12月 29, 2021 22:41 Asia/Tokyo
  • コーラン第12章ユーソフ章ヨセフ、第2節
    コーラン第12章ユーソフ章ヨセフ、第2節

今回も引き続き、コーラン第12 章ユーソフ章ヨセフを見ていくことに致しましょう。

慈悲深く、慈愛あまねき、神の御名において

 

 

ユーソフの兄弟たちは、彼を井戸に落とした後、目に涙をためながら父の許に帰りました。彼らは、ユーソフが狼に食べられてしまったことを証明するために、ユーソフの体から脱がせたシャツに血をつけて父親に示しました。しかし彼らは、狼に襲われたことを示すために、シャツの何箇所かを破っておくのを忘れていました。父は、そのシャツを見るとすぐに、全てのことを理解して言いました。「あなたたちは嘘を言っている。あなたたちの心がそれを飾り立てている」 父は、息子との別れに心を痛め、涙を流しながら言いました。「私は待つであろう。忍耐は美しく立派な行為である」

 

ユーソフは、井戸の恐ろしい暗闇の中で、孤独に苛まれながら、苦しいときを過ごしていました。しかし、神への信仰とそれによる安心感が、彼の心に希望の光をもたらしていました。数日が過ぎ、キャラバンがやって来て、その近くに居を構えました。キャラバンの水の係りが井戸の中に桶を投げ込みました。ユーソフは井戸の底から、上の方で音がすることに気づき、それに続いて桶と縄が降りてくるのを見ました。そこですぐにその縄に自分を縛りました。水の係りは、桶が異常に重いと感じました。そこで、それを力いっぱい引き上げました。すると突然、目の前に美しい少年が現れました。彼は言いました。「なんということだ。水の代わりに子供を引っ張りあげるとは」 キャラバンはユーソフをエジプトに連れて行き、奴隷市場で、彼を安い値段で売りました。ユーソフを買ったのは、エジプトでフィルアウンの宰相を務めていた人物でした。こうしてユーソフはエジプトに行き、新しい人生を始めました。

 

ユーソフ章の第21節には次のようにあります。

「エジプトでユーソフを買った人物は、妻に言った。『彼を大切に扱いなさい。[将来、]私たちに利益をもたらしてくれるかもしれない。あるいは彼を養子にしてもよい』 こうして我々は、ユーソフにその地で財力と権力を与え、彼に夢の意味を知らせた。神は自らの行いを支配される。だが多くの人はそれを知らないのだ」

 

この美しい子供にすっかり魅了され、子供がいなかったエジプトの宰相は、妻に対し、彼を大切に扱うように求めました。コーラン解釈者によれば、この節にある、「我々はユーソフにその地で財力と地位を与えた」とあるのは、ユーソフがエジプトにやって来て、宰相の許で育てられるようになったことで、将来、彼が大きな力を得るための土台が築かれたことを意味しています。おそらく、宰相の宮廷での恩恵と安寧に満ちた生活は、井戸の底での恐怖や孤独とは比べ物にならないものだったことでしょう。

 

ユーソフは、エジプトの宰相の家で育てられ、青年に達し、知識と英知を備えていました。宰相はユーソフの美しい姿に惹きつけられ、宰相の妻のゾライハもまた、ユーソフを心から愛していました。こうしてしだいに、ゾライハのユーソフへの愛情は燃え上がっていきました。一方、清らかで敬虔なユーソフは、神のみのことを考え、その心は神のみを求めていました。ゾライハは、自分の目的を果たすためなら手段を選ばず、ユーソフに対して様々な罠を仕掛けました。ゾライハは何とかして、ユーソフの心を手に入れようとしたのです。しかし、彼女の努力は実を結びませんでした。彼女が思いついた最後の方法は、ユーソフと2人きりのときに誘惑するやり方でした。そこで、彼を誘惑するための状況を作り出し、最も美しい服を見につけ、最高の化粧をして、若いユーソフを屈服させる舞台を整えたのです。ゾライハは全ての扉を固く閉めて言いました。「さあ、私はあなたのものです」

 

そのとき、ユーソフは、あらゆる罪や過ちの状況が整っており、彼には逃げ道が残されていないことを知り、ゾライハに向かって言いました。「神に助けを求めます」 こうしてユーソフは、断固とした態度で、ゾライハの道徳に反した要求を拒み、そのような要求には決して屈しないことを彼女に理解させました。また、同じような状況に陥ったとき、悪魔の誘惑から解放されるための唯一の道は、神に頼ることだということを、ユーソフはこれによって、全ての人に教えたのでした。

 

ユーソフ章の第23節には次のようにあります。

「ユーソフがいた家の女性が、彼を誘惑しようとした。彼女は扉を固く閉めて言った。『さあ、あなたのために用意したものへとおいでなさい』 すると[ユーソフは]言った。『神に助けを求めます。神は私の主であり、私の地位を大切にしてくださいます。本当に圧制者が救われることはありません』」

