人間の心と体の健康
イスラムは、神の最後の啓示宗教として、人間の個人的、社会的な生活における完全な保健衛生について、豊かで詳細な教えを有しています。これらの教えを実施することで、人間の個人的、社会的、精神的な健康が保障されます。
この番組では、人間の心と体の健康の維持についてイスラムが教示している事柄についてお話することにいたしましょう。
イスラムでは、健康が1つの価値観として提起されています。イスラム関係の資料においては、健康は、「最高の恩恵」、「人間が感謝を忘れている恩恵」、「隠れた財産」、「人生の資本」など、数十の表現によって表現されています。さらに、イスラム教徒の祈祷の多くでは、重要な願望として健康でいられるようにということが神に求められています。
イスラムから見た理想的な健康とは、完全な健康であり、何よりも現世と来世の健康を含むものです。このため、イスラムでいう健康とは、包括的で幅広い概念を含み、体の健康のみにとどまらず、現世と来世の健康にも注目しています。ですから、イスラム教徒は心と体両方の健康を手に入れるために努力する必要があります。現世の健康においては、心と体の健康や安らぎを追求し、来世の健康においては神の赦しと哀れみを求めると共に、適切な報酬の獲得を追求する必要があります。
イスラムの視点から見て、神からの貴重な恩恵である健康を維持することは、全ての人の義務とされています。これについて、イスラムの預言者ムハンマドは次のように述べています。
“人類がその真価を知らない恩恵は2つある。それは、健康と若さである”
イスラムの伝承においては、目に見えない恩恵として健康が指摘されており、人間は病気になったりして健康を失うまで、その恩恵に気づかないとされています。
人間の健康には、身体面と精神面の2つの側面が含まれます。とはいえ、体の健康は人間の幸福の第1の条件とされています。人間は現世において、健康に恵まれてこそ人生の満足を得ることができるのあり、コーランの解釈で言えば、人間は健康であってこそ、現世における生を享受することができるのです。
健康は、神からの最も大きな恩恵の1つです。このため、私たちはこの恩恵の維持に努め、病気になる前に保健衛生の原則に注目し、社会的、個人的にも、また衛生面でも、できる限り病気を防がなければなりません。
心と体の健康を維持する最大の要素は、道徳的、医学的な教えの活用法を学び、これを利用することです。私たちは誰もが、自らの健康を維持する責任があり、この責務は清潔さを保ち、汚れを回避し、食生活において節度を守り、有害物質や、健康と存続を脅かす全てのものを回避することを通して実施される必要があります。
健康維持に向けた努力は、イスラムにおいても完全に承認され、注目されています。イスラムは、健康の維持と増進に向けて、宗教上の戒律、勧告や指導、イスラム思想や社会体制の基盤、原則によって形でその方法を提示しています。
しかし、イスラムほど、発展や才能の開花の下地としての健康や保健衛生の大切さを強調している宗教や信条、思想体系はないといっても過言ではありません。イスラムは、宗教上の責務の実施や、それがもたらす現世や来世でのご利益と結果といった、他の宗教にはない力による後ろ盾を有しています。
冒頭でもお話したように、イスラムでは健康が幅広く包括的な概念を有しており、それは体の健康だけに限られません。精神面での健康は、人間の信仰心や神の無限の力への信仰、そして死後の永遠の命を信じることから得られるものです。心の健康は、喜びや希望、満足、確信、安らぎ、健全な考え方、現世と来世での救済といった成果をもたらし、自分や他人、周りの世界に対する優しさや情愛、倫理を生み出します。この番組では毎回、精神的な健康を取り上げ、心の健康を得るためのイスラムの教えについてお話してまいります。
心と体の健康と精神性の関係は、近年大きな注目を浴びてきています。複数の研究調査によれば、宗教的な要素や信条が、心の健康、ひいては体の健康にも大きな役割を果たすことが分かっています。
20世紀末に、WHO世界保健機関は、健康の社会的な要素、身体的、心理的な側面と共に、精神的な健康を追加し、身体、精神、社会的な側面が相互に関連して影響を及ぼしあっているように、人間の精神的な側面と精神的な健康は、健康のその他の側面とつながりを持ち、影響を及ぼすと共に、この重要な点が健康増進に向けて注目されるべきだと発表しました。その後、一部の有識者は、20世紀の科学の注目は外の環境に向けられていたが、21世紀、それは人間の内面へと移り変わっていくだろうとしています。言い換えれば、世界は新たな時代に入り、私たちを取り囲む外の世界においてでなく、人間自身の内面の世界において重要な発見があるかもしれません。
実際に、人間は肉体と精神という二つの側面を有しており、様々な才能や可能性、ニーズを持っています。このため、人間の健康のためには心と体を含めた健康の全ての側面が互いに関連するものとして考慮される必要があります。体の健康は病気の正反対に位置し、その人自身が気をつけ、しかるべき薬を服用し、栄養価の高い食べ物を食べ、適切な運動をすることで得られます。
しかし、心の健康については、この分野の研究者や医学界も、宗教信仰や精神性に溢れた行動が人間にプラスの効果を及ぼす可能性があるとしています。
もっとも、精神的な健康は、単に祈祷の効果や病気の治癒における精神性の位置づけ、それらが従来の医学的な治療に取って代わること、或いは従来の治療法を補うことのみに限定されません。精神的な側面は、認識や信条、価値観、物事の捉えかた、行動、さらには人間の生理学的なシステムにも奥深い影響を及ぼします。このように、心と体の双方に対する影響こそが、精神的な健康と呼ばれているのです。
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