森林破壊
今回は、森林破壊という憂うべき現象が、ある種の生き物の消滅を引き起こしている問題について深く掘り下げて考えていくことにいたしましょう。
森林は、生物にとって重要な生活場所であり、地球の陸地の総面積のおよそ6%は、樹木や低木、各種の植物で覆われています。森林は、動植物全体のおよそ半分の生息地であることから、特に重要な存在とされています。
専門家の見解では、学問的な視点から見て森林の形成に必要最小限の面積は、樹木の種類や環境などの条件によるものの、3000平方メートルとされています。森林においては、植物と野生動物のある種の共存状態が生み出されています。
森林では、生産者である植物と消費者である動物、そして分解者としての微生物の間に、恒常的な相互共存の関係が成立しています。特に、人間の手が加えられていない原生林は、生物の多様性に富んでおり、それらの多くは今なお発見されていません。例えば、南米のアマゾン熱帯雨林は世界の全種類の動植物のおよそ10%が生息しています。科学者の間では、アマゾンの熱帯雨林には現在427種類の哺乳類、1294種類の鳥類、378種類の爬虫類、427種類の両生類、そして3000種類の魚類が生息していると推測されています。
残念ながら、森林破壊は地球上の域や大気圏に取り返しのつかない悪影響をもたらしているのみならず、森林に生息する動植物の生存や生物の多様性をも計り知れない危険にさらしています。科学者らは、農業や牧畜、そのほかの活動への使用を目的とした樹木の伐採により、森林に生息する樹木の半分以上が絶滅の危機に瀕していると述べています。
IUCN・国際自然保護連合は、アマゾン熱帯雨林に関するこうした危機の事実を公然と承認し、この状態が続いた場合、この熱帯雨林に生育する植物の36%から57%が絶滅の危機に瀕すると表明しています。なお、この組織の学者たちによる調査は、ブラジル、ペルー、コロンビア、ベネズエラ、エクアドル、ボリビア、スリナム、フランス領ギアナにまたがる550万平方キロメートルの広大な熱帯雨林に関して行われました。
この調査は、アマゾン熱帯雨林に対するおよそ1500のサンプルを検討した結果、今世紀の半ばまでに絶滅する可能性のある樹木の種類と数を予測しています。アメリカ・シカゴにあるフィールド自然史博物館のナイジェル・ピットマン客員研究員は、これについて次のように述べています。「絶滅の危機に瀕している樹木は、クルミやナツメヤシなどであり、これらはいずれもアマゾン熱帯雨林に生息する生物が、その果実や薬用効果に強く依存している種類である、これらの樹木は、水や空気の循環再生や土壌の維持に重要な役割を果たしている」 以前の研究調査の結果、アマゾンの熱帯雨林の総面積はおよそ12%減少しており、2050年までにさらに28%減少することが分かっています。
自然科学・医学の分野で世界をリードするイギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者らによる調査でも、このことが認められるとともに、ブラジルでの森林破壊がアマゾン熱帯雨林にとって極めてマイナスの影響をもたらしたことが分かっています。彼らは、絶滅しかかっている種類の植物の統計サンプルを作成した結果、過去30年間に森林破壊の影響で生息地が激減した、アマゾン雨林の東部と南部に生息する38種類の生物が、絶滅する可能性があることを突き止めています。
これらの38種類の生物の内訳は、10種類の哺乳類、20種類の鳥類、そして8種類の両生類です。これらの生物の一部は樹木の絶滅が直接的な原因となって絶滅していますが、多くは新たに増殖する個体数の減少や、エサの獲得をめぐる競争の激化により段階的に死滅しています。専門家の間では、長期的な森林破壊が原因で、アマゾン雨林でも特に東部と南部がそのほかの地域に比べてより危険に瀕していると考えられています。さらに、アマゾン熱帯雨林の中心部を幹線道路が貫通していることも、生物の絶滅を早める可能性があるとみられています。また、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者による調査の結果、アマゾンに生息する生物を救うには、2020年までに森林破壊を80%抑える必要があるとされています。
