12月 19, 2021 00:24 Asia/Tokyo
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今回から、コーラン第8章アル・アンファール章戦利品についてお話ししましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

イスラムの預言者ムハンマドは、バドルの戦いの日、イスラム戦士たちを戦いに鼓舞するため、様々な報奨を定めました。これにより、若い戦士たちは勇敢に戦いに挑みましたが、高齢の戦士たちは、旗の下に留まりました。戦争が終わったとき、若者たちは報奨を受け取るために預言者の許に行きました。しかし、高齢の戦士たちは、「私たちにも分け前がある。私たちはあなたたちの心の支えだった」と言いました。こうして、戦士の間で、戦利品を巡って言い争いが起きたとき、アル・アンファール章の最初の節が下されました。この節で、神は、対立の原因を根絶するため、戦利品の問題を預言者に委ね、預言者もまた、それらを戦士たちに平等に分け与えました。それでは、この章の第1節をお聞きください。

 

「彼らは汝に[明確な持ち主のない財産や]戦利品について尋ねるだろう。言え、『戦利品は神と預言者のものである。そこで、神を畏れ、互いに争う兄弟の間を和解させなさい。神とその預言者に従いなさい。もし信仰を寄せているならば』」

 

第1節は、戦利品に関して述べていますが、それが意図しているのは、一般的な掟であり、特定の持ち主のいない全ての財産も含まれています。この節によれば、こうした財産は神と預言者、そして預言者の後継者のものであり、言い換えれば、イスラム統治体制のもので、全てのイスラム教徒の利益のために消費されなければなりません。このように、戦利品は、国庫の支えとなる重要なものと見なされます。戦争によってイスラム戦士たちが手にする戦利品についても、そのうちの5分の4が戦士たちのものとなります。これは、彼らが背負った苦労に対する報奨であり、戦士たちを鼓舞するためのものです。残りの5分の1は、この章の第41節に述べられている場合において、ホムス・喜捨として使われます。

 

アル・アンファール章第2節から4節で、神は敬虔な人間の5つの性質について触れています。

「敬虔な人々とは、いつでも神の名が唱えられたとき、その心に畏れを抱く人々であり、神の節が彼らに読まれた時、信仰を増やす人々であり、神のみを頼る人々である。また礼拝を行い、彼らに日々の糧として与えられたものの中から施す人々。彼らこそ、真の敬虔な信者である」

 

 

成長と向上は、全ての生き物の特徴です。真の敬虔な人間も常に、成長の道を歩みます。彼らは生きた信仰を持っています。彼らの信仰の芽は、毎日育ち、新しい花や果実をつけます。この節は続けて、次のように語っています。

「彼らは自らの主のみに頼る」

彼らは実際、神のみに頼り、神との関係の象徴である礼拝を行い、神から日々の糧として与えられたもの中から施しをします。

 

アル・アンファール章の多くの節は、バドルの戦いとその特徴を述べるものとなっています。歴史によれば、メッカの長老であったアブーソフィヤーンが、キャラバンを率いて現在のシリア・シャームからメディナに戻ろうとしていたとき、預言者は教友たちに、敵の資本の大部分を運んでいたこの大集団に追いつき、その品を押収するよう命じました。それは、イスラム教徒がメッカからメディナに移住したことで、多くの財産が敵の手に渡ってしまったためでした。また、理性や論理から考えても、イスラム教徒が不意に敵の交易品を押収し、自らの経済や軍事面での基盤を強化する必要がありました。アブーソフィヤーンは、このイスラム教徒の決定を知り、メッカに使いを送って、そのことをメッカの人々に知らせようとしました。メッカに入った使者は、人々の注目を集め、彼らを扇動しました。彼の呼びかけにより、メッカの長老たちを含めたおよそ950人の戦士たちが、700頭のラクダと100頭の馬を連れて出陣しました。多神教徒の軍勢を率いたのは、アブージャハルでした。

 

敵の軍勢はイスラム教徒のおよそ3倍以上であり、彼らの軍備は、イスラム教徒の何倍もありました。預言者ムハンマドは、313人のイスラム戦士たちと共に、メッカとメディナの間に位置するバドルという場所の近くに到着すると、自ら、作戦の指揮を取りました。クライシュ族の多神教徒の軍勢も、バドルの地にやって来ました。双方が対峙しました。クライシュ族の多神教徒の軍勢は、十分な装備と戦士、食料を備えて戦場に入っていました。彼らは初め、イスラム教徒の軍勢は、兵士の数や強さの点で、大したことがないだろうと考えていました。

 

