7月 30, 2018 22:35 Asia/Tokyo
  • ヤズドのドウラトアーバード庭園
    ヤズドのドウラトアーバード庭園

今回は、砂漠の真ん中にあるドウラトアーバード庭園についてご紹介してまいりましょう。

 

ヤズドの町

 

ヤズドの町は、イラン中部の焼け付くような砂漠と山のふもとの間に位置し、砂漠性の熱帯気候を有することから、イランで最も歴史のある乾燥した土地として知られてきました。ヤズドの歴史的な市街地には、数多くの庭園があり、ザクロやブドウ、アーモンドなどの果樹が育っています。ヤズドとその周辺の都市にある様々な庭園の中でも、ドウラトアーバード庭園は、およそ6.5ヘクタールの面積を有し、イランで最も美しい庭園となっています。ここは数々の特徴により、1967年、イランの国家遺産に登録され、2011年には、ユネスコの世界遺産に登録されました。

 

 

ドウラトアーバード庭園は、イランで最も美しい庭園のひとつで、アフシャール朝からザンド朝の時代のものです。この庭園が建設されたのは、1747年のことで、ヤズドの為政者であったモハンマド・タギー・ハーン・バーフギーの指示によるものでした。この庭園は、260年以上の歴史を有し、ザンド朝のキャリームハーン・ザンドの時代、ヤズドの為政者たちの滞在場所となっていました。モハンマド・タギー・ハーンの時代、庭園は北側から、多くの木が植えられた通りへとつながっていました。これらの木の存在により、外側から庭園の中が見えないようになっていました。そのため、この通りは、1000本の木を意味するへザールデラフトと呼ばれ、幅は4メートルから5メートル、長さは20キロ以上ありました。庭園の東側にも、長さ8キロの通りがあり、西側には、乾いた河川の川床がありました。当時、庭園は、ヤズドの町の郊外にありました。ガージャール朝時代にも、町の外にありましたが、時が経過し、ヤズドの町が拡張されるに従って次第に庭園はヤズドの町の中心部に位置するようになりました。

 

ヤズドのドウラトアーバード庭園

 

ドウラトアーバードのカナート・地下水路は、この庭園の存在において基本的な役割を果たしており、長さはおよそ60キロで、ヤズドの町にある最も長く重要なカナートとなっています。この歴史的なカナートは、200年以上の歴史があり、5つのカナートが組み合わさってできています。ドウラトアーバードのカナートは、この庭園の中を通り、その後、周囲の土地に流れ、農地を潤しています。現在、ドウラトアーバード庭園は、庭園の周りにある井戸によって灌漑されています。

ヤズドのドウラトアーバード庭園

 

ドウラトアーバード庭園の設計は、イランの最も伝統的な正式な庭園の設計です。庭園は、2つの長方形に分けることができます。ドウラトアーバード庭園として知られる大きな長方形の部分は、実際、家族がくつろぐための内部の庭園となっていました。北側にある小さな長方形の部分は、外側の庭園の範囲を明らかにしています。この庭園は、スポーツの大会や政府のイベントを開催するための場所でした。家族の冬の滞在場所は、家族用の庭園内の太陽の光りが照らす南側に位置しています。その反対側は、夏を過ごすための滞在場所で、影に建てられており、窓から吹き込むそよ風と5つの池によって、涼しく過ごしやすくなっています。

 

ドウラトアーバードの庭園の建物には、外側の建物、内側の建物と入り口の門があります。外側の建物は庭園の東側に位置し、八角形の建物、貯水槽、背の高い風採り塔があります。内側の建物は西側に位置しています。この歴史的な建物の扉は木でできていて、美しい模様で飾られ、現在も、かつての美しさを保っています。

 

ドウラトアーバードの建物群は、それぞれが、当時の空間の機能に合わせた魅力と独特の建築様式を有しています。南側の壁へと続く、庭園の中心の奥にある八角形の建物は、実際、庭園のメインの建物と見なされ、背の高い風採り塔の存在によって知られています。この塔は、プリズム型をしていて、高さは34メートル、イランで知られる風採り塔の中では、最も背の高いものとなっています。この風採り塔は、建物の中を涼しくするクーラーのような役割を果たし、かつては、この砂漠都市の各地でこの塔が利用されていました。

ヤズドのドウラトアーバード庭園

 

八角形の建物には、3つの大きな部屋があり、中央には大理石でできた貯水槽があります。その設計は、イランの他の建物に似たものですが、下の階には大きな広間があります。この建物のメインの部屋は庭園と中庭に向かって建っており、入り口は、美しいデザインの色とりどりの大小のガラスで装飾され、太陽が出て、池に水が溜まると、そこに美しい景色が映し出されます。

 

ドウラトアーバード庭園には、水が非常に美しい魅力を持っています。この庭園では、水が地中に運ばれたり、外に噴き出されたりして、庭園全体に水が見られます。最初は八角形の建物の風採り塔の下、大理石の池の中から湧き出します。それからこの建物の中央にある池に入り、3つの長方形をした池の中に流れ込みます。その途中には、3つの箇所で、大理石を削って波が起こり、水の量が実際よりも多く見えるように設計されています。

 

水は、そこから小さな池へと流れ、そこから庭園の大きな池へと流れ込みます。この池は、庭園のちょうど中心にあり、八角形の建物の風採り塔の高さに沿っていて、その建物は、完全に池に映し出されるようになっています。そこから

水は入り口の門の下を通って建物の北側にある外側の庭園の大きな12角形のプールに注ぎ込み、そこから長方形の3つのプールへと三方向に分かれていきます。これらのプールは、庭園の外の通りや村へと続いており、農業用水として使用されます。実際、建築家は、水が地層を通って木々を潤すだけではなく、澄んだ水を地上にもたらし、砂漠地帯に住む人々の心も潤そうとしているのです。

 

ドウラトアーバード庭園の重要な特徴のひとつは、木が正確に並べて植えられていることです。そのために、庭園のそれぞれの箇所は正方形か長方形をしており、そこがさらに小さな四角形に分かれていて、その一画には、樹齢の長い1本の木が植えられ、それからさらに小さな四角形に分かれ、その頂点には、平均的な樹齢の木が1本植えられています。こうして、内側の四角形の角には、より寿命の短い木が植えられていました。また、この庭園の内部にも、長さ206メートル、幅6メートルの水路があります。庭園には、ブドウ、ベリー、杉、ヤナギなどの木が植えられています。また花壇には、ダマスカスローズなどの花が植えられています。ドウラトアーバード庭園は、庭園作り、水の分配、建築の点で、イランにある庭園の中でも見ごたえのあるものとなっています。