6月 26, 2022 17:13 Asia/Tokyo

今回は、北西部にあるアルデビール州の自然と、その魅力についてご紹介して参ります。この地域は、温泉が湧き出ることで知られ、標高4811メートルのサバラーンという山が、雄大に聳えています。

アルデビール州は、気候の点から、大まかに3つの地域に分けることができます。ひとつは、サバラーン山を含む寒帯、アルデビールの町を含む半温帯、そして、低地が広がるモガーン平原一帯の温帯です。アルデビール州の見所は、豊富な天然資源、湖、温泉、狩猟場、緑豊かな森、レクリエーション施設などです。毎年、特に夏になると、この地域の自然を堪能しようと、イラン国内だけでなく、世界各地から、多くの観光客がやって来ます。

 

●サバラーン山脈

サバラーン山脈は、メシュキーンシャフルという町から南東に25キロの所にあります。この雄大な山脈は休火山で、数多くの山々が連なってできています。最も高い山は、「ソルターンサバラーン・サバラーンの王」と呼ばれる山で、その標高は4811メートルです。サバラーンは、山頂近くに美しい湖が存在することから、イランでも魅力のある特別な山のひとつとされています。頂上を四方から囲むようにしてできている大きな自然氷河、多数の温泉、そして4000メートル級の山々、これらは、サバラーンの壮麗な景観を一層引きたてています。サバラーンの山頂近くにある湖の湖面は、一年を通してほとんど凍結しており、その自然の姿を目にすることができるのは、夏の間に限られています。

 

サバラーン山脈は、アルデビールとアゼルバイジャンの2つの州の河川の重要な水源となっています。つまり、この地域の代表的な河川、アラス川やオルミーエ湖の水は、サバラーンから確保されているのです。また、サバラーンの麓の地域には、温泉や冷泉が、池のような形であちこちに散在しています。この麓の地域では、シャーサヴァンという遊牧民が長年にわたって生活を営み、この地域の半温帯、あるいは寒帯の気候と、緑豊かな草原に慣れ親しんできました。これらの遊牧民は、南から北に向かって移動し、質素で飾り気のない生活を送ってきましたが、そんな彼らの営みを、サバラーン山は昔から見守ってきたのです。夏の間、特に6月の終わりから7月の半ば頃までは、サバラーン山一帯に、非常に美しい景色が広がります。山の北側の麓には氷河が存在し、ガトゥールスーの渓谷には、広大な草原に赤いチューリップの花が咲き誇り、見る者を魅了しています。

 

サバラーン山の登頂を果たすには、まず、アルデビールから、サバラーン北部の大きな集落、ラーフルードに向かいます。ここからは、サバラーンの頂上を目にすることができます。しばらく徒歩で進むと、ガトゥールスーの温泉に辿りつきますが、サバラーンの東の小屋までの道路は舗装されていません。この小屋は、標高3500メートルのところにあり、登山家は、ここで休憩した後、4700メートルのサングメフラーブと呼ばれる場所まで、決められたルートを進みます。しばらく進めば、サバラーンの美しい頂上に到達し、青い湖を間近に目にすることができるでしょう。湖の水は澄み切っており、泳ぐことも可能なほどですが、夏の盛りでも気温が低いため、この湖で人が泳ぐ姿は見られません。サバラーンには、この頂上の湖のほかにも、多数の湖が存在し、中には適度な水温があり、泳ぐことのできる湖もあります。サバラーンの冬の登頂は、周辺の降雪量が非常に多いため、日数がかかります。そのため、完全装備でのぞむ必要があるでしょう。

 

●アルデビールの鉱泉

 

アルデビール州には鉱水資源が豊富で、いたるところに鉱泉が存在します。アルデビールの鉱泉は、サルエイン、ヴィーラーダッレ、ヴァキールアーバードの3つの地区に存在します。これらの地区はどれも、美しい景色と心地よい気候を有しています。サルエインは、アルデビールの南西、25キロのサバラーンの山麓に位置し、12の鉱泉が存在しています。これらの鉱泉の多くは、水が勢いよく湧き出ていて、主に入浴や病気の治療に利用されています。休火山の周囲にも、温泉や冷泉が数多く存在します。

 

サルエインにあるガーヴミーシュグーリーという名の温泉は、標高1940メートルのところにあります。毎秒140リットルの水が噴出し、この地域でも水量の多い温泉のひとつとなっています。また、水温およそ46度の湯が常に湧き出ており、酸性で無色透明ですが、硫黄の匂いがあります。水が湧き出ている付近には、黄酸化鉄の堆積物が見られます。またこの地域一帯には、大小さまざまな入浴場が作られています。この温泉は、病気の治療の点からも、一般の病気、慢性的な痛みやリュウマチ、るいれき、心臓病の治療の他、身体機能の強化にも効果的です。

