電力産業
今回は、イランの電力産業について見ていくことにいたしましょう。
エネルギーの確保は、世界の国々にとって、発展と開発のための根本的な問題です。その中では、エネルギーの安全、クリーンエネルギーの利用、それが温室効果ガスの排出削減に果たす役割、それを利用する可能性、再生エネルギーの利用といった問題が提起されています。
電力は、効率の高さにより、工場のニーズを満たすことができます。世界では毎年、毎時21兆キロワットの電力が生産されており、そのうちおよそ92%が消費されています。
電力の生産方法は多岐に渡っています。現在、世界の電力のおよそ40%が石炭から、23%が天然ガス、21%が再生可能エネルギー、12%が原子力、4%が石油によって生産されています。
世界では今もなお、10億人が電力を使用することができていないと言われています。しかし、世界の多くの地域で、電力は人々の生活になくてはならない存在です。農業の灌漑においても、実験室での研究においても、電力の需要性が感じられます。また、日常生活ではコンピュータの役割が拡大しています。
電力の重要性がすべての人にとって明らかになるのは、停電したときです。停電になると、市民の健康や安全が危険にさらされるだけでなく、人々の生活に大きな弊害が及びます。停電は、他の何よりも困難が実感される問題です。
電力網は、世界最大のシステムで、その利用は日々拡大しています。電力は、消費される際の汚染が非常に少なく、その汚染は、生産の際にコントロールすることができます。電力の汚染のコントロールは、まず、都市を離れた場所で行われます。また、移送が容易であるため、それが簡単に行われます。
この他、電力産業の特徴は、多くの場合、代替手段が存在しないことにあります。
電力はさまざまな産業において幅広く使用されており、いかなる国も、この産業を停止することはできません。世界のエネルギー研究機関の調査によれば、21世紀後半、電気エネルギーの生産量の成長は、他の技術の開発につながることになると見られています。そのため、電力産業は、戦略的に重要になっています。
イランに電力施設が建設されてから100年以上が経過します。1905年、モハンマドホセイン・マフダヴィーという名の人物が、石炭で動く装置により、電気エネルギーの助けを借りて、テヘランの一部を明るく照らしました。とはいえ、それは夜の数時間に限られたものでした。
石炭による装置のコストが高かったため、のちにディーゼルエンジンによる発電機に変更されました。イランに大きなダムが建設されると、この電力供給のためのエネルギー生産資源が注目を浴びるようになりました。その後、石油の発見と採掘により、イランの電力産業の需要の大部分が、化石燃料によって確保されるようになり、その流れは現在も続いています。
都市の拡張、人口の増加、イラン経済への新たな産業の参入により、電力の必要性が拡大しました。この時期、イランの電力生産を担う組織を設置する必要性が高まりました。それに応える形で、政府が電力産業に参入しました。
電力の生産、移送、分配、発電所の設備の製造、電気の移送網の管理と開発、これらが政府部門に委ねられました。また、民間部門の活動も政府に支援されています。
民間部門の発電所は、生産や売却のためではなく、主に停電の可能性への懸念から建設されました。言い換えれば、一部の工場や経済機関は、製品を生産したり、サービスを提供したりする流れの中で、停電の悪影響を防ぐために設置されています。時の経過とともに、イランの多くの地域に電線が敷設され、さまざまな地域の電力を確保するために、発電所の建設プロジェクトが開始されました。
イランの多くの発電所は、1979年のイスラム革命後に建設されています。発電所の耐久年数は25年から30年とされており、イランの発電所の75%はまだ新しいものです。現在、電力網が接続されたため、イラン全国のすべての都市と多くの農村で電気が使用されています。
しかし、イランの地理的な状況により、都市の間の距離が遠く、この広大な大地で電力を移送することは、非常に大規模な活動となります。山岳地帯や森林の存在が、電力の移送を困難にしています。こうした中、イランでは、70万キロメートルにわたる電線から電力が移送されています。
イランのエネルギー消費は、世界水準のおよそ3倍です。統計によれば、イランの電力の半分以上が商業用と家庭用に、およそ33%が工業と農業に使用されています。イランは電力生産に関して高い能力を有しています。イランは現在、発電の可能性の点で世界の上位20ヶ国に入っており、中東では1位です。
地域で最大の電力網を有していること、電力網が近隣諸国とつながっていること、原油・天然ガス資源に恵まれていること、発電所の建設や利用に必要な技術を有していること、自国で設備を建設できること、優秀な人材がいること、これらが、地域におけるイランの電力産業の地位の高さを示す利点となっています。
電力産業におけるイランの能力は、イランが陸地を通して近隣諸国と接していることとともに、これらの国にイランの余剰電力を輸出する下地を整えています。イランは現在、イラク、トルコ、パキスタン、アフガニスタン、ナヒチェバン自治共和国、アルメニア、トルクメニスタン、アゼルバイジャンに電力を輸出しています。
発電所の建設はコストがかかり、長い期間が必要であるため、一部の国は、エネルギーの確保と産業プロジェクトの建設のために、電力を輸入しなければなりません。イランは、戦略的な状況により、近隣諸国への電力移送において、地域でハブ的な役割を担うことができます。また、一年を通して、北と南の近隣諸国の余剰電力の取引により、地域の経済関係を改善する役割も果たすことが可能です。
経済成長のために、電力などのエネルギーの生産を拡大することが、イランの第6次開発計画の優先事項となっています。この中で、太陽や風力エネルギーなどによって、10万メガワット以上の電力を生産するための計画が立てられています。これに基づき、イランは今後7年で、電力生産に500億ドルの投資を行うことを決定しています。
現在、イランは、電力産業の部品を生産し、輸出する国のひとつとなっています。イランは変圧器の製造において半世紀以上の歴史を有し、完全に国産の技術を保有しており、変圧器の製造において世界の上位10か国のひとつとなっています。
イランの電力産業の設備の85%が、国内で製造されています。電力産業におけるイランの技術サービスや設備は、地域諸国、アフリカ諸国、イタリアなどのヨーロッパ諸国に輸出されています。