預言者ムハンマドの召命日
今日、イスラム暦ラジャブ月27日は、イスラムの預言者ムハンマドが神から預言者としての使命を与えられた召命日です。
イスラム暦ラジャブ月27日は、創造世界において神の力が具現された日です。ムハンマドが神から最後の預言者に任命されたマブアスの日です。イスラムの聖典コーランは、この出来事を、人類への恩恵とし、第3章アールイムラーン章イムラーン家、第164節で次のように語っています。
「神は信仰を寄せる人々に恩恵を与え、彼らの間に、彼ら自身の中から預言者を遣わした。神の節を彼らのために読み、彼らをあらゆる穢れや過ちから遠ざけ、英知と書物を教えるためである。彼らはそれまで、明らかな迷いの中にいた」
ムハンマドが40歳になったとき、神は彼の心を、最も謙虚で最高の心と捉え、彼を、人類を導く人物として選びました。こうして、神の慈悲が下されました。
ムハンマドは、大天使ジブライールが、光の輪と共に天から降り立つのを目にしました。大天使のジブライールが降り立ち、ムハンマドの肩をつかんで言いました。「ムハンマドよ、読みなさい」 ムハンマドは、何を読んだらいいのかと尋ねました。大天使ジブライールは言いました。
「読みなさい。あなたを創造した主の名のもとに」
大天使ジブライールは、神から受け取った事柄をムハンマドに下し、天へとのぼって行きました。シーア派10代目イマーム、ハーディは、この出来事について次のように語っています。
「ムハンマドはハラーの山から降りてきた。そのとき、神の栄光と偉大さを目にし、我を忘れたかのようだった。大天使ジブライールと神の啓示を目にしたことは、ムハンマドにとって非常に大きな出来事であり、熱でもあるかのように震えていた。彼は人々に否定されたり、狂人と言われたりするのを恐れていた。しかし、彼は人々に最も尊敬される賢い人物であり、狂信的な人間の言動や悪魔を強く嫌悪していた。そこで神は、強い忍耐力を彼に与え、彼の心に確信を与えた。こうして、彼が戻っていくとき、山々や大きな岩、小さな石、彼が通り過ぎたすべてのものが、彼に挨拶をし、こう言っていた。『神の預言者であるあなたに平安あれ』」
ムハンマドがイスラムの預言者に任命されたことは、人間の運命に大きな影響を与えた、イスラム史上、最も重要な出来事です。マブアスとは、任命される、召命される、という意味です。つまり、至高なる神から、人々を導くために遣わされることを意味します。預言者の使命は、特定の民族に限られたものではありません。なぜなら彼は、すべての時代の人類全体のために遣わされたからです。
ムハンマドが預言者として遣わされるまで、世界は深刻な危機と混乱の中にありました。無知、強奪、圧制、腐敗、堕落、差別、道徳や人間性からの乖離、当時の人類社会は、これらの問題を抱えていました。
この中で、アラビア半島、特にヒジャーズ地方は、政治、経済、社会、文化の点で、最悪の状況にありました。女性たちは、基本的な権利を奪われていただけでなく、物のように売買され、生きたまま埋められることもありました。コーラン第16章アン・ナフル章蜜蜂、第58節と59節には次のようにあります。
「娘が生まれるという吉報を彼らの一人に伝えるたびに、その表情は暗くなり、激しく憤慨していた。彼に与えられた悪い知らせのために民のもとから逃げ出した。不名誉を受け入れてその子を育てるか、土の中に埋めてしまうかと迷っていた。彼らはなんと悪い判断を下すことか」
この時間は、イスラムの預言者ムハンマドの召命日に際し、特別番組をお送りしています。
聖典コーランは、数々の節の中で、預言者が遣わされた目的について語っています。神の預言者たちが遣わされた最も基本的な目的は、人々を唯一神の信仰へと導き、多神教信仰を否定することです。コーランは、第16章アンナフル章蜜蜂、第36節で次のように語っています。
「我々は、あらゆる共同体に預言者を遣わした。あなた方が唯一の神を崇拝し、多神教を信仰しないようにさせるために」
実際、神の預言者たちが遣わされた、この他の重要な目的のひとつは、社会に正義を実現することです。預言者たちは、宗教の戒律を実践し、公正を渇望する人々を満たすことによって、人類の生活に宗教の潤いを与えるために遣わされました。コーラン第57章アル・ハディード章鉄、第25節には次のようにあります。
「我々は、明白な証とともに預言者たちを遣わし、彼らと共に書物を下した。人々が公正を実現できるように」
イスラムの預言者ムハンマドは、預言者が遣わされる最も重要な目的は、知性や理性を完成させることだと考えています。なぜなら、人類社会に唯一神信仰を定着させるには、人々の考え方や知性を高めることが必要だからです。
預言者ムハンマドの23年に及ぶ努力により、わずかな期間で、イスラム教徒は尊厳と栄誉を高め、世界に壮大な文明を築きました。預言者ムハンマドは、神の最後の預言者として、人類に最も包括的かつ完全な幸福のみちしるべをもたらしました。そのため、預言者から人類に示された教えを人々が学べば学ぶほど、社会からは混乱や醜さが取り払われ、世界のすべての人が、より美しい社会を目にするようになるのです。
預言者ムハンマドは、短期間のうちに、野蛮な社会の状況を変化させ、預言者としての使命を授かってから13年後には、学問、公正、唯一神信仰、精神性、道徳に基づく統治体制を打ち立てました。
預言者ムハンマドは、メッカからメディナへの聖遷によってイスラム統治の下地を整えた後、まず、イスラム教徒の間に同胞愛を生み出し、昔からの対立や敵対をなくしました。その後、彼らに知識を習得させました。
預言者ムハンマドは、人類の幸福を保証する教えを、世界の人々にもたらしました。彼は、神への崇拝という人間のニーズに最高の形で応え、神以外のものを崇拝しないようにとしました。ムハンマドが預言者に任命されたことで、人類社会の価値観に深い革命が起こり、世界の人々は、愛情、人間性、信仰、公正を知ることになったのです。
アメリカの歴史家、ウィルドゥラントは、次のように記しています。
「この偉大な人物が、人々にどれほどの影響を与えたかを知りたければ、預言者ムハンマドは、人類史上、最大の偉人だったと言うべきだろう。彼は、野蛮な状態の中で暮らす民族の道徳や知識を高めようとした。そしてそれに成功した。宗教の道において、自分のすべての望みを実行できた人物は、彼の他には存在しない。なぜなら、彼は宗教を信じていたからだ。そして、偶像を崇拝する、まとまりのない砂漠の民から、統一の取れた共同体を生み出した」
概して、預言者ムハンマドは、世界の人々に、物質的、精神的な生、文化的、経済的、政治的、道徳的、社会的な人生をもたらしました。幸福は、この導きに応じる人々のものです。コーランは次のように語っています。
「信仰を寄せた人々よ、神と預言者の導きを実行しなさい。それは、あなた方を生き生きとさせるものへと導く」