May 07, 2017 14:56 Asia/Tokyo
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今回は、インターネットによる宣伝が悪用されている一部の例について考えていくことにいたしましょう。

前回は、先進国の資本家たちがインターネット空間に見た目のよい魅力的な広告を掲載し、ぜいたく品を販売するために顧客を集めようとしていることについてお話しました。このため、コマーシャルや宣伝はネット上のサイトやブログのかなりの部分を占めています。世界では1日当たり、かなりの割合の人々が様々な製品の大量の宣伝に触れています。この宣伝は次第にインターネットのユーザーに破壊的な影響を及ぼしていきます。

当然のことながら、商業宣伝やコマーシャルは商品やサービスについての情報を伝達し、理解を促すものでなければなりません。しかし、こうした宣伝は次第に、人々の趣向を変化させ、最終的には彼らの物事の捉え方や信条、価値観や趣向にまで影響を及ぼします。そして、宣伝やコマーシャルの最終的な目的が、人々の生活様式を変化させることにあるのは言うまでもありません。

 

生活様式とは、ある社会の様々な階層の人々や集団のライフスタイルを意味します。いずれの社会の人々も、行動や信条、社会的な価値観に基づく習慣の面でのあるモデルに従うことで、生活のための特定の方法を選びます。インターネット、テレビ、新聞などのいずれの宣伝によっても、人々には消費志向が強まり、これが最終的にある価値観となり、彼らの生活様式に影響を与えます。コマーシャルが日々拡大してきた結果、消費という概念はもはや1つの価値観となります。

インターネットの宣伝により、表面上華やかで贅沢な生活を人々の目の前に提示し、ある種の理想を作り出すことで、視聴者は宣伝されている商品を手に入れたり、或いは特定のサービスを利用することにより、平穏で恵まれた生活ができると思い込みます。バーチャル空間でのこうした宣伝により華やかな空間を提示することで、こうした商品の消費者は富裕な階級の人々であり、その商品を購入することで表面的に自分の地位を上げられるという考えを吹き込みます。こうした宣伝で提示される主要な価値観は、物質主義、商品至上主義なのです。

 

消費主義に基づく生活様式では、高額な商品の紹介と消費が社会的なステータスのシンボルとして提示されます。このため、一般的な通念は、人間としての価値が高価なぜいたく品により査定されるという方向に傾きます。即ち、誰でも、そのような商品を持っている人は高い地位を有していると人々の目に映るのです。このことはまさに、性格のよさや人間性、敬虔さを人間の価値とみなす教えとは正反対のものです。

消費の文化の支配により、資本主義体制は日々、より新しい商品やサービスの供給により、さらに多くの利益を得ますが、逆にその社会が持つ本来の価値観や文化は日ごとに失われていきます。それは、こうした宣伝においてはインターネットのユーザーに対して間接的に、ある種の西洋の文化や価値観が刷り込まれるからです。

 

インターネットによる宣伝は、確かにオンラインショッピングで人々の生活が能率化され、時間の節約につながっていますが、それによる弊害も生じています。例えば、一部のハッカーがオンライン上の支払いシステムに侵入し、顧客の口座番号や暗証番号などを盗み出し、彼らの口座からすべての預金を抜き取るといった例が挙げられます。

インターネットによる宣伝は、誰にでも可能であり、これについては一切コントロールされません。このため、一部の犯罪者は軍事組織や研究機関などに、オンラインである目的を持った宣伝を送信し、機密情報を盗み出します。この場合、その組織や機関の職員がオンライン広告をクリックすると、ウイルスやマルウェアが入り込み、ハッカーがそうした機関の情報に手を出す隙ができてしまいます。サイバーセキュリティー企業インビンシアの調査によりますと、軍事・航空宇宙機関と関係のある企業の一部のユーザーがこうした悪質な宣伝の標的にされており、しかもこうした宣伝はほかのユーザーには一切提示されないのです。

