砂漠の美、「太陽の調べ」
最近、「太陽の調べ-イランの砂漠・文明の中心-」という展示会がテヘラン現代美術館で開催され、写真家のモハンマド・レザー・ジャヴァーディー氏の砂漠に関する作品が展示されました。 ジャヴァーディー氏の作品は文化的・芸術的な価値を持っており、また、ジャヴァーディー氏の展示会は、ただの写真展示会ではなく、どのように地理的な条件が一国の文化の一部になるのかということに関する、文化的・芸術的な思想を提示しています。
イランの国土のおよそ4分の1は、砂漠でできています。この砂漠地帯は、北部のアルボルズ山脈と南部のザーグロス山脈に挟まれるような形になっています。イランのもっとも有名な砂漠はルート砂漠とキャヴィール砂漠で、その面積は36万平方キロになります。
ルート砂漠は広大な砂漠です。ルート砂漠には枯れ川があります。ルート砂漠にはこの河床に沿って塩砂漠があり、一部は季節の移り変わりにより、一時的に姿を現します。
全体的に、ルート砂漠の塩砂漠は、普通の砂漠に比べて広くありません。ルート砂漠は、塩砂漠がほとんどを占めるキャヴィール砂漠と対を成しています。
ルート砂漠の山の裾野には、4000年前から人がすんでいた痕跡が見られます。チャーレ・キャビールという塩砂漠は、イラン高原の中央部に位置し、その長さは800キロ、幅はおよそ600キロです。その主要な部分は、広い湿地帯に覆われています。この砂漠は、世界で最も暑い場所と見られており、夏は50度に達します。また、昼と夜との温度差は、しばしば70度にまで達します。
キャビール砂漠の中央部には、水分を含む場所はまったく存在しません。このため、植物が生えておらず、また、動物もすんでいません。キャヴィール砂漠の南側には、様々な哺乳類や爬虫類、鳥類が見られます。
イランの文明が、砂漠地帯に、このような特性を持って構築され、イランの芸術もこのことに影響を受け、多くの芸術家がこれをテーマに活動を行った、というべきでしょう。実際、砂漠はイランの芸術家の総体的な概念のひとつとなっており、このためにイランについて語るため、より砂漠を知るべきなのです。
イラン現代美術館は、「太陽の調べ-イランの砂漠・文明の中心-」という展示会の開催のために、イランの文化や芸術における古代の四大元素、つまり火、水、土、風の影響を検討し、以前から企画を行っていました。イランの塩砂漠とカナート・地下水路がユネスコ世界遺産に登録されたことで、まずはじめに、イランの芸術における土の元素の影響【と題する】展示会を開催しました。
写真家のモハンマドレザー・ジャヴァーディー氏は、この展示会の開幕式で、「このプロジェクトは、1984年から2013年の作品が展示されている、最新の良好なプロジェクトだ」と語りました。この写真展は、ほかの写真家の作品とともに、彼の作品60点を展示しています。
これらの写真から、ジャヴァーディー氏が砂漠に親しみを持ち、砂漠の美しさを我々に示していることが伺えます。彼は写真とともに、砂漠に関する詩を詠み、砂漠の詩的な表情を我々に見せているのです。
多くの芸術家が、砂漠により多くの作品を作り出してきましたが、ジャヴァーディー氏は砂漠の穏やかさや、やさしさについて語っています。彼はモノクロ写真を素晴らしい芸術作品に変えています。見えないものを見せることは、芸術家の基本的なエッセンスであり、ジャヴァーディー氏はこれを素晴らしい形で見せています。
著名な詩人で映画製作者のモハンマドレザー・アスラーニー氏は、この展示会の開幕式で、次のように語りました。
「ジャヴァーディー氏はこの展示会で、砂漠のイメージを自身のイメージと結びつけ、それを同一化した。ジャヴァーディー氏の撮る砂漠は、大洋を泳ぐ鯨のようだ。砂漠は常に動き続け、一方でジャヴァーディー氏は写真の中で砂漠の動きに秩序を与えている、それは、触れることのできる穏やかさだ。」
フランスの哲学者ロラン・バルトは、写真の伝えるメッセージとは何か、写真は何を伝えるかという質問に答える中で、「事実を伝えることが写真の重要な機能だと語らなければならないだろう」と述べました。バルトの見解では、写真は秘密のないメッセージで、そのメッセージは連続的なものだとされています。
ジャヴァーディー氏はなによりも、光と影を用いて、ある種の距離感を強調しています。この距離感において、距離の調整のためにあるテーマを利用しています。幾層にもわたる砂のフォルムを作り出すこと、砂漠でグラフィックデザインのような様子を発見すること、自然の美しさを際立たせること、砂漠の抽象的な風景を拡大して見せること、これらは美しさで驚きを与えるための、芸術家の努力によるものなのです。
この展示会、「太陽の調べ-イランの砂漠・文明の中心-」を訪れた人は、この作品を通じて、砂漠の深い思想を理解し、これらの写真家の芸術的な観点を知り、砂漠を改めて理解します。この展示会は、テヘランのあと、ニューヨークの国連本部、その後ジュネーブやウィーンでも開催されます。
この展示会は、8月30日から、9月11日まで開催されました。