シリア危機:内紛および米・シオニストによる干渉の産物
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シリア北西部アレッポ市での衝突・紛争
シリアでは、なおも続く外国の介入および、ジャウラニ暫定政権側勢力と武装組織・SDFシリア民主軍の間での衝突により、国内の情勢不安が高まり治安が益々乱れています。
シリア情報筋によりますと、同国北西部の都市アレッポでは、SDFの民兵とジャウラニ政権軍との間で衝突が激化しており、SDFと政権側治安部隊の衝突の激化に伴い4人が負傷しました。
アレッポ市のクルド人治安部隊「アサイシュ(Asayish)」も、同市内アル・シハン広場の検問所が武力攻撃されたと発表しました。
英国に拠点を置くNGO「シリア人権監視団(SOHR)は、アレッポ市内のシェイク・マクソウド地区およびアシュラフィヤ地区で暫定政権軍とSDFとの衝突により、子ども1人を含む民間人16人が負傷したと報告しています。
地元情報筋によると、シリア東部デリゾール東部近郊のアル・ブカマル市でも大きな爆発音が聞こえたということです。シリアのメディアによりますと、デリゾール東部のアル・ブカマル市トゥワイバ地区で爆弾が仕掛けられたオートバイが爆発し、1人が死亡しました。
シリアにおける最近の情勢は、ジャウラニ暫定政権側勢力と反体制派勢力間の紛争の継続、そして米国とシオニスト政権イスラエルの介入により、シリア国内の情勢不安がさらに深刻化していることを物語っています。ジャウラニ政権とつながりのある因子の行動により、シリア情勢はさらに深刻化しています。
一方、シリアの石油資源が豊富な地域や国境地帯には米軍も部隊を配備し、ジャウラニ政権によるシリアの経済・地理的資源の完全掌握を阻止しています。また、SDFへの支援は、クルド人とその他のシリア国内勢力間の亀裂を引き起こし、内戦の激化をまねいています。
米軍はシリア・イラク国境に妨害・通信妨害システムを設置し、新たな緊張を生み出しています。またイスラエル政権も、シリアでアサド前政権が崩壊した後、同国への介入と軍事駐留を拡大しています。
シオニスト政権は、シリア軍と抵抗勢力の弱体化を図るため、同国の軍事・治安インフラを繰り返し狙い攻撃してきました。また、シリア南部のシーア派の一派・ドルーズ派系の一部集団に武器を与え、扇動することで、これらの地域における緊張と分離主義の土壌を作り出してきています。
一部の分析からは、シオニスト政権は、シリアの崩壊と政治的一体性の崩壊を前提として、地域における安全保障と経済的影響力のための強制的な回廊の創設を目論んでいます。米国とシオニスト政権の介入はシリア政府を弱体化させたとともに、内部分裂を助長し、シリアと地域における長期的な危機への下地を生み出しました。
外国の介入に加え、ジャウラニ現暫定政権の行動もシリアにおける社会的・政治的分裂の悪化をまねいており、このプロセスによりシオニスト・アメリカ枢軸が影響力を拡大し、危機を引き起こすこととなりました。ジャウラニ氏(シャラア現暫定大統領)は排他的で暴力的な政策により、シリアにおける社会崩壊、民族分裂を引き起こし、外国の影響力拡大の隙を作った格好となっています。
ジャウラニ氏は少数派の抑圧、政治エリートの排除、そして外国からの支援への過剰な依存を継続することで、シリアにおける政治、安全保障、そして社会危機を悪化させてきました。アサド前政権崩壊から1年が経過した現在、シリアは「地域的勢力・主体」から「地域・国際的な競争の場」に成り下がってしまっています。
過去1年間の出来事は、アサド前政権の崩壊がシリア危機を終結させなかったのみならず、アメリカ・シオニスト枢軸の継続的な介入がシリア国内の治安悪化、社会の崩壊、宗派間分裂の新たな局面を引き起こし、激化させたことを裏付けています。

