ノウルーズ便り
春の新年・ノウルーズを間近に控えたイラン
イランおよびイラン文化圏では、日本の春分ごろに当たる日が春の新年とされ、ペルシャ語で「新しい日」を意味するノウルーズと呼ばれ、古くからの色々な慣習が実施されています。
イランでは現在、新年を迎えるまでの秒読みが始まっており、人々が古式ゆかしい風習である春の新年・ノウルーズを間近に控え、急ピッチで準備を進めています
毎年、イラン暦の12月に当たる西暦の3月にはいると、イラン全国はもとより、在外のイラン人たちの間にも独特の雰囲気が漂い、新年を迎える準備が開始されます。
ノウルーズにまつわる優れた習慣や価値観の1つに、そのおよそ1,2週間前から始まり、ペルシア語で”家の中の埃を払い落とすこと”(大掃除)を意味する、年末の大掃除があります。この大掃除により、前年のちりあくたが残らないよう、自らの住空間から公共の場所にいたるまで清掃が行われ、市町村全体の様相が一斉に様変わりします。窓ガラスは全てきれいに磨き上げられ、建物の壁の一部が新たに塗り替えられることもあります。これは、住空間から死などの忌まわしい要素や古いものを吹き払い、新年を新しく好ましい状態で迎えるとともに、年始回りの訪問客を迎えるための準備でもあります。そしてもちろん、ノウルーズを機に自らの精神から嫌悪感や怨恨など、マイナスの要素を払拭することも重視されています。
イランの多くの家庭も、それぞれの経済力に応じて歳末のための買い物をします。このため、年の瀬には、街中のショッピングセンターや市場、特に家庭用品や履物、衣服、来客の接待用の乾燥ナッツ類を扱う販売店は、平常時よりも混雑します。
また、ノウルーズの日には真新しい衣服を身に着けることが慣わしとなっています。これは、樹木や草花が芽吹き、大地に緑が新たに繁茂するという、春の自然現象に倣ったもので、イラン人が春の到来とともに新しい衣服に身を包むことに、喜びや安らぎが存在すると考えていることに由来します。そしてノウルーズ期間中の古くからの習慣として、家族親戚や、友人知人を訪問しあう年始回りも行われます。
そして、ノウルーズまであと2週間ほどになったころには、平たい盆などの上で小麦やレンズマメなどを濡らして発芽させ、サブゼと呼ばれる装飾用の新芽の束を造るというものがあります。イラン人は、生きていることや恵みのシンボルであるこの緑の新芽の束を、ノウルーズの初日に、新年の7つの縁起物の1つとして食卓に並べ、13日目となるノウルーズの最終日に、長く伸びたこの新芽の束を川などに流す習慣があります。
ノウルーズの最大のシンボルは、ペルシャ語のアルファベットのSで始まる7つの縁起物、ハフトスィーンだと言えます。イラン人の各家庭は、年が切り替わる前日、或いは2日前にこの7つの縁起物を買い揃え、家庭内での団欒にふさわしい空間を整えます。
この7つの縁起物とは、ホソバグミ、にんにく、発芽させた新芽の束、スパイスの一種であるソマーグ、リンゴ、麦芽のペーストであるサマヌー、ビネガーであり、さらにはコーランやコイン、卵、鏡、金魚などが添えられます。
それから、イランの多くの地域に普及しているノウルーズ前の習慣には、新年のためのお菓子や、甘味のある特別なパンの調理があり、イランの一部の地域では、女性たちが共同でこれらの調理に当たります。
加えて、ノウルーズの1週間ほど前の時期に、結婚する予定の男性の家庭は、相手の女性の自宅に、また新婚の女性の家族も新郎新婦にお菓子や宝石、布地などを送る習慣があります。このほかにも、年末の墓参や恵まれない人への公的支援活動としての歳末助け合い、年度内に身内に不幸があり服喪中の近親者に明るい色の衣服を用意し、喪服から普通の服に着替えるよう促すことや、年長者による不和対立を抱えている家族や人々の仲裁など、色々な立場にある人々と新年の喜びを分かち合うための一連の慣わしがあります。
さらに、イラン人の間には本来は年賀状を送る習慣もあり、以前は家族から遠く離れて暮らしている人が、美しいデザインや写真のついたカードなどを家族に送っていましたが、近年ではこうした新年の挨拶もインターネットや携帯電話など、先進情報技術によるメールやSNSに取って代わられています。
そして、新年が明ける前日の夜に各家庭では特別なご馳走が作られ、家族全員で集まり、親密感があふれる中で夕食を共にし、年の切り替わりを迎えます。
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