放射性廃棄物の危険性
前回の番組では、環境破壊の重要な原因のひとつである各種の廃棄物の発生とその拡散についてお話ししました。現代の人々の生活の中で生じる廃棄物は、都市の廃棄物、産業廃棄物、危険な廃棄物の3つに分けられます。これまでの番組では、都市廃棄物と産業廃棄物による環境破壊についてお話ししました。今夜のこの時間は、今日の世界の環境にとって深刻な脅威となっている放射性廃棄物について考えることにしましょう。
今世紀において人類の注目を集めている最も重要なエネルギーのひとつが、核エネルギーです。核エネルギーは今日、さまざまな分野で幅広い用途を持っており、これなくしては人間が生活していくことはほぼ不可能だと考えられているほどです。その一方で、核エネルギーは多くの問題を有しており、中でも最も重要なのが、放射性廃棄物の問題です。放射性廃棄物の長期的な管理は、現代の最も複雑な問題です。なぜなら、放射性廃棄物が安全に処理されなければ、放射性物質が土や水を通して地表面に存在する水や地下水に浸透し、動物や植物を通して、環境や人間にも甚大な悪影響を及ぼす可能性があるからです。
放射性物質に対する恐怖は、現在、世界の人々や核科学者にとってひとつの悪夢となっています。広島や長崎への原爆投下、チェルノブイリ原発や福島原発の事故は、たった1グラムでも濃縮ウランが人間の生活環境や自然に入り込めば、その影響が弱まるか、なくなるまでに、400万年かかることを示しました。今なお、広島や長崎では数多くの人々が原爆の後遺症に苦しんでいます。さらに、カスピ海沿岸地域の住民も、チェルノブイリ原発事故から長年が経過したにもかかわらず、カスピ海の汚染の影響を被っています。
多くの危険にもかかわらず、現在、エネルギー生産の方法のひとつが、原発の利用です。原発で生産されるエネルギー8メガワットにつき、30グラムの放射性廃棄物が発生します。質のよい石炭を利用してその量の電気を生産すると、8000キロの二酸化炭素が発生します。これはオリンピックの競泳で使用されるスイミングプール3杯分にあたります。
放射性廃棄物の量は非常に少なくても、その危険はそれをはるかに超えており、それに対する注意管理は必須で、しかも困難なものです。放射性廃棄物は3種類に分けられます。ひとつは低レベルのもので、最も危険性の少ない放射性物質で、その威力は非常に短期間です。この種の廃棄物は特別に保管する必要はありませんが、普通の廃棄物と同じように扱うことはできません。それらは通常、燃やされ、海や陸地に埋められます。
2つ目のグループは、原発の燃料の金属のふたに付着した物質や化学物質を含んだ汚水などです。これらの物質から放射能が発生する期間は短いものですが、特別に保管される必要があります。なぜなら、大量の放射性物質を発するからです。これらの物質は通常、特別な場所に保管されます。3つ目のグループは、原子炉の核燃料のかすであり、これは最も危険な廃棄物で、その保管方法も非常に困難で費用のかかるものとなっています。
今日、この種の放射性廃棄物を処理するためにはさまざまな方法が用いられています。一部では、深い穴を掘り、そこに廃棄物を埋め、地熱などによって廃棄物を溶かして消滅させる方法が用いられています。一部の国は、氷の板の間に核廃棄物を埋める方法を試しています。パキスタンなどは、核廃棄物を太平洋に捨てています。また、宇宙に埋める方法も提案されています。また、地表に近い場所の石の層の中に保管する方法もあります。この方法は他の方法よりも多くの防護措置が必要ですが、他の方法よりは安全性の高いものとなっています。
放射性廃棄物の埋め立て地は、EPA・アメリカ環境保護庁の規定に基づき、1万年間、環境を放射性廃棄物から守り、外部との接触を断つことのできる可能性を持っていなければなりません。それは1万年とは、放射性物質の危険性が消失するのにかかる最低限の期間だからです。アメリカ、イギリス、フランスといった国では、放射性廃棄物を石でできた貯蔵庫に保管しています。
今日、核の専門家が抱える最も重要な問題は、核廃棄物の問題です。この問題は、各国の政府にとって非常に重要であり、現在、完全に政治的な問題になっています。多くの先進国は、放射性廃棄物の問題から逃れるため、密かに、あるいは公然と、それらを他の国に埋め、この物質の危険を考えるよりも、その影響を受け入れることを優先させています。
これらの国の政治家や専門家の間で、危険な廃棄物が環境や人々に深刻な影響を及ぼすことが知られているにもかかわらず、今や貧困国への廃棄物の違法な輸出は国際的な取引と化し、日々拡大しています。放射性廃棄物を生み出す先進国の企業は、環境に害を与えない形で放射性廃棄物を処理することを義務付けた法を逃れ、これらの廃棄物を輸出し、その費用を減らしています。危険な廃棄物の取引は非常に進んでおり、ヨーロッパの一部の港が、アジアやアフリカに廃棄物を送るための取引の最も重要な中心地となっています。これらの廃棄物は、送られた先の国の人々に大きな影響を及ぼしており、一部の事例では深刻な危機にもつながっています。
一部の国は、こぞってこれまで以上に自分たちの出した放射性廃棄物を別の国に埋めています。例えば、シオニスト政権イスラエルは、少し前、自分たちの放射性廃棄物をリビア南部のリビア砂漠や地域の水域に投棄しました。リビア空軍本部の議長は、トルコのアナトリア通信社のインタビューで、その事実に触れ、「リビア軍は不審な船舶が地域の水域に入り、放射性廃棄物をそこに投棄しているのを目撃した」と語りました。彼はその船はシオニスト政権のものだとし、続けて次のように語っています。「イスラエルは犯罪者である。なぜなら彼らは、地域の水域やリビア砂漠を自分たちの放射性廃棄物の処理場にし、リビアの環境を大きな危険にさらしているからだ」 少し前にも、パレスチナの保健大臣が、「シオニスト政権は80トン以上の放射性廃棄物を、毒物と共にヨルダン川西岸の都市ナブルスから300メートル離れた場所に埋めた」と語りました。
このような行動の一方で、国際機関が沈黙する中、貧困国を廃棄物の投棄場所にする政策によって、これらの国に住む人々の健康や環境が日々、さらに大きな危険にさらされています。このことは、人間や人権の尊重、環境保護といった主張が、世界の覇権主義者の偽りの言葉に過ぎないことを示しています。