精神性への扉(6)【音声】
(last modified Wed, 12 Apr 2023 11:03:00 GMT )
4月 12, 2023 20:03 Asia/Tokyo

これまでの番組でお話したように、神の預言者の問題は、イスラム教の重要な原則であり、その存在を信じ、最後の預言者であるムハンマドに従うことは、イスラムに入信する上で必須のことと見なされています。

今回のこの時間は、預言者の使命と、神の預言者たちが人類の生活に及ぼす影響についてお話しましょう。

 

神の預言者たちは、神の啓示を人々に伝える役目を持っています。つまり、正しさ、美しさ、善良さからインスピレーションを得て、人間を真理と救済へと導きます。実際、神の預言者たちは、人類の思想の道に明かりをともし、人間はその光によって、無知という暗闇から解放され、公正、善、幸福へと歩みます。

 

神の預言者たちの最も重要な役割は、唯一神の信仰へと人々を導くことです。これまでの番組でお話したように、崇拝は、人類の社会的、精神的なニーズのひとつです。とはいえ、こうした崇拝の対象物に関して、人間は、様々な時代に逸脱に陥ってきました。こうした中、神の預言者たちは、人間は唯一の神以外のものを崇拝してはならないとし、すべての存在物の創造主である神を崇拝するよう求めています。

 

人類は、神の預言者たちの教えによって、生は現世に限られたものではなく、より広い世界へと移動することを理解しました。そのため、人間は自由であると同時に、神、自己、そして社会に対し、責任を負っています。預言者の教えの影響は、人間の教育、社会的なしがらみからの解放や契約の遵守の中に見ることができます。

 

コーランは、神の預言者たちの共通の目的として、2つの事柄を挙げています。ひとつは、人間に神に関する知識を教え、神に近づかせることであり、もうひとつは、現世での人間の生活の改善を目指すことで、社会的な公正を確立することです。コーラン第57章アル・ハディード章鉄、第2節には次のようにあります。

 

「我々は、明確な根拠と共に預言者たちを遣わし、彼らに書物とはかりをさずけた。それは、人々が正義と公平を守れるようにするためである」

 

歴史の中で、多くの人間が人類社会の大きな変化を引き起こしたことは否定できない事実です。しかし、注目すべきなのは、社会的な状況が、そのような人々が役割を果たすための土台になっていたことです。言い換えれば、彼らは歴史的な出来事のきっかけに過ぎません。しかし、神の預言者たちは、自分の手で歴史を変え、道を示し、後の世代を教育する人々です。

 

神の預言者たちは、2つの特徴を有しています。この2つの特徴とは、奇跡を有していること、そして過ちや罪を犯さないことです。神から使わされた預言者は皆、普通の人には行えないような超能力、つまり奇跡を有しています。

 

預言者ムーサーの奇跡は、杖でした。ムーサーがその杖を地面に投げると、大きな竜の姿に変わりました。また、預言者イーサーの奇跡は、死人を蘇らせることでした。また、預言者ムハンマドは、偶像を崇拝する無知な民の中に現れ、読み書きができなかったにも拘わらず、生活の規範、道徳、教育の原則、知識に溢れた書物をもたらしました。この書物、つまりコーランは、あっという間に当時の世界に大きな変化を生じさせ、大きな文化的、思想的な革命と共に、輝かしい文明を築きました。その裾野は今も広がり続けています。

 

罪や過ちを犯さないことも、神の預言者たちの特徴です。彼らが他の人間たちと同じように、過ちや罪を犯していたら、彼らに従うことはできなかったでしょう。そのため神は、彼らをあらゆる穢れから遠ざけています。神の預言者たちは、決して欲望に負けることも、罪を犯すこともありません。彼らは、神から啓示された事柄を、そのままの形で受け取り、わずかたりとも変化を加えずに人々に伝え、自分自身も最高の形で、その教えを実行していました。そのため、神の預言者たちの教えは、人間の幸福を保障するものとなっています。

 

 

現在、イスラム教徒はラマザーン月を迎えています。この月、断食をする人は、一日のうちの決められた時間に一切の飲食と、断食を無効にする行いを控えます。イスラム教徒のアミール・モハンマディさんは、初めての断食についてこのように語っています。

 

夏でした。外出すると、暑さでのどが渇きました。当時私は15歳で、ラマザーン月が近づいていました。家族はラマザーン月を大切にしていました。父は、神はアミールにも慈悲をあずけてくださり、今年は彼も神の宴に参加すると言っていました。でも私は、そのような暑さの中で断食などできるだろうかと不安でした。ラマザーン月の1日、夜明けに目覚めて祈りを捧げた後、断食に入りました。昼が近づいた頃、のどの渇きと空腹を覚えました。少しずつそれに耐えられなくなり、誰も見られていないのだから、少し水を飲んでしまおうと思いました。コップに冷たい水を汲み、口に近づけました。そのとき突然、誰かに見られていて、私に過ちを気づかせようとしているような気がしました。私はそのとき初めて、神の存在を心の中に感じました。私は恥ずかしくなりました。コップを地面に置き、部屋に戻りました。そのとき、部屋にあった額縁が目に入りました。そこに書いてあるコーランの節が、突然、私にとって大きな意味を持って見えました。

「私の僕たちに、私について尋ねられたら、言え、『私は近くにおり、祈る者の祈りに応じると。だから私の導きを受け入れ、私に信仰を寄せなさい。正しい道を歩めるように』と」

そのときから、私は心から満足して断食を行うようになりました。あれから長い年月が経ちましたが、私の断食を妨げるものは何もありません。

 

最後に、イスラムの預言者ムハンマドの言葉をご紹介しましょう。

「最高の人間とは、人々にとって利益のある人物のことである」

 

 


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