 

また、サルエインにある温泉施設・クアハウスは、イラン、ひいては中東随一のクアハウスとされています。この温泉施設は、7200平方メートルの敷地に、2階建ての建物が設けられ、3つの屋内プール、乾燥サウナが4ルーム、蒸気サウナが2ルーム、冷泉、冷水及び温水シャワー、設備の整ったリハビリ施設があります。サルエインには、この他、サーリースーという名の温泉があります。この温泉のお湯は、水温が47度で、緑がかった色をしており、匂いがあって、少し酸味もあります。また、リュウマチや筋肉痛などによく効くと言われています。この他、ガラスーという名前の温泉もあり、ここは、リュウマチの治療の他、精神を安定させるのにも効果があるとされています。

 

●アルデビールの温泉

 

温泉は、火山活動や地殻変動の影響によって生まれます。サバラーン地区にある温泉の多くも、その例外ではありません。サバラーン山は、数回の噴火を経験した後、現在は休火山となり、地下に残ったマグマが冷却されて、火成岩となっています。また温泉は、火山活動の最終段階で生まれるとも言われています。この場合、上昇したマグマが冷却されてガスや蒸気が放出され、地層に浸透します。これらがその熱を地殻に伝え、その結果温められた水が、ガスや温泉の形で、地表に噴き出すのです。

 

サバラーンにはもうひとつ、地殻変動の影響によって生まれた温泉もあります。これらの温泉は、地下水が岩盤の割れ目や断層に染み出してできたもので、その多くが、炭酸塩鉱物や硫化鉱物、炭酸ガスなどを含んでいます。これらの物質は火山物質の残りで、様々な場所を通り、地下に浸透していたものが、地表に現れたものです。

 

前にもお話しましたが、イランの北西部、アルデビール州にある温泉のうち、代表的なものは、サルエイン、ヴィーラーダッレ、そしてヴァキールアーバードの3つです。前回の番組では、サルエインについてお話致しました。今夜は、残りの二つ、ヴィーラーダッレとヴァキールアーバードの温泉をご紹介いたしましょう。

 

●ヴィーラーダッレ村

 

ヴィーラーダッレは、サルエインの北西4キロのところにある村です。この村の温泉の多くは、ガスが含まれ、水温もそれほど高くありません。この地域は、サルエインに近く、澄んだ水の温泉と美しい景色を有することで知られています。この村にある温泉は、全部で5つあり、化学的構成は、どれもよく似ています。また、この温泉の物質の構成は、フランスのロワール州にある温泉のものにも、よく似ています。ヴィーラーダッレの温泉は、炭酸水素塩、炭酸ガスを含んでおり、冷泉となっています。

 

それではここで、これらの温泉の効能についてお話いたしましょう。これらの温泉の特徴のひとつは、体の細胞組織に影響を及ぼすことです。ヴィーラーダッレの温泉には、細胞を膨張させ、細胞内の新陳代謝を活発にし、有害物質を取り除く効果があります。また、腎臓にもよく、温泉に含まれる物質や炭酸ガスが、腎臓にすばやく作用し、その働きを促します。この他、温泉に含まれる成分や炭酸ガスの働きにより、消化器官や肝臓に関しても、様々な効能があります。さらに、胆のうにも効果があり、血中の胆汁を減少させることができます。この他、痛風、関節痛、痙攣、肥満、肝炎などにもよいと言われています。

 

●ヴァキールアーバード村

 

ヴァキールアーバードという村は、アルデビール市の北西28キロのところにあります。この地域の代表的な温泉は、「サルダーベ」です。サルダーベ温泉は、水量が豊かで、水温は35度、黄疸や皮膚病の治療に効果的だといわれています。サルダーベ温泉を少し上にいった山あいには、6つの温泉があり、皮膚病の治療に効くとされています。

 

サルダーベの気候は爽やかで過ごしやすく、夏は暑く、乾燥しており、おいしい乳製品、肉類、はちみつの産地として知られています。サルダーベの自然は、旅行者たちの心に安らぎを与えてくれるものです。サルダーベ温泉の近くにはまた、「イェルスーイー」という名の温泉があります。この温泉の水温は30℃、酸性、無色透明で、周辺には強い硫黄の香りが漂っています。また、カルシウム、硫酸、二酸化炭素などが含まれており、皮膚病や痔、神経痛、慢性関節リュウマチの治療に効果があるとされています。

 

