ドイツが以前の政策に逆戻り:対イスラエル武器輸出を再開した理由とは?
-
イスラエルのネタニヤフ首相(右)とドイツのメルツ首相
ドイツ政府報道官が、今月24日からシオニスト政権イスラエルに対する武器輸出を再開すると発表しました。
【ParsToday国際】シュテファン・コルネリウス独政府報道官は今月17日、「停止されていた対イスラエル武器輸出再開の決定は、現在の停戦の遵守と大規模な人道支援の提供が条件である」と主張しています。これにより、ガザ紛争の停戦開始から5週間後、ドイツ政府はイスラエル向け軍事装備輸出停止という以前の決定を破棄した形となりました。
コルネリウス報道官は「今回の決定の主な理由は、去る10月10日から実施されここ数週間で強化されてきたガザ地区での停戦である」と主張しています。もっとも、ドイツ当局がガザでの停戦の強化を強調しているこの時期に、イスラエル政権は自らが引き起こしている継続的なガザ攻撃とパレスチナ人殺戮により、世界から非難の矢面に立たされています。
コルネリウス報道官は、シオニストによる数十件もの停戦違反を非難することなく、「今回の決定の根拠となったのは、パレスチナ・イスラム抵抗運動ハマスとシオニストの間の停戦であり、我々は全ての者が合意を遵守するよう期待する!」と主張しました。同報道官によれば、去る8月から実施されていたイスラエル向け軍事装備品の輸出制限は今月24日に解除され、今後は申請が個別に審査されるということです。これに関して、ドイツ政府は「今回の決定は、イスラエルからの全ての申請が自動的に承認されることを意味しない」と強調しました。
ドイツの武器輸出ガイドラインでは、戦争地域および危機にある地域への軍事装備の輸出は禁止されていますが、イスラエル占領地は例外扱いとなっています。ドイツ政府は「第2次世界大戦中のホロコースト以降、イスラエルの安全保障はドイツの政策における歴史的な遵守事項および、基本原則の一部とされている」と主張しています。ドイツは、この口実のもと、パレスチナ人に対してイスラエル犯してきた広範な犯罪行為を常に看過してきました。
2023年10月7日のパレスチナによる対シオニスト攻撃・「アクサーの嵐作戦」後、オラフ・ショルツ氏(社会民主党)率いる前ドイツ政権はシオニストとの連帯を示すため、イスラエル向け武器輸出を増大させ、2025年5月の同氏の任期満了までに、約5億ユーロ相当の輸出許可が発行されました。さらにメルツ氏率いる新連立政権も、より限定的な規模ながらも対イスラエル武器輸出を継続していました。
しかし、世論の圧力や、欧州および世界レベルでイスラエル向け武器禁輸を求める声が相次いだことを受け、ドイツ政府は去る8月8日、やむなく対イスラエル武器輸出許可証の発行停止命令を出しました。この措置は、ドイツ・イスラエル間の外交的緊張を引き起こしています。当時、メルツ首相は、ガザ紛争で使用される可能性のある装備品の許可発行を禁止していました。
ドイツの週刊誌「フォークス」は、「メルツ首相は社会民主党のラース・クリングバイル副首相と調整の上、この決定を下したものの、連立相手であるキリスト教社会党や、ドイツ連邦議会(連邦議会)におけるキリスト教社会党(CDU/CSU)とキリスト教民主党(CDU/CSU)の党首に相談せずにこの決定を下した」と報じました。ドイツ政府のこの決定は、イスラエル当局から厳しい反発を受けました。しかし今、ドイツが長年にわたるイスラエル向け武器輸出政策に回帰したことで、イスラエル政権当局は喜びに沸いています。
ドイツは、米国に次いで第2位のイスラエル向け武器輸出国であり、これまでのところこれに含まれている武器は;
- 潜水艦:イスラエルに対するドイツの最も重要な貢献の一つは、ドルフィン級潜水艦の供給である。これらの潜水艦は、核搭載可能な巡航ミサイルが搭載可能だとされ、イスラエルの潜在的な核抑止力の重要な部分を構成しているため、イスラエルにとって戦略上極めて重要である。ドイツはイスラエルにこれらの潜水艦を複数隻売却しており、その費用の一部も負担している。
- 巡視艇およびフリゲート艦:ドイツはイスラエル海軍に巡視艇と軍艦も供給している。
- 武器およびその他の装備品の輸出:ドイツは潜水艦に加え、スペアパーツ、エンジン、その他の軍事装備など、各種の武器や軍事装備品をイスラエルに売却している。
- 軍事協力:ドイツ軍とイスラエル軍の間では、技術協力と訓練協力も行われている。
そしてもちろん、ドイツは全面的な軍事支援に加え、政治・法的領域でもイスラエル支援のため重要な措置を講じてきました。その例として、ドイツ政府は2024年1月、ガザでのパレスチナ人虐殺を理由にシオニスト政権が1948年のジュネーブ・ジェノサイド防止条約に違反したという南アフリカの訴えを却下し、1948年のジュネーブ・ジェノサイド防止条約の適用を明確にするため、ICJ国際司法裁判所の審理に第三者として参加する用意があることを表明しています。
ドイツは、児童虐殺政権たるイスラエルを後方からバックアップすることで、ICJでの非難を回避できると考えています。しかしこれに対し、中米ニカラグアはドイツを「ジェノサイドへの共謀」で告発し、ICJに提訴しました。
総合的に見て、西側諸国、特に米国とドイツから広範な支持を受けているにもかかわらず、国際舞台におけるイスラエルの位置づけ・立場が益々低下し、この犯罪政権に対する世界中の人々の憎悪が高まっているという現実を、ドイツ政府はもはや無視できなくなっているのです。