 

ここで、ユーソフとゾライハーの物語は、最も重要な局面を迎えます。コーランは、それについて、意味の深い表現を使ってこのように語っています。

 

「その女性は、ユーソフを求めた。彼もまた、もし神の確証を見ていなかったら、彼女に惹きつけられていただろう。こうして我々は、彼から醜い行いや堕落を遠ざけた。それは彼が、我々の敬虔な僕であるがゆえである」

 

その女性は、ユーソフを断崖に引きずり込もうとしましたが、ユーソフは信仰心と理性の力により、欲望の嵐を打ち破りました。その重要な瞬間、ユーソフは自分の清らかさを守るために、欲望と激しく闘いました。神が、「彼は我々の純粋な僕の一人だった」と語っていますが、それは、純粋な僕が危機的な状況にあるとき、神は決して、その人を一人にすることはなく、様々な手段によって、その人を助けてくださる、ということを指しています。

 

ユーソフは、過ちを犯さないようにするため、扉を開けて外に出ようと走りました。しかし、欲望が理性に打ち勝ってしまっていたゾライハは、ユーソフの後を追いかけ、彼が出て行くのを防ごうとしました。そのため、ユーソフのシャツを後ろからつかみ、引っ張りました。こうして、ユーソフのシャツは、後ろから破れてしまいました。そのとき、ゾライハの夫が扉のところに現れました。ゾライハは、慌てて夫に向かって言いました。「あなたの妻に悪巧みをしようとした人物には、どんな罰を与えましょう? 投獄しますか、それとも厳しい拷問にかけますか?」

 

様々な証拠が調べられた後、エジプトの宰相は、自分の妻が嘘をつき、裏切ったことを知りました。しかし、この出来事が明らかになり、名誉を失うことを恐れたため、それを隠すのが得策だと考えました。そのため、エジプトの宰相はユーソフに向かって、「ユーソフよ、お前はこのことを忘れ、誰にも何も言わないでほしい」と言いました。また妻に対しても、「お前は罪を犯した。だからその赦しを請いなさい」と言いました。しかし、宮廷の人々の願いもむなしく、この秘密はとうとう、宮廷の外に漏れてしまいます。コーランの節には次のようにあります。「町の女性たちは言った。

『エジプトの宰相の妻が、召使を誘ったそうだ。妻は召使に夢中らしい』 彼女たちは言った。『私たちは彼女を明らかな迷いの中にいるものと見なします』」

 

エジプトの女性たちの策略を知り尽くしていた宰相の妻は、それに対処する方法を考え、彼女たちを宴に招待しました。宰相の妻は彼女たちのために高価な席を用意し、それぞれに果物を切るためのナイフを渡しました。それからユーソフに向かって、宴の場所に入ってくるよう命じました。貴族の女性たちに、ユーソフの気高さを実際に目にして納得させ、自分のことを責めないようにさせるためでした。エジプトの女性たちは、ユーソフの美しい姿を見るなり、驚きをあらわにし、彼を非常に偉大な存在とみなし、我を失って、果物の代わりに自分の手を切ってしまいました。彼女たちは言いました。「神は無謬です。彼は人間ではありません。偉大なる天使です」

 

エジプトの宰相の妻は、このようなやり方によって、自分がなぜユーソフにそこまで魅了されたかを彼女たちに納得させました。妻はこの宴の中で、それまで隠されていた事柄を明らかにし、自分の罪をはっきりと認めて言いました。「確かに、私は彼を誘惑しようとしました。でも彼は自らを制しました」 そして大胆にも、もし、私が命じたことをユーソフが実行しなければ、間違いなく彼は牢獄に入れられ、そこでも卑しめられることになると宣言しました。

 

ユーソフは、様々な問題が襲い掛かる中で、堂々と決断を下し、女性たちと言葉を交わすこともなく、神に祈りを捧げました。

「神よ、この女性たちの誘惑よりも、牢獄の方が私にとっては好ましい場所です。もし彼女たちの策略を私から遠ざけてくださらなければ、私は彼女たちへと傾き、愚かな者の一人となってしまうでしょう」

 

神はユーソフを放り出したりはしませんでした。そして彼女たちの策略をユーソフから遠ざけました。こうしてユーソフの清らかさと、エジプトの宰相の妻の穢れが明らかになりました。エジプトの宰相は、一族の恥がそれ以上明らかになるのを防ぐためには、ユーソフを退けるしかないと考えました。人々が彼の存在をすっかり忘れてしまうように、宰相は、そのための唯一の道は、ユーソフを牢獄に入れることだと考えました。そこで、それを実行し、人々には、本物の罪人はユーソフであったように見せようとしたのです。こうして、清らかさの模範であったユーソフは、投獄されてしまいました。

 

 


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