イランの芸術
張子細工
張子細工は、紙片や紙パルプを木工用接着剤や時に布切れを使いながら立体に整形する技術です。ヨーロッパでパピエ・マシェとも呼ばれるこの技術で作られる工芸品は、完成後は洗浄にも耐えられるほどの強度を持つようになります。
張子細工の起源は、紙が発明された中国にあり、その後、日本やイランにも伝わったと考えられています。
イランで張子の工芸品が広まったのはサファヴィー朝時代で、現在のイラン中部イスファハーンおよび首都テヘラン西方のガズヴィーンで主に生産されていました。
今日は、イスファハーンにあるアッバースィーさんの工房にお邪魔して、この技術を見てまいりましょう。
アッバースィーさんは現在73歳で、これまで60年間に渡り張子製作に携わってきました。
― まず、張子細工に使われる材料について教えて下さい。
アッバースィー氏:原材料となるのは、紙や古新聞です。
― 紙や古新聞でどのように形を作るのですか?
この筆入れ用の木型の上に、紙を貼り付けていきます。
古新聞を何層にも重ねていくと、厚い板状になります。
乾いたら木型からはずして、つなぎ目になる部分を部分を成形します。
紙を張り付ける際は、丁寧にこつこつと作業する必要があります。
紙が乾いたら、色塗りの作業に入ります。
― 先ほど外で見た古新聞と木枠が、一体どうやってこんなに美しい作品になるのでしょうか?
アッバースィー氏:先ほど筆入れの形につくったものに色を塗っていきますので、ご覧ください。
まずは下地を塗ります。
それから、模様を入れていきます。
今回は、ポロ競技の図柄を描きます。
イランのイスファハーンは、昔からポロが盛んでした。
ポロはイラン発祥とされる伝統的スポーツで、馬に乗った選手がスティックで球を打ち相手方のゴールに入れていく競技です。
ここにある張子細工は全て、外国ではなくイラン独自の図柄をあしらったものです。