イスラムの教えにおける目の健康と視力の強化
今回も、前回の続きとして、イスラムの教えにおける目の健康と視力の強化に関する教えについてお話することにいたしましょう。
健康的な食物は、目の健康と視力の強化に重要な役割を果たしています。例えば、マルメロは風味と香りが良く、バラ科マルメロ属の果物の1つです。この果物は生でも食べられますが、煮込んでジャムにしたり、煮込んだおかずに加えることもできます。
マルメロには、豊富なビタミンA,B,Cそして糖分や、たんぱく質の分解酵素の1つであるペプシンが含まれています。マルメロについて、シーア派6代目イマーム・サーデグは次のように述べています。
“マルメロを食べ、互いに分け与えあうがよい。この果物を食べると目の輝きが増し、心に友情が芽生える。また、妊娠中の女性が食べれば、美しい子どもが生まれる。マルメロを食べると、目の曇りがなくなる”
ナツメの果実も、独特の成分を有しており、世界各国の伝統医学において、病気の治療や健康増進の面で特別な位置づけにあります。ナツメは非常に有益な果物であり、栄養価が高いとともに、天然薬品としても多用されています。この果物には、良質のビタミンCのほか、豊富なミネラル分、たんぱく質、炭水化物、カルシウム、リンなどが含まれています。
ある伝承においては、次のように述べられています。
「ある人が、突然目の濁りをかかえ、何も見えない状態になった。その人はある夜、シーア派初代イマーム・アリーの夢を見た。夢の中で、彼はイマーム・アリーに対し、私はご覧の通り目が見えませんと告げた。すると、イマーム・アリーは“ナツメの実を潰して、目に塗るがよいと語った。その人が、言われたとおりにすると、目の濁りがなくなった。医者の診察でも、その人の両目がいずれも健康であることが分かった」
医師が推奨する数多くの内容に照らしても、一部の果物や野菜の摂取は目の健康と視力の強化に大きな効果があります。2007年に行われたアメリカでの調査によれば、ほうれん草を規則的に摂取することは目の健康に非常に効果があり、あらゆる目の病気を予防できることが分かっています。目の網膜に含まれるルテインとゼアキサンチンという、2つの天然色素は、目を紫外線から守る働きをしています。これらの要素を含む食物を取ることで、視力の減退を防ぐことが出来ます。ほうれん草には、ルテインとゼアキサンチンが豊富に含まれています。
オーストラリアでの調査の結果では、魚やクルミの脂肪分、そしてなたね油に含まれるオメガ3が、老化に伴う黄斑変性症への罹患を38%減らすことが分かっています。オメガ3脂肪酸は、目の網膜の神経細胞や細胞膜の主成分であり、オメガ3を含む魚を恒常的に食べることで網膜を守ることができます。
かんきつ類にも、豊富なビタミンCや抗酸化物質が含まれています。ビタミンCは、角膜や水晶体を白内障から守るほか、酸化作用を確実に防ぎ、角膜や水晶体をフリーラジカルによる弊害から防ぎます。このため、医学者らはかんきつ類の摂取を強調しています・
ニンジンには、抗酸化剤であるベータカロチンが豊富に含まれ、網膜の細胞を守るビタミンAを形成し、目の健康に大きな役割を果たしています。ビタミンAが不足すると、視力低下やドライアイを招く可能性があるほか、白内障や老人性黄斑変性症にもつながります。
規則正しい食生活を守ることに加えて、全身の健康を維持するための食習慣や衛生観念を持つことも、視力の強化に効果があります。イスラム医学の視点では、保健衛生上の一部の規則を守ることは、目の健康と視力に効果があるとされています。もっとも、そのメカニズムを理解することは決して容易ではなく、その効果を証明するには学術的な調査が必要になります。
中国を初めとする各国の伝統医学の教えでは、体の各部位の衛生の維持が互いに深く関係していることが強調されています。今日、指のある部位のマッサージが体のほかの部位の病気の治療に役立つことが証明されています。イスラムの教えにおいても、頭髪を短くしたり、ミソハギ科の植物で作る染色剤ヘンナによる染色、吸い玉療法などが奨励されています。これについて、シーア派7代目イマームカーゼムは次のように述べています。
“頭髪が長すぎると視力が減退し、視界が悪くなる。髪を短くすることで目の輝きが増し、視力も向上する”
さらに、イスラムの預言者ムハンマドは次のように述べています。
“ヘンナを塗るがよい。そうすれば目の輝きが増し、頭髪の伸びがよくなり、良い香りが漂う。そして、それにより配偶者にも安らぎを与える”
また、カッピングセラピーと呼ばれる吸い玉療法も視力の向上に大きな効果があります。これについて、預言者ムハンマドは次のように述べています。
“吸い玉療法は、何と素晴らしき方法であることか。吸い玉療法により、視力が向上し、痛みを抑えてくれる”
さらに、コーランの章句や神の言葉を眺めることや天地創造の美しさも、創造主なる神の偉大さや恩恵を示しており、感謝する心やへりくだることと共に、物を見る力を強めてくれます。また、イマーム・カーゼムは次のように述べています。
“目の輝きを増すものは3つある。1つは緑を眺めること、2つめは流れる水を見つめること、そして美しい顔を見ることである”
青という色は、明るいことや瑞々しさ、静けさ、希望を与える色とされ、心理学的には心を落ち着け、神経痛を抑えたりするのに非常に効果があるとされています。また、人間にある種の精神的な落ち着きを与え、外向的になるよう促し、他人に明るい表情を向ける気持ちを誘う色でもあります。
シーア派6代目イマーム・サーデグは、自らの教友の1人ムファッザルに対し、次のように述べています。
“青空の元で考えるがよい。神が空をこの色に造ったのは、人々の目の光や視界を最も強めるためである。医学者たちも、視力の低下を感じたならば青空を眺めるよう推奨している。ここで言う青空とは、黒に近い緑であり、一部の医学者は、視力低下を感じる人々には紺碧の青空を眺めることをすすめている。これゆえ、崇高なる神が、空を繰り返し眺めても目を傷めることがないように、大空を紺碧にした理由について考えるが良い”