アルデビールの西45キロのところには、ニールという名前の行政区があります。ニール行政区には、3キロから7キロごとに温泉が存在し、行政区内にある温泉の数は、全部で7つです。これらの温泉はどれも、地中から湧き出る量が比較的多くなっています。イラン原子力庁・研究センターの調査によれば、この地域は、地質の構造の点から、地熱エネルギーの利用に適した土地だとされ、出力20メガワットの発電所を建設することができると言われています。

 

この行政区にある温泉のひとつが、ブシュリー温泉です。この温泉は、標高1500メートルの石灰岩の丘にあります。温泉の周囲のあちこちから、お湯やガスが湧き出て、沼地のようになっています。この温泉のお湯はおよそ49度と高温で、無色透明、匂いもありませんが、炭酸水素ナトリウムなどが含まれているため、口に入れるとしょっぱい味がします。ブシュリー温泉は、炭酸ガスやお湯に含まれる成分と高温のお湯が作用し、皮膚病、リュウマチ、神経痛によいとされています。さらに、この水を飲むことで、消化器官の病気や肥満にも効果があると言われています。また、この行政区にあるその他の温泉も、リュウマチや神経痛、皮膚病によいとされています。

 

●メシュキーンシャフル行政区

 

アルデビール州にある行政区の中でも、空気がよく美しいとされているのが、メシュキーンシャフルです。メシュキーンシャフル行政区は、アルデビール行政区の西90キロの所にあり、サバラーンの山麓に位置することから、爽やかな気候を有し、イランでも美しい自然を有する場所のひとつとされています。メシュキーンシャフル行政区には、全部で9つの温泉がありますが、これらは、メシュキーンシャフルの市街地からおよそ19キロ離れた所に存在します。

 

メシュキーンシャフルの南東30キロのところには、非常に美しい自然が広がっています。ここは、標高2200メートル、総面積は75平方キロメートルで、「シールヴァーン・ダッレ・スィー」と呼ばれ、野生動物や野鳥が生息しています。代表的なものとしては、ヤギ、イノシシ、キツネ、オオカミ、羊、ウサギ、シャコ、じゅずかけばとが挙げられますが、この他、渡り鳥も度々やって来ます。またこの地域には、数多くの神秘的な洞窟や岩があります。この地域の渓谷に入るためには、40メートルの高さから流れる滝の横の岩を下りていかなければなりません。シールヴァーン・ダッレ・スィーの2本の滝は、他の場所では見られないもので、この地域の自然の神秘のひとつに数えられています。

 

メシュキーンシャフルの周辺には、タンバグ、モヴィール、ハージールー、フーシャング・メイダーニーなど、多くの野生動物保護区が存在し、それぞれの野生動物が、適した保護区の中で生息しています。また、アルデビール周辺には、ギャンジガー、ノウシャール、シュールゴル、モッラーアフマドなど、多くの池も存在します。これらの池は、美しい光景を作り出すと共に、様々な渡り鳥が羽を休めたり、野鳥が生息したりするための場所となっています。アルデビール周辺の池に生息する野鳥は、くいな、カモ、ガン、むくどりなどです。

 

●ヘイラーン山峡

 

最後にご紹介するのは、アルデビール州の美しい自然、「ヘイラーン」という名の山峡です。この山峡は、アルデビールとアスタラーという地の間に位置し、イランでも有数の美しい景観を持つとされています。その美しさは、この景色を見た者は誰も、驚嘆せずにはいられないと言われているほどです。この山峡の幻想的なルートには、緑の生い茂った山に続くものと、比較的緩やかな渓谷につづくものとがあります。この渓谷の間を流れているのは、アルデビール州最大の河川、アラス川です。

 

ヘイラーン山峡は、ほとんどの場合、霧に覆われ、霞がかっています。この地域を訪れた際に、目に飛び込んでくる光景は、山麓や谷間に広がる草花、放牧された牛がのんびりと歩く光景、そして蜂の養蜂場です。これらは、見る者をひきつけずにはいられません。またこの渓谷は、夏でも非常に爽やかな気候を有し、美しい自然の光景と、野生の馬の群れが歩く姿は、人々の心を穏やかにし、忘れることのできない思い出として刻まれていくことでしょう。自然を愛する人々の間では、ヘイラーン山峡は、イランのアルプスとも呼ばれています。

 

この他、アルデビールと、イラン北部のギーラーンを結ぶルートは、ハルハールから、アサレムという場所に至るルート上にありますが、この一帯は、夏でも涼しい放牧地とされ、美しい木々に覆われています。その美しさは、ヘイラーン山峡に決して劣るものではありません。

 


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