4月 07, 2018 15:36 Asia/Tokyo
  • チョウザメ
    チョウザメ

前回までは、イランに生息する珍しい鳥類についてご紹介しました。今後からは、イランの水生生物の在来種をご紹介してまいります。今回は、イランを代表する水生生物の1つで、キャビアでもお馴染みのチョウザメをご紹介することにいたしましょう。

現存する資料によれば、世界の脊椎動物のかなりの割合を魚類が占めているとされています。現在、世界の海域には、2万種類以上の魚が生息していることが確認されています。このうち、およそ160種類がイランの海域や河川に生息しており、これらはカスピ海に生息するもの、川魚、そしてペルシャ湾とオマーン海の外海に生息する部類の3つに大きく分類されます。

 

 

残念ながら今日、乱獲と水生生物の生息環境の破壊により、イランでは一部の魚介類の個体数が激減し、絶滅の危機にさらされています。そうした魚介類の代表例が、カスピ海に生息するチョウザメです。

 

カスピ海

 

イラン北部には、世界最大の湖とされるカスピ海が存在します。カスピ海は、南部でイラン、北部でロシア、西部でロシアとアゼルバイジャン、東部でトルクメニスタン及びカザフスタンに面しています。この湖は、世界で最も値段の高い魚介類の生息場所となっています。

 

 

特に、カスピ海南部、及びこの湖に注ぐ河川、即ちカスピ海沿岸部のうちイラン領となっている海域には、世界で最も高品質の魚介類の生息と繁殖に適した場所が存在します。この海域には、78種類に及ぶ魚介類とその亜種が見られ、そのうち最も重要とされるのがチョウザメです。

 

 

チョウザメは、世界で最も価値の高い水生生物とされていますが、乱獲を初めとする数多くの問題により、絶滅しかかっている状態にあります。専門家の見解では、何らかの対策を講じなければ、カズピ海からは近いうちにこうした珍しい魚介類がいなくなってしまうと考えられています。

 

チョウザメはスタージェンとも呼ばれ、チョウザメ科に属する、極めて珍しい水生生物の1つです。この魚は、いわゆる古代魚とされ、その祖先は中生代のジュラ紀にまでさかのぼります。このため、チョウザメは生きた化石とも言われています。また、チョウザメ科の魚は全部で27種類存在し、そのうちの5種類がカスピ海に生息しています。

 

 

チョウザメ

 

チョウザメの値打ちは、その魚肉ではなく、黒い真珠として知られるキャビア、即ちその卵にあります。現在、世界で生産されるキャビア全体の93%は、カスピ海で生産されています。カスピ海には、世界で最も高品質とされる5種類のチョウザメが生息しており、最高級のベルーガを初めとして、ペルシアンスタージェン、ロシアチョウザメ、シップスタージェン、セブルーガといったものが良く知られています。

 

 

 

ベルーガは、カスピ海に生息するチョウザメの中で最も大きく、個体数が激減していることから絶滅危惧種のレッドリストに乗せられています。ベルーガは、最も値段の高いキャビアとされ、これまでに体重がおよそ1.4キロ、推定年齢が100歳を超えるものが捕獲されています。ベルーガは、2年または3年に1回の割合で産卵し、14歳から17歳で成魚となります。体の長さは、1.5メートルから4メートル以上にも及びます。

 

 

カスピ海南部に最も多く見られるチョウザメは、ペルシアンスタージェンです。この種のチョウザメは、春に最も多くの卵を産みます。オスは8歳から11歳で、メスは10歳から16歳で成熟します。このチョウザメの産む卵の平均的な数は、年齢と共に増加しますが、季節によってもまた異なります。

 

 

ペルシアンスタージェンは、そのほかのチョウザメに比べて配色がバラエティーに富んでおり、濃い灰色から明るい灰色、さらにはごく稀に金色に近いものも見られます。この種のチョウザメは、世界でも最も知名度や人気の高いものとされています。

 

 

ロシアチョウザメも、カスピ海に生息するチョウザメの1つです。この種のチョウザメは、カスピ海北部の海域の水深2メートルから5メートルのところに生息しています。しかし、サイズの大きいものはカスピ海の南部海域の水深2メートルから130メートルの場所に好んで生息します。ロシアチョウザメは産卵のため、カスピ海北部に注ぐボルガ川やウラル川、クラ川、そしてカスピ海南部に注ぐセフィードルード川にやってきます。産卵期は、主に春と秋となっています。

 

さらに、カスピ海にはシップスタージェンという名のチョウザメも生息しています。しかし、この種のチョウザメは今や、カスピ海のうちのロシア、アゼルバイジャン、トルクメニスタンの領海での漁獲高が最低レベルに落ち込んでいることから、取引が禁止されています。しかし、イランでこのチョウザメの個体数を維持するため、年間数百万匹のシップスタージェンの稚魚が人工的に放流されています。

 

 

今回ご紹介する最後のチョウザメは、セブルーガと呼ばれる種類のものです。これは、最も小さい種類のチョウザメで、口とその周辺の部分が長く突出していることから独特の外見を有しており、このことからトルコ語で長い鼻を意味するウズンブルンとも呼ばれています。セブルーガは、春になると産卵のために川にやってきます。

 

 

旧ソ連が崩壊した後、カスピ海の魚介類の乱獲が進んだことから、この海域の希少生物が絶滅の危険にさらされています。現在、カスピ海の希少生物の生存が脅かされている理由として、キャビアの密輸、漁業法が守られないこと、チョウザメの個体数が回復しないこと、イランの近隣国から放出される汚水によるカスピ海の汚染などが挙げられます。

 

 

一方、近年における干ばつや河川におけるダムの建設により、自然な形での魚の産卵が正常どおり行われず、稀少な魚介類の個体数の維持が危ぶまれています。こうした中、カスピ海のチョウザメの絶滅を阻止し、この湖の水産資源を守るためには、カスピ海の沿岸諸国が危機感を感じる必要があります。それは、これらの水産資源が神からの恩恵であり、地域の人々の生活の維持や雇用の創出に大きな役割を果たしているからです。このため、カスピ海の水産資源を保護する運営計画は急務であると考えられます。

 

 

 

 

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