1月 13, 2019 05:30 Asia/Tokyo
  • マウンテンセロリ
    マウンテンセロリ

今回は、薬用植物の1つであるマウンテンセロリをご紹介することにいたしましょう。

イランの国土には、マウンテンセロリという独特の植物が自生しています。この植物は、野生セロリとも呼ばれ、非常に珍しい植物であることからイランの自然遺産に登録されています、しかし、最近では乱獲によりその個体数が激減していることから、絶滅の危機に瀕している植物にも指定されています。

マウンテンセロリは、セリ科の多年草植物で、表面にいくつもの溝(しわ)がある茎が何本にも枝分かれし、枝の長さは20センチから60センチほどとなっています。この植物の根はまっすぐな紡錘形となっており、根の上の部分には大きく肥大した塊茎があります。

マウンテンセロリの葉は、手のひらの形のように切れ込んでおり、傘が逆さまに開いたような配列でいくつもの黄色い花が咲きます。地下茎が肥大した塊茎には、この植物が必要とする栄養分が蓄えられており、地上に出ている部分が枯れて次のシーズンに再び芽吹くための栄養源となります。

マウンテンセロリは、種子ができるころには1.2メートルから2メートルほどの高さに成長します。種子ができるのは7月ごろで、秋の初めに熟した後、地面に落ちで飛散します。

 

マウンテンセロリ

 

 マウンテンセロリは、標高2100メートルから3000メートルの高原地帯で、水持ちがよく塩分を含まない土壌に自生します。この植物の発芽時期は、生息地の気候条件によって異なります。

また、この植物は降水量の多い年には3月の上旬に、また降雪量が多く寒さが厳しい年には、雪解けとともに再び発芽します。この植物の主な自生地は、イラン西部と南西部のチャハールマハール・バフティヤーリー州、コフギルーイェ・ブーイェルアフマド州、フーゼスターン州、ロレスターン州を走るザグロス山脈の山ろくです。

 

マウンテンセロリは、食用として非常によく利用されます。特に、この植物の葉や茎、花はピクルスなどの加工品やスープなどの調理に使用され、またヨーグルトやヨーグルトドリンクに香り付けとして加えられることもあります。

イランの伝統医学でも、マウンテンセロリは幅広く利用されており、主に殺菌作用があるほか、糖尿病にも効果があり、制癌剤としての効能もあり、さらに、胃潰瘍の予防にも利用されています。伝統医学を支持する人々の間では、クローン病や大腸炎をはじめとする消化器官の疾患、そしてリューマチにも効果があると考えられています。

マウンテンセロリの根を煎じたものは、殺菌作用があることから風邪やインフルエンザ、激しい咳や息切れに効果があります。また、この植物のほかの部位も関節炎や血行不良、高コレステロール血症、高血圧、各種の心臓疾患の治療に使用されます。

 

 

 マウンテンセロリに含まれるカリウムは、利尿作用があるほか、硫黄も含まれていることから痛風の患者に最も効果があるとされています。この植物の根や葉は、さらに便秘などの消化器官の問題のある人にもよく効きます。

マウンテンセロリはまた、腹部の張りを抑え、熱を下げる働きがあります。これまでに行われた調査によれば、この植物は体重を減らす効果もある事が証明されています。さらに、伝統医学では、この植物を煎じたものが声のかすれや凍傷の治療にも利用されています。

 

今日では、違法な乱獲により稀少植物であるマウンテンセロリは絶滅の危険に瀕しています。この植物は、非常に特殊でデリケートな植物であるため、つぼみが摘み取られたり、球根にダメージが加わると年毎に弱体化し、最終的には枯れてしまいます。

残念ながら、自然環境や天然資源の専門家の努力に逆行する形で、利潤だけを求める一部の人々はマウンテンセロリを違法に採取しようとしており、この植物が自生している地域の市場や市町村に通じる場所などで、不当に高額な値段で販売しています。

 

マウンテンセロリ

 

この問題に注目し、マウンテンセロリが自生する地域の生物資源管理局は、この稀少植物を保護するため、その種子を買い取り、植物の栽培を専門とする業者や牧草地の所有者などに分配して、この植物の増殖、拡散に努めています。また、民間部門もマウンテンセロリを増やすため、この植物の人工栽培を実施し、非常に好ましい成果を挙げています。

生物資源の管理を担当する関係機関はまた、一般市民に対し、マウンテンセロリの保護と再生、増殖への協力を求めています。それは、この種の植物の保護により、この植物が生き残れるだけでなく、この植物が土中の地下水層への雨水の浸透を促すことから、マウンテンセロリの生息地域では土壌の侵食や洪水の発生を未然に防ぐ事ができることによります。

次回もどうぞ、お楽しみに。

 

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