないことにあります。彼らは、非常に大きな過ちを犯しています。

こうしたアメリカ的な意識は、新自由主義イデオロギーに基づく秩序体制であり、矛盾をはらんだ二重基準の抱き合わせとなっています。パレスチナ・ガザでの惨劇はまさに、こうした体制による典型かつ最近の例です。この議題は、次のような1つの非公式スローガンに要約できます;

「私の友人にはすべてのものを、敵には法律を」

 

歴史の判決受け入れるべきアメリカ

この米諜報機関文書が、中国、ロシア、イランに加え、レバノンのシーア派組織ヒズボッラー、パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマス、イエメンのシーア派組織アンサーロッラーを含む多くの非政府系勢力に非難の矛先を向けていることは、驚くに値しません。このような愚鈍なアプローチは現在、いわゆるグローバル・サウスと呼ばれる多くの国々から公然と受け入れられていないだけでなく、異議を唱えられたり憤慨の対象となっています。

米国の覇権を国際体制の前提条件と考えているのは、ヨーロッパと東アジアのほんの一握りの国に過ぎません。国際体制は今や、一極構造から多極構造へと変化しつつあります。歴史を通じて、数多くの帝国がこの地球上で興亡しており、米政治家らも、こうした歴史の法則に適応するのが賢明だと思われます。彼らは今、2 つの選択肢に直面しています。それは英国が1945年以来段階的に行ってきたように、歴史の判決を受け入れるか、もしくは大惨事的に抵抗するかのいずれかです。

この報告書におけるガザ危機への言及は、アメリカ諜報機関の非現実的な見解に関するより明確な見方を提示しています。また、このアメリカの文書の一部では「ハマス内の非常に強力な非政府テロ集団によって引き起こされたガザ危機だけを見るべきだ。この行動は、イランの野心と、米国の弱体化を狙った中国とロシアによって奨励された言説によってさらに激化している。この状況は、地域的な危機がいかに広範囲に影響を及ぼし、他の差し迫った問題に関する国際協力を複雑化するかを示している」と述べられています。

報告書のこの部分は、米諜報機関がそもそもガザ紛争を正確に把握できていないことを物語っています。この紛争とはつまり、シオニスト政権イスラエルによる数十年もの残忍かつ、お咎めなしのパレスチナ占領によって開始された一大民族解放闘争に他なりません。これはまさに、米国による大規模な兵器供与とイスラエルのための政治的盾の創設によって可能となった占領行為です。また、国連安保理におけるアメリカの支持的関与についても指摘される必要があります。即ち、もしこの関与がなければ、イスラエルは戦争犯罪の責任者と見なされることになるのです。

アメリカの世界的地位が弱体化した真の原因は、それらの政府の行動ではなく、ガザでのイスラエルの流血に対する徹底的幇助を含む米のダブルスタンダードな行動にあります。バイデン米現政権は、安保理でのガザ停戦決議案の提起後、これに反対し、拘束・強制力がないとしてこの決議の意義と影響を最小限に抑えようと画策しました。

なお、この文書が発表されたのは、シオニストが牛耳るイスラエル政権によって、その大半を女性と子供が占める3万4000人以上がガザで殉教している中でのことです。 

 

Carnelos, Marco. 2024. Washington has lost touch with reality. If it doesn't adapt, the world will pay. Middle East Eye.

 


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