アメリカの政治的解決が軍事的欺瞞である理由
米が思惑とする根回しに反して、抵抗の枢軸が合法的な反応として停戦交渉の結果を考慮し、パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマスが停戦を歓迎している時期に、アメリカの恒常的な後押しを受けて裏をかいているのはシオニスト政権イスラエル側であるのが現実です。
【ParsToday国際】エジプト・カイロでの停戦交渉の結末はカタール・ドーハでの交渉と同様に失望的なものであり、各種のニュース報道は相変わらず、停戦合意が暗礁に乗り上げていることを示しています。特にエジプトとカタールをはじめとする調停者は政治的解決という立場維持に努力し続けています。ですが、はっきりしているのは、停戦支持という立場にあるはずのアメリカから依然として支持されることをシオニスト政権は確信しているがゆえに、今後さらに多くのメリットの獲得を目的に交渉妨害を続行しているということです。
米ホワイトハウスが地域の緊張緩和に向けた役割を自任している一方で、ネタニヤフ首相の前ではそれを反故にした結果、イスラエルはここ数日でヨルダン川西岸北部のトゥルカルム、ジェニン、トゥバスのキャンプに対して前例のない攻撃を行うなど、新たなレベルの行動をとるに至りました。
イスラエルのカッツ外相は、イスラエルの新たな犯罪の口実として、ヨルダン川西岸市民による抵抗運動を無力化することを挙げるとともに、これらの市民がヨルダン領を通じてイランの支援を受け、武装化しているとまで主張しました。また、イスラエルとして「ガザと同じように」ヨルダン川西岸で必要な全ての行動に出るべきだとも明言しています。
1993年のオスロ合意以来、イスラエル指導者らはヨルダン川西岸を、ガザでの抑圧を隠匿するために、パレスチナ人とシオニスト入植者の平和共存のモデルだと吹聴しようと努めてきました。
昨年10月のハマスによる「アクサーの嵐」作戦の前まで、ヨルダン川西岸はパレスチナ住民に対するイスラエルによる静かな犯罪の場でした。それが今、イスラエルの目標においてはガザとヨルダン川西岸の間に違いはなく、そして和平は単なる言葉遊びに過ぎず、パレスチナ領土のさらなる略奪を目指していることを示しています。
過去11カ月間にわたり、ヨルダン川西岸ではイスラエル軍との衝突により数千人の殉教者や負傷者が出ています。「ハマスなきパレスチナ」は現実から乖離したイスラエルの頭の中にしかない妄想であることを明らかにしました。
ヨルダン川西岸でのイスラエルの軍事侵略および、それによる殉教者の増加がこの数日間に限ったものではないことは言うまでもありません。ヨルダン川西岸に本拠を置くパレスチナ自治政府は、過去11カ月間と同様に実質的に中立であり、イスラエルの犯罪に協力さえしているのです。
ヨルダン川西岸の存続可能性のモデルとして普及してきたこのやり方は、最近ではイスラエルの行動に対して最も無防備な状態を呈しています。ヨルダン川西岸での政治的解決の確立の危機は、ガザでの停戦合意への障害を増大させる可能性があります。
イスラエルが不当な条件を突き付けてガザ停戦成立を目指していることは、ヨルダン川西岸で行ったことと類似しています。それでもイスラエルが西岸を攻撃していることを見れば、イスラエルに譲歩してもガザでの犯罪は終わらないことは明白です。
パレスチナ側もアラブ圏の仲介国の政府も、緊張継続を狙ったイスラエルによる新たな戦線形成に無関心ではいられないことは確実です。この数週間、アメリカはイランへの調停者の派遣、緊張激化や地域戦争の防止と称した警告メッセージなどを発出しています。
こうしたアメリカが思惑とする根回しに反して、ハマスが停戦に前向きであるにもかかわらず、アメリカの恒常的な支援を受けて裏をかいているのは、他でもないイスラエル側なのです。レバノンの抵抗組織ヒズボッラーのアルバイン(シーア派3代目イマーム・フセイン殉教の40日忌)作戦にイランが呼応すれば、パレスチナや地域におけるイスラエルの越境攻撃に加えて、この米国の無条件支援という方程式を変化させるでしょう。これ以外にはおそらく、今後とも奏功しない政治的行動やイスラエルとアメリカに有利な時間の経過、そしてイスラエルの犯罪の激化を目の当たりにすることになるでしょう。