イスラム戦士たちが安心して眠ることができず、翌日には、肉体的にも精神的にも疲れた状態で敵と戦わなければならない可能性もあったため、預言者は、神の約束に従い、彼らにこのように語りかけています。「たとえあなたたちの数が少なかったとしても、恐れてはならない。大勢の天使たちがあなたたちを助けるために駆けつけるだろう」 預言者は彼らを勇気付け、最終的な勝利を確信させました。そのため、戦士たちは安心して眠りに着くことができました。また、戦士たちが心配していたのは、戦場の物理的な状況でした。バドルの土地は柔らかい砂で覆われていたため、そこに足を取られ、戦いの際に思うように動くことができない恐れがあったのです。しかしその夜、雨が降りました。彼らはその雨の水で体を清め、大地もまた、雨の水を吸って固くなりました。

 

翌朝、イスラムの少数の軍勢は、高い士気を持って敵に対峙しました。最初、預言者は和平を申し出ました。クライシュ族の長老の中には、和平を望む者もいましたが、アブージャハルがそれを拒みました。こうしてとうとう、戦いの火ぶたが切って落とされました。まず、預言者のおじのハムゼとアリー、その他の勇敢なイスラム戦士たちが、敵に大きな痛手を与え、彼らを打ち倒しました。その後、アブージャハルは、集団攻撃を命じました。預言者はイスラム教徒に向かって、敵の数が多いことを気にしてはならない、自分の目の前の敵だけを見て、神に助けを求めるようにと言いました。いずれにせよ、イスラム教徒の勇気と抵抗が、クライシュ族を追い詰めていきました。その結果、アブージャハルを含め、敵の兵士は70人が死亡し、70人がイスラム教徒の捕虜となりました。しかし、イスラム教徒の犠牲者はわずかでした。こうして、イスラム教徒と力のある敵の戦いは、予想外にも、イスラム教徒の勝利に終わり、彼らに神の溢れる恩恵が注がれました。

コーラン第8章アル・アンファール章戦利品、第22節

 

アル・アンファール章の第9節から14節までは、バドルの戦いの重要な場面と、神がこの戦いの際にイスラム教徒に授けた様々な恩恵について触れています。神はそれによって、彼らに感謝の気持ちを抱かせ、次の勝利と発展のための道を開こうとしたのです。この節はまず、天使たちの助けに触れ、次のように語っています。「敵の数の多さと装備の立派さを恐れたために、神に助けを求め、神に向かって手を伸ばしたときを思い起こしなさい。そのとき神は、あなた方の懇願を受け入れ、こう言われた。『私はあなた方を、次々に降り立つ1000人の天使と共に助けるだろう』 それから続けて言う。

『神はそれを、吉報とあなた方の安心のためだけに行った。勝利は神から以外にはない。神は全能なる御方、誰も神の意志に抗うことはできない』」

 

神はこの後で、また別の恩恵について述べ、次のように語っています。「思い起こしなさい、あなた方に軽い眠りが襲い、あなた方の[肉体と精神の]安らぎの源となったときのことを」

バドルの闘いの際の神の3つ目の恩恵は、雨でした。エ「それであなた方を清め、また悪魔の穢れを洗い流すように、天から雨を降らせた。」

神はそれによって、バドルのイスラム戦士たちの心を強くしようとしました。また、雨を降らせることにより、足を取られやすい砂地で、イスラム戦士たちがしっかりと歩めるようにしたのです。この他、バドルの戦いで神がイスラム戦士たちに下した助けの一つは、敵の心に抱かせた恐怖心であり、敵軍の士気は大きく揺るがされました。その結果、クライシュ族の屈強な軍隊は、イスラムの僅かな数の軍勢に対して気持ちの上で負けてしまったのです。

 

アル・アンファール章の節で、神はバドルの戦いにおけるイスラム教徒の行動を分析し、彼らの長所や弱点を指摘しています。幾つかの節は、イスラム教徒が教訓を得られるよう、この戦いの重要な場面や出来事について説明しています。バドルの戦いの成果の一つは、イスラム教徒が大きく前進したことでした。この輝かしい勝利により、イスラム教徒の名声はアラビア半島全体に行き渡り、誰もが、イスラム教徒の新たな教えとその驚くべき力について深い考えに沈みました。

 

アル・アンファール章の第45節から47節まででは、戦争と神の道における戦い・ジハードについて、いくつかの指示が出されています。戦士たちは、戦場で敵に対峙した際、歩みをしっかりと保つこと、神のことを何度も思い起こすこと、神とその預言者の命に従うこと、いさかいを起こしたり、争ったりせずに、共に連帯すること、抵抗すること、高慢さや自己顕示、欲望によって戦場に赴かないこと、人々を神の道から遠ざけてはならないこと、などが、その指示にあたります。

 

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