アマゾン熱帯雨林のみならず、世界各地の森林にも、破壊や縮小の危険が忍び寄っています。オーストラリア・ジェームズクック大学の熱帯環境および持続可能科学センターの生物学者ウィリアム・ローレンス氏は、アマゾン雨林やアフリカの赤道地帯、そしてオーストラリアにまで至る世界の全ての熱帯地域に関する研究を行いました。その結果、地球が温暖化すればするほど、森林に生息する生物の絶滅数が増加することが明らかになっています。
地球の温暖化により、多くの生物の間に病気が蔓延するとともに、一部の植物が枯れてしまったことから、森林火災を引き起こし、数百万本もの樹木が失われました。その結果、数十億トンもの二酸化炭素が空気中に放出されています。ジェームズクック大学の見解では、森林の面積の減少は、植物の絶滅を引き起こすのみならず、動物の絶滅にもつながり、動物の個体数全体が30%減少したとされています。このように、動植物は今や更なる絶滅の危険にさらされています。その例として、生息場所の変化により、アフリカの準砂漠地帯では65%、アジアの一部では67%という高い割合で、動物が絶滅しています。
地球の温暖化に加えて、森林に生息する動物の絶滅のもう1つの原因とされるのは、それらの生物の生息場所が突然、或いは段階的に破壊されるとです。これは、生物の生活環境の汚染、或いはエサが取れる場所が縮小していることなどが考えられます。また、場合によっては生息場所にもっと強い種類の生物が侵入してきたことにより、在来種の動物が生存できなくなり、絶滅するケースもあります。さらに、生息場所の汚染も、ある地域に生息するある種類の生物の絶滅につながる可能性がありますが、このプロセスは急速に進む場合もあれば、時間の経過とともに進行することもあります。人類は、森林を開墾し、森林の面積を減らすことにより、生物の絶滅する速度を通常の1000倍から1万倍も高めてしまいました。それは、森林に依存している全てのエコシステムが、破壊の危険に瀕しているからです。数多くの証拠が示しているように、森林が破壊された地域ではいずれも、河川が枯渇し、自然環境の機能そのものが失われてしまっています。
科学者らの見解では、生物の絶滅を引き起こす重要な危険因子の1つは、病気の蔓延とされています。研究者らは、捕食者と被食者の間に位置づけられる生物が絶滅すると、捕食者と被食者が交互に増減すると考えています。
3つの研究結果から、ある地区において小型の小動物蛾の数が減少することにより、高次哺乳動物の間にある種のウイルスが見られるようになります。この種のウイルスは、人間の間にも致命的な各種の感染症を引き起こします。例えば、アメリカ・オレゴン州では、複数の種類の哺乳動物の減少によりネズミの間に見られるこの種のウイルスが2%から14%に上昇しています。もっとも、研究者らは自らの調査結果から、違法な取引といった形での野生動物との接触によっても、動物から人間に病原菌が移る可能性があると考えています。
これまでお話してきたことから、生物の個体数の保護という点における森林の重要性がお分かりいただけるのっではないかと思います。国連の情報サイトも、森林の最も重要な機能の1つとして、生物の保護を挙げています。一方、多くの発展途上国では、森林が開発プロジェクトの実施の犠牲となっています。これは、それらの国の責任者の多くが、森林を単に樹木が生息している場所とみなし、樹木を伐採しても新たに植林すればよいと単純に考えていることによるものです。しかし、樹木の伐採は生態系のサイクルにおいて独自の役割を果たし、影響力を持つ動植物の生息場所の破壊、ひいてはそれらの動植物の絶滅を引き起こします。
このことから、多様な生物の絶滅や地球の温暖化の流れに歯止めをかけたいならば、まず森林破壊を食い止める必要があります。これなくしては、この問題は私たち人類の生活の質に悪影響が及ぶことは確実です。森林の恒常的な管理は、全世界における持続可能な発展や貧困の緩和、クリーンな水と空気を維持する定石といえます。
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