ネット犯罪の実行犯は、広告会社を通して、特定の人々に対する適切な宣伝空間を買収します。多くの場合、オンライン上に瞬間的な広告を掲載する値段はそれほど高いものではなく、1ドルに満たないこともあります。こうした危険な広告が正式なウェブサイト上に現れ、そのために一般のユーザーがハッカーの罠に陥る可能性もあります。この場合、ユーザーは広告の部分を1回クリックするだけで、安全で正式なサイト上の入り口から危険なサイトへ引き込まれてしまいます。こうした悪質なサイトを通じて、ユーザーがシステム上の様々な弱点につけこまれ、そのユーザーのパソコンに許されざる手が忍び寄り、各種のマルウェアが入り込む隙間ができてしまうのです。

こうした悪質なサイトが、被害者のパソコンに手を伸ばすにはほんの数分、多くても数時間立ち上げられていれば十分です。その後、そのようなサイトは永久的に閉鎖されてしまいます。このため、こうしたネット犯罪の実行犯を割り出すことはほぼ不可能です。それは、セキュリティー手段によるこうしたサイトのアドレスを突き止める捜査の時間が十分になく、またマルウェアの構造が常に変化していることから、こうして拡散するマルウェアを特定できる可能性は非常に低くなるからです。

 

ネットによる宣伝に最も多く触れているのは、子供たちです。ネット広告によるマイナスの効果の1つは、それらが子供の趣向や物事の捉え方に影響することです。子供は、そうした宣伝からは企業の目的を正しく理解できないため、宣伝の発信者のメッセージをそのまま額面どおりに受け取ってしまいます。そのため、ネット上のコマーシャルで見た商品を買うために、自分の親といさかいを起こす可能性があり、時に親は子供の年齢にふさわしくないそうした商品を買わざるを得なくなることもあります。

一方で、消費志向や贅沢趣味は、子供や青少年の意識に好ましくない影響を及ぼす可能性があります。それほど収入の多くない家庭の子供が、必要以上におもちゃや高額な技術を求めることは、頭痛の種になりかねません。さらに、こうした宣伝の内容は、家庭的な価値観や文化にはそぐわないこともあります。こうした宣伝には普通、家庭的な価値観やモラルに反する画像が見られることが多く、その悪影響は過去にお話したとおり非常に甚大なものです。

 

インターネットは、自由な空間を生み出し、あらゆる情報が制限されることなくこの空間に入り込むことができ、その内容を規制することはできません。一部の国は、そうした弊害を食い止めるためにフィルターを設け、好ましくないコンテンツが一般のユーザーの目に触れないようにしています。しかし、様々なフィルター解除ソフトにより、そうしたフィルターは容易にかいくぐられてしまいます。このため、あらゆる逸脱した集団や信条が宣伝活動を行い、人々を好ましくない生活様式や行動へそそのかすことが可能になっているのです。時には、そうした宣伝は人間の本質や宗教の基本的な教えにそぐわず、一般的に歓迎されないがゆえに、表立って社会に出てくることもありません。しかし、こうした信条はインターネットでは容易に宣伝され、人々の信条や価値観に影響を及ぼしています。

子供の安全も、ネット広告による危険にさらされています。アメリカの新聞ニューヨーク・タイムズに掲載された報告によりますと、アメリカの政府関係者はインターネットによる宣伝がアメリカでの子供の誘拐や、子供のモラル面での悪用の件数を増やしていると発表しています。子供がインターネットの使用を始めるようになってから、子供の安全上の問題は常に情報コミュニケーション学や社会学の専門家の議論の的になってきました。

インターネットは、子供にとって安全ではない、混雑した知られざる町のようなものです。子供や青少年は、このバーチャル空間上の街中の道端で、遊びや楽しみごとを求めていますが、その危険や知られざる側面には気づかず、子供らしい純粋な感情にそって、自分の身の回りのものをプラスに捉えています。彼らは、利益を追求する人々にとっては最大のカモであり、餌食なのです。様々な年齢の子供たちとの交流や、彼らによる特定のサイトへのアクセスやリンクの閲覧を求めるインターネット上の宣伝は、枚挙に暇がありません。

現在、児童青少年が瀕している深刻な危険の1つは、インターネットによる性的な悪用です。特に、学校や家庭でインターネットが使用できる先進的な社会の児童青少年は、ネット広告により最終的に略奪や悪用の憂き目に会います。この現象は、西側諸国の深刻な問題の1つとなっています。実際に、インターネットが現在のペースで広まった場合、子供はますますその危険なコンテンツにさらされることになるのです。