光の彼方への旅立ち、アル・ゲサス章(2)
コーラン第28章 アル・ゲサス章 物語り 第5節~第8節
慈悲深く、慈愛あまねき、アッラーの御名において
第 5 節
「また我々は、地上で弱く虐げられている人々に恩寵を授け、彼らを人々の指導者とし、[大地の]後継者にすることにした。」 (28 : 5)
أُولَئِكَ الَّذِينَ لَهُمْ سُوءُ الْعَذَابِ وَهُمْ فِي الْآَخِرَةِ هُمُ الْأَخْسَرُونَ (5)
第 6 節
「また地上で彼らに力と財 力を与え、フィルアウンとハーマーン、そしてその軍勢に、彼らが恐れていたことを示そうとした」 (28 : 6)
وَإِنَّكَ لَتُلَقَّى الْقُرْآَنَ مِنْ لَدُنْ حَكِيمٍ عَلِيمٍ (6)
前回の番組でお話したように、預言者ムーサーは、フィルアウンのもとに行き、イスラエルの民に対する彼の圧制を防ごうとしました。フィルアウンはイスラエルの民を卑しめて隷属させ、さまざまな口実を設けては、その民の男児たちを殺し、女児たちを召使いにしていました。この2つの節は次のように語っています。「フィルアウンは権力の座に永遠に留まり、何でも望むままに行うことができると考えていたが、神の意志は、覇権主義者が現世で貶められ、下の立場にいた虐げられた者たちが代わって権力を握り、以前の権力者を支配することであるのを知らなかった」
フィルアウンとその下臣のハーマーンは、イスラエルの民が立ち上がり、自分たちの統治体制を打ち倒すのを恐れていたため、彼らに最も厳しい苦しみを与え、革命的な若者を殺害していました。しかし、神の意志により、フィルアウンとその側近たちが最も恐れていたことが起こったのです。イスラエルの民は、預言者ムーサーを指導者としてフィルアウンたちを支配することとなり、その宮殿や莫大な富を引き継ぐことになりました。
とはいえ、神の意志は根拠や理論を伴わないものではありません。ある国の国民が、圧制者の支配を逃れ、その道において行動を起こそうとすれば、神はそれを助け、圧制者に勝利させてくれます。これは、歴史を通して変わることのない神の掟であり、あらゆる共同体の運命は、彼ら自身の行動によって決定されます。共同体が自分たちで望まない限り、その運命が変わることはないでしょう。イスラムの伝承によれば、世界の終わりに、イスラムの預言者一門の救世主、イマーム・マハディが現れ、圧制者は倒され、虐げられていた人々が権力を握り、世界の東と西に正義が広まることになります。
第5節 ~ 第6節の教え
• 神の意志は、圧制者の統治が終わり、虐げられた弱い立場の人々が権力を握るようになることです。
• 利己的な政権は、有能な人材を卑しめ、簡単に人々を支配できるようにします。
• 世界の未来は、虐げられた人々のものです。これは、彼らが未来に希望を抱きながら努力できるようにするために、神が彼らに与えた吉報です。
• 圧制的な権力者は、来世で責め苦を受けることはもちろん、現世でも神の怒りを免れることはありません。そして敬虔な人々によって貶められるのです。
第7節
「また我々はムーサーの母親に言った。『彼に乳を飲ませるように。また[フィルアウンからの]恐怖が感じられたときには、彼を[箱の中に入れて]海に流すがよい。[この命を]恐れることはない。[彼から離れていることを]悲しまないように。我々は彼をあなたのもとに戻し、彼を預言者の一人にするだろう」 (28 : 7)
إِذْ قَالَ مُوسَى لِأَهْلِهِ إِنِّي آَنَسْتُ نَارًا سَآَتِيكُمْ مِنْهَا بِخَبَرٍ أَوْ آَتِيكُمْ بِشِهَابٍ قَبَسٍ لَعَلَّكُمْ تَصْطَلُونَ (7)
第8節
「フィルアウンの一族が彼を[水の中から]拾い上げ、その後[ムーサーは]彼らの敵、悲しみの原因になった。まことにフィルアウンとハームーン、その軍勢は過ちを犯す人々であった」 (28 :8 )
فَلَمَّا جَاءَهَا نُودِيَ أَنْ بُورِكَ مَنْ فِي النَّارِ وَمَنْ حَوْلَهَا وَسُبْحَانَ اللَّهِ رَبِّ الْعَالَمِينَ (8)
さて、フィルアウンとその妻が、ナイル川のほとりで宮殿の傍らに座っていると、川から箱が流れてくるのを見ました。フィルアウンは、その箱を拾うよう命じました。箱を開いてみると、そこには生まれたばかりの美しい子供がいました。彼らはその子をどうしたらよいのか分かりませんでした。フィルアウン自身が、イスラエルの民に男の子が生まれたらその子を殺せと命じていたからです。この男の子はイスラエルの民の子で、殺害を免れるために川に流されたのは明らかでした。一方でフィルアウンには男の子がおらず、妻はこの子を養子にすることを望みました。しかし、それら以上に、神の意志によって、ムーサーの母親は生まれたばかりの子供を川に流し、フィルアウンの妻も、その子を心から気に入り、彼が殺されるのを防ぐことになったのです。こうしてムーサーは、敵であるフィルアウンの家で大切にされながら、将来、フィルアウンの堕落した圧政的な政権を倒すまで、危険な目に遭うことなく育てられました。
第7節~ 第8節の教
• 行き詰まりに陥った際、神は敬虔な人間にとって、最高の支持者、指導者です。そして、そうした問題から解放される道を示してくださいます。
• 目に見えない助けを得ることは、物質的な可能性を利用することと矛盾しません。私たちは、物質的な可能性を利用してすべきことを実行するのと同時に、神をより所にしましょう。
• 私たちは、たとえ神の多くの英知が意味するところを知らなくても、その指示の実行を怠ってはなりません。なぜなら、神の命には必ず、さまざまな秘密が隠されているからです。神の戒律に英知が含まれないものはありません。