4月 08, 2018 17:25 Asia/Tokyo
  • スペインカンゾウ
    スペインカンゾウ

今回は、マメ科の薬草の1種であるスペインカンゾウについてお話することにいたしましょう。

イランには、8000種類以上の植物が生息しています。これらのうち、1800種類は薬草とされ、それらの多くは世界のほかの地域には自生せず、イランのみに生息しています。

 

薬草の商業取引が日々増大し、この種の植物が莫大な利益をもたらすことから、薬草の採取が増加しています。しかし、このことはこうした稀少植物の生息地の破壊につながっています。現時点で、絶滅の危険にさらされているこうした薬草の一種に、スペインカンゾウが挙げられます。

イランの薬草

スペインカンゾウは自生する薬草で、人工的に栽培されることは殆どありません。また、光を好み、自生している間には温かい気候や平均的な湿度を必要とします。このため、この薬草の生育には、海抜高度の低い肥沃な土壌が適していることになります。

 

スペイカンゾウはまた、十分な日光を必要としています。この植物は、小さな葉が葉軸の左右に鳥の羽のように並ぶという、羽状複葉になっており、最先端部の一葉に続いて4対から7対の小さな葉が並んでいます。また、これらの葉からは粘り気のある液が分泌されます。

 

 

スペインカンゾウは草丈が1メートルほどで、温和な地域では2メートルに達します。1本の葉軸には、9枚から17枚の小さな葉がついており、それらの葉をつけた葉軸の長さは7センチから15センチほどになります。これらの葉の形は楕円形に近く、葉のふちはのこぎり状などではなく、平坦です。また、この植物の花は赤紫、黄色、紫、青白色などで、葉軸の中盤から先端に向かって連なるように花をつけます。

 

スペインカンゾウの開花時期は夏の初めです。また、この植物の実は、サヤエンドウに似た形で、2,3センチメートルのさやの中に3つから6つの豆のような実ができます。また、ハーブやスパイスなどに利用できるのは根の部分であり、これには様々な成分が含まれています。

 

スペインカンゾウは、イランでは南部のファールス州、東部、北東部、西アーザルバーイジャーン州などをはじめとする大半の地域に生息しており、昔から伝統医学における薬草として利用されてきました。

スペインカンゾウ

 

伝統医学においては、スペインカンゾウは筋肉の痙攣や腫れ、気管支炎、リューマチ、関節炎などの治療に利用されています。また、十二指腸潰瘍をはじめ、消化器官や肺の病気の治療にも薬用効果があります。

 

専門家の間では、スペインカンゾウの根に含まれている成分が、虫歯の予防にも効果があると考えられていますが、それは、その成分に殺菌作用があることが理由であり、洗口剤や練り歯磨きに含まれる、歯のう蝕を防ぐ物質として使われています。

 

スペインカンゾウの根には、グリチルリチン酸が含まれていることから、この植物には甘味があります。この甘味は、砂糖の50倍にも及びます。この特徴により、スペインカンゾウは菓子類の製造にも使用されます。グリチルリチン酸は、それを含む植物の寿命に従って増加し、そのエキスの風味はそれぞれの植物によって異なります。

スペインカンゾウ

専門家によれば、イラン製のスペインカンゾウは、イランの気候条件から最も多くのグリチルリチン酸を含んでいるとされています。このため、イラン製のスペインカンゾウは、世界のそのほかの地域で生産されるものよりも注目されています。

 

近年において、スペインカンゾウは気候の変動や旱魃、さらには過剰な放牧や土地開発、そして乱獲といった人為的な原因により、絶滅の危機に瀕しています。

スペインカンゾウの根の販売により、巨額の利潤が得られることから、一部の業者などはこの薬草をより多く収穫しようとしています。スペインカンゾウが実をつける秋や冬の初めになると、この植物が生息している地区では、人々が収穫に殺到する光景が見られます。彼らは、有効な成分が含まれるこの植物の根を掘り出そうと、地下2,3メートルもの穴を掘り、この甘みのある植物の生えていた場所に、苦い記憶のみを残していきます。

スペインカンゾウ

一方で、スペインカンゾウは乱獲により、多年草として毎年花を咲かせることができなくなり、1,2年で枯れてしまうことになります。

 

このことから、イランの天然資源保護に携わる関係機関は、国有の牧草地におけるスペインカンゾウの収穫を禁止しており、その違反者を’厳しく取り締まっています。もっとも、この稀少植物は種を撒く事での増殖もできるため、その人工栽培も注目されています。

 

しかし、スペインカンゾウは種を撒いてから実をつけるまでに何年もかかるため、農業関係者はこの植物の人工栽培にはそれほど関心を示していません。このことから、スペインカンゾウの乱獲が進むとともに、この稀少植物の保護は、日増しに関係機関の注目を集めるようになっています。