地中海で再発した難民の溺死事件
(last modified Thu, 21 Apr 2016 11:31:35 GMT )
4月 21, 2016 20:31 Asia/Tokyo
  • 地中海で再発した難民の溺死事件

国連が、地中海のリビア沿岸で多数の難民を乗せた船が転覆し、数百人が溺死したと発表しました。

ミールターヘル解説員

国連難民高等弁務官事務所は20日水曜、リビアの東部沿岸付近で多数の難民を乗せた船が転覆し、これらの難民541人のうち救出されたのはわずか41人であることを正式に認めました。国連は、今回の事件を昨年地中海経由でヨーロッパに向かおうとしていたアフリカからの難民をめぐる事件の中で、最も多くの犠牲者を出した事件であるとしています。今回の事件での生存者によれば、全長30メートルの船にリビアからヨーロッパに向かおうとしていた、100人から200人の難民が乗っており、彼らが途中でより大きな船に乗り換え用とした際に、大型の船が転覆し、沈没したということです。。

こうした中、難民のもう1つの移動経路である、トルコからギリシャに向かうルートによる難民の流入は減少しています。ギリシャのチプラス首相は20日水曜、演説し、「数ヶ月前には、1日あたり3000人から4000人の移民がギリシャ領の島々に入ってきていたが、現在では50人から60人にも満たない」と語りました。ギリシャのカメノス国防大臣は、「NATO・北大西洋条約機構軍は、エーゲ海での駐留を強化し、人身売買の取り締まりの支援を行っているが、このことはギリシャへの難民の流入の減少に大きく貢献している」と述べています。

ドイツのウルズラ・フォン・デア・ライエン国防大臣も、ギリシャ北部にある一時的な難民キャンプから正式なキャンプへの難民の移送を求めました。複数の人権団体は、これらの難民キャンプが劣悪な状況に陥っていることは、ギリシャの責任であるとしています。

中東や北アフリカの紛争地域からEU圏に大量の難民が押し寄せたことは、EU諸国にとっての危機となっており、EUは現在、第2次世界大戦後最大の難民危機に瀕しています。欧州対外国境管理協力機関の統計によれば、昨年1年間で183万人以上の難民が国境を越えてヨーロッパに入ってきたとされています。この難民危機により、EU諸国同士の関係に緊張が生じており、これらの国々のシェンゲン協定に対する強い疑問が生じています。

EUの統計局であるユーロスタットは20日水曜、昨年EU諸国が33万件の難民認定申請を受け付けたことを明らかにしました。この数字は、その前の年と比較して72%の増加を示しています。