西側の思想家が考える預言者ムハンマド(7)
アメリカ・ノースカロライナ大学の宗教学の教授であるカール・エルンストは、イスラムの預言者ムハンマドについて次のように語っています。
「ムハンマドが魅力的な人間で、誠実さと責任感があることで知られていたことは、誰もが認めている。そのため、ムハンマドは『信頼できる、誠実な』という意味のアミーンという名で呼ばれていた。若い頃から、中立な調停者としてすべての人に受け入れられていた。ムハンマドが伝えようとしたことは、驚きと啓蒙を与えるものだった。このメッセージの最大の特徴は、不信心や多神教信仰に対して、神への信仰を提起するものだった。ムハンマドは公然と、社会の道徳的な基盤の改革に取り組んだのだ」
エルンストによれば、賢明で力のある指導者としてのムハンマドは、慈悲の象徴であるムハンマドと矛盾しません。イスラムの聖典コーランは、彼を善良な指導者と読んでいます。そのため、預言者の教えを信じる人々は、預言者の生き方を注意深く研究し、それを自らの生活の原則的、道徳的な指標として利用しようとしています。ムハンマドは、相手が有力者であろうと、普通の人であろうと関係なく、全ての人と平等に接していました。このような行動により、正義と公正のモデルを示していたのです。
エルンストは、預言者ムハンマドに関して述べられている数多くの特徴の中でも、彼が社会的な自由と公正の理想的な象徴であったことを追加すべきだと考えています。ムハンマドの精神性と信仰は、彼を道徳的な指導者としてだけでなく、世界に常に輝き続ける永遠の光としています。
エルンストは、現代世界における宗教的な革命の出現は、西側の作家によって提示されたイスラムの預言者に関する強いマイナスのイメージに対する回答だとしています。エルンストは次のように記しています。「新たな変化は、イスラム諸国における学術的な成長の現われであり、イスラムの預言者ムハンマドを、これ以上、予言する力を持つ、半ば伝説的な人物と見なすことはできないということを示すものだ。彼は現在、世界において、政治的、社会的な改革者として提起され、将来を見据える力によって反対者に接すると同時に、地上における人間社会の完全なモデルとなりうる社会を築き上げた」
エルンストは次のように語っています。「実際、預言者は、影響力のある指導者であると同時に、優しく力強い夫、父親でもあった。ムハンマドは預言者や政治指導者として行動していた間、父親として、夫としての責務も果たしていた。彼は家族や子供たちを愛していた。妻ハディージャの死後、ムハンマドは数人の妻を持った。一部の結婚は政治的なもので、部族の連帯を強める目的で行われた。多くの問題にも拘わらず、家族の問題への対応は、預言者の人生の大部分を占めていた」
エルンストは最後に、このように結論付けています。
「ムハンマドは晩年、大きな社会の指導者となった。全ての人にとって慈悲深い人物であった彼は、アラビア半島の全ての部族と連帯した。そして何より重要なのは、礼拝による行動に基づく彼の教えが、道徳的な理想と社会的な構造を築いたことであり、それは歴史の中に永遠に刻まれている」