団結の旋律:イランのシーア・スンニ派両教徒による預言者生誕祭の風習
イスラム教の預言者ムハンマドの生誕を祝す行事は、預言者への情愛と献身の具現であるとともに、シーアとスンニ両方の宗派におけるイスラム教徒の団結の象徴でもあります。
【ParsToday宗教】イスラム暦の3番目の月であるラビーオル・アッワル月は、イマーム・フセイン追悼行事などが続くムハッラム月やサファル月を経た楽しいお祝い事の時期として知られています。この月は預言者ムハンマドの生誕や、シーア派6代目イマーム・サーディクなどの預言者の末裔の生誕といった行事が目白押しとなっており、イランや世界のイスラム教徒らが様々な儀式や祝祭行事を開催します。
各祝祭の日付
イスラム教徒の間では、預言者の生誕記念日はそれぞれ違う日に祝われます。スンニ派はラビーオル・アッワル12日を、シーア派は同月17日を預言者ムハンマドとイマーム・サーディクの生誕日と見なしています。この違いは、両派のさまざまな伝承に起因しています。
団結週間
イランではラビーオル・アッワル月17日が休日となっており、同月12日から17日までがイスラム教徒の団結週間とされています。今年は西暦9月21日までがちょうどその期間にあたり、イスラム教徒間の絆を強化し、異なる宗派間の連帯を強調する機会とされました。
人々の間の風習
イランの宗教的な祝祭行事はさまざまな方法で開催されます。イランでは装飾や照明の設置、願掛け用の食物の無料配布、預言者一家の血筋を引くとされる人々(セイエド)への訪問や面会、お菓子作りや音楽の演奏、伝統的な衣装の着用などにより、こうした祝祭行事が鮮やかに彩られます。
一部の人々は、特定の伝統に基づいて断食や推奨される祈祷などの宗教的行為を行います。たとえば、南東部スィースターン・バルーチェスターン州では、人々が預言者の記念日に断食をし、西部ガズヴィーン州では、推奨されている祈祷を捧げたりします。
祝祭への招待
人々は、招待状の配布や拡声器でのアナウンス、預言者生誕の祝詞の朗読によって、他の人を祝祭に招待します。中部マルキャズィー州ガルエタインなどの村では、かつてはチャーヴォシュと呼ばれる伝令官が住民に祝祭の開催を知らせていました。これらの方法は、社会における人々のつながりを強化するのに一役買っているといえます。
贈与と願掛け
さらに、この日の重要な習慣としては、自らを先祖代々預言者の末裔と称するセイエドと呼ばれる人々を訪問し、新婚夫婦に贈り物を渡すことが挙げられます。一部の地域では、人々はセイエドたちに面会し、お祝いの品を贈ります。また逆に、セイエドらからお祝い金が渡され、もらった人が1年間財布の中に保管することもあります。南東部ケルマーン州では、預言者生誕記念日の朝に地元のセイエドを訪ね、祝福をこめて彼らの手に接吻するのが習慣となっています。
炊き出しや食事への招待
ケルマーン州では、願い事のある女性らが集まり、祈りを捧げた後、預言者への祝福の文言を唱えて、無料配布用の特別なスープを調理します。
スンニ派による風習
イスラム教のもう1つの宗派であるスンニ派の間では、預言者の生誕行事は「エイデ・モウルード(生誕祭)」などの呼び名で知られています。この儀式では、人々がモスクや個人宅に集まり、室内を独自の照明器具などで装飾し、甘い飲み物やお菓子で賓客を迎えます。南部ホルモズガーン州バンダルコングでは、日没の礼拝の後に地元の伝統打楽器ダフを演奏し、預言者を讃える頌詩を朗吟しながら預言者生誕の儀式が行われます。
イランでは主に北東部に多いトルクメン族の間でも、預言者生誕が盛大に祝われます。彼らの信念によれば、預言者はラビーオル・アッワル月12日に生誕し、また同じ日に昇天したと考えられています。この儀式の主な内容には詩の朗読や預言者の美徳の説明が含まれており、さらに、この日が月曜日に当たった場合には、より盛大な祝祭儀式が開催されます。
新生児の命名
イランではこの日に生まれた男の子の新生児には「モハンマド」「アミーン」「サーデグ」という名前が付けられ、これも預言者への献身を表しています。
終わりに
預言者の生誕を祝う行事は、預言者ムハンマドへの情愛と献身の具現であり、スンニ派とシーア派の双方におけるイスラム教徒の団結を象徴するものです。多様な興味深い習慣がみられるこの儀式は、人々が社会・文化的なつながりを強め、イスラム共通の価値観を想起する機会となっています。