先進技術の特徴
今回は、先進技術の特徴、そしてそのプラスとマイナスの効果について考えていくことにいたしましょう。
前回は、サイバー空間が思想や思考を生み出す最も重要な場の1つとなっていることについてお話しました。これらの新しいコミュニケーション技術の特徴や魅力により、政治、経済、文化的な政策の担当者は、自らの目的を果たすためにサイバー空間の可能性に訴えています。
21世紀の技術的な現象としてのインターネットは、全ての人々が幅広く使用できることから、人々の信仰や思想に影響を及ぼす上で驚くべき特徴を有しています。一度でもインターネットを使用した人が、これをやめることはまずありません。この先進技術は常に変化し、拡大していることから、人間に自分自身について考える猶予を与えないのです。現在、インターネットや携帯電話をベースとしたソーシャルネットワークの使用者の多くは、若者が占めていますが、これらの技術を中高年層が利用する傾向は、こうした技術の影響力を物語っています。多くの人々は、新たな千年紀において生活していくために、コンピュータに親しみ、その可能性を活用しなければならなくなっています。
一方で、インターネットは潜在的に脅威にも、さらにはまたとないチャンスにもなりえます。学生や大学教授、研究者が電子文献を利用する可能性が高まり、他の学者や研究者との学術的なやり取りが拡大し、迅速化したことは、インターネットに負うところが大きくなっています。政治、社会的な知識の獲得の拡大や、様々な意見の募集、対話や見解の表明の場の点でも、インターネットの役割を否定することはできません。しかし、多くの社会学者やコミュニケーション学の専門家は、メディアにおける内容の収集や選択、発表のプロセスは客観的、中立的なものではなく、政治、社会、文化的な習慣や価値観、さらには偏見が混ざっていると考えています。
先進技術の拡大の一方で、社会の指導者や関係者がその正しい使用法の教育を怠っていることから、それぞれの社会の本来の価値観が弱くなっています。女性の貞節さや精神性、家族の大切さ、性別の違いによらず人格を重視するといった、各国の本来の価値観の多くが衰退しているのです。こうした傾向は、人々の間でのEメールやブルートゥースの使用による、倫理的に好ましくないコンテンツや画像のやり取りが増えていることからも見て取れます。
一方で、インターネットの過剰な使用により、使用者の間にはこの技術に対する強い精神的な依存が見られます。インターネットの使用者の一部は、非現実的な世界に助けを求め、そこに住み込んでいます。このため、こうした人々についてはアイデンティティの問題や精神失調といった各種の弊害が生じる可能性があります。
特にインターネットによる情報通信メディアは、使用者にとってある種の国際的な空間をもたらします。文化や科学技術面での力が弱い社会において、インターネットは人々の意識や社会関係を根底から支配しています。こうした条件下では、この技術の最初の発明者の価値観が、新たな利用者に強要されることになります。今や、社会の人々の間には個人主義や消費志向、快楽主義といった西洋諸国のリベラルな価値観が見られます。ここでもし、人々が持つ国民的なアイデンティティや自信が強化されれば、通信技術により発信される外国の価値観への抵抗が強まると考えられます。
現在、インターネットによる検索の30%は、宗教を調べるためのものです。インターネットは、世界で精神性や宗教を広めるための重要な手段と化しています。一般的な情報技術、特にインターネットの発展により、過去よりも宗教の研究と精神性の探求は容易且つ、便利になっています。複数の統計によりますと、世界のインターネットの使用者の6人のうち少なくとも1人は、宗教的、精神的な情報を求めているということです。しかし、研究調査によれば、各宗教の宣伝機関は、まだ宗教を一般的に広める上でこの先進技術の可能性を正しく把握できておらず、若者を宗教や精神性に惹きつけるために、この技術をよりよい形で大いに活用できていないということです。
残念ながら、神の宗教を信仰することや、宗教法を守ることではなく、ウェブサイトで自由に発言できることから、インターネット上で各種の偽りの宗教や神秘主義、宗教信仰の好ましくない方法が広まっており、その支持者も出てきています。これらの作られた偽りの宗教は、奇妙な魅力や無意味な精神性、偽りの慣習により、精神性を求める人々に対して幻を作りだし、十分な知識のない人々をわなに陥れることに成功しています。主にウェブサイト上で新たに発生する数多くの新しい原理や信条は、これらのことを証明しています。
インターネットの特徴は、簡単につながり、簡単に情報が得られることです。このため、この新技術は一般に普及しています。さらに、利用範囲が広い上に使用法が簡単であることから、以前では現実の世界でしか見られなかった犯罪が、インターネット空間にも広がり、ネット犯罪が急増しています。こうした犯罪は、ウェブサイトが持つ可能性の拡大と共に、当然ながらさらに増えており、増加する傾向を示しています。
一方で、世界ではインターネット空間の管理が分散していることから、ネット空間は管理されずに放置され、これに関してアップデートされた規範がないために、一部の利用者はその後の社会的な悪影響を考えずに自分の思うままにネットを乱用しています。そうした例として、下品な画像を掲載するサイトが挙げられます。
現代の生活形態は、人々に先進技術の使用を余儀なくさせています。このため、社会における文化面での責任者は、通信やその独自性に関する政策を新たに捉えなおす必要があります。こうした政策は、文化的な統一や民族的な団結により行なわれるべきものです。先進技術の活用のプラスの側面を強化できれば、旧来の段階から現代に至る中で、明るい未来が期待できます。なぜなら、現在の生活条件の中で成長した今日の世代は、先進的な技術手段の中ではぐくまれたインターネット上の関係や交流において定義づけられるからなのです。