自然環境の構成要素とは何か?
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自然
今回は、自然環境の構成要素についてお話することにいたしましょう。
前回お話しましたように、自然環境とは人間や動植物が生きている環境のことを指しています。水や土、空気、太陽の光などは、それ自体の変化などにより地球上の存在物の成長や存続に、良くも悪くも影響を及ぼす要素といえます。欧州経済評議会も、自然環境の定義づけにおいてこれらの要素に触れており、自然環境には水や空気、土壌、そして全ての生物の存続に関係する内的、外的な要素が含まれるとしています。
空気と大気汚染の問題
しかし、これらの中でも生物にとって水や食物以上に必要とされるのは空気です。全ての生物は、食物がなくても数日、或いは数週間は生きていることができますが、空気なしでは数秒さえも生存できません。きれいな空気の利用は、人間が持つ自然権の1つです。しかし、この100年間に起こった急速な変化により、自然環境は地球上の全ての生物にとって、必ずしも住みやすいとは言い難いものとなっています。化石燃料を使用する工場や自動車の燃料からの排気ガスに含まれる二酸化炭素、油田から発生する遊離天然ガスの焼却、さらには地球の心肺機能を果たす森林の破壊や焼失により、空気が汚染され、地球上の存在物の健康が脅かされています。
いまや、大気汚染は世界的な問題の1つとなっており、特に人口の多い大都市ではこれにより多くの問題が生じています。学者の見解では、過去100年間における大気汚染と地球温暖化の主な原因の1つは、様々な要因により生じた温室効果ガスとされています。温室効果ガスには、二酸化炭素や一酸化二窒素、メタンガス、対流圏オゾンなどが含まれています。これらのガスが温室効果ガスと呼ばれているのは、地球の周囲に温室のような状態を生み出し、それにより地球全体の温度を上昇させていることによります。
学者らの研究により、温室効果ガスが発生した影響で、この100年間に地球全体の温度が0.8度から3.5度ほど上昇したことが明らかになっています。この現象は、世界各地で大規模な気候の変動をもたらし、旱魃や洪水、暴風雨などの大惨事をもたらしました。さらに、地球の温暖化により極地帯の氷山の溶解が急速に進んだ結果、海水面が上昇して沿岸地域の多くが水没しています。気候変動や地球温暖化の権威とされるIPCC・気候変動に関する政府間パネルは、報告の中で地球温暖化現象の事実を認めるとし、次のように述べています。
「地球上で、20世紀半ばから見られるようになった温暖化現象の多くは、人間が生産した温室効果ガスと大気汚染によるものである」
地球温暖化は、特に中央アジアや北アフリカ、そして北アメリカの平原地帯における水資源の消失を加速させています。
産業化と水不足、水質汚染の問題
自然環境におけるもう1つの重要な要素は水です。水は、生物が地球上で生存できるようにする唯一無二の特徴をもつ液体です。確かに、水は再生可能な資源の中で最も重要ですが、非常に限られています。今や現実に、地球上の水資源が脅かされています。世界の全ての国のうち40%以上は、人口の増加や農業、灌漑の発展、地上の水資源や地下水の汚染、工業用水の利用などにより、水不足という問題に直面しているのです。
水の需要は、毎年3.2%ほどの割合で増加しています。世界銀行は、水の危機を予測し、2005年以前に世界規模での淡水の備蓄の増量と干ばつ対策を目的に、およそ6000億ドルを拠出しました。世界的な水の重要性は、今や水資源の確保が現代世界で地政学的に重要な問題の1つとなっていることだけを見ても明らかです。例えば、複数の国にまたがって大規模な河川が流れている地域では、水質(管理)や水の利用量、そしてそこに存在する天然資源の利用をめぐり、それらの河川の流域にある国々の間で常に争いが起こっています。こうした河川の例として、ヨーロッパを流れるライン川、中央アジアのアムーダルヤー川とシールダルヤー川、南アジアのガンジス川とインダス川、そして中東のヨルダン川が挙げられます。
現在、一部の国が直面しているもう1つの危機は水質汚染です。世界の多くの地域における水源の汚染の悪化は、非常に懸念すべきものです。地下水をはじめ、河川や湖沼に存在する水資源は重要な淡水源ですが、人間の活動により直接汚染されています。
今日、淡水の確保は一部の国にとって深刻な危機と化しています。OECD・経済協力開発機構の報告によりますと、この問題に関する適切な措置が講じられなかった場合、2030年までにおよそ40億人が水不足の危機に直面するということです。現在のまま人口増加が進めば、この危機が最高潮に達することは確実です。中でも、化学物質による水質汚染は、深刻な問題の1つとされています。
地下水や河川の水の汚染の重要な原因としては、工場からの化学物質の排出、農薬の使用、処理されていない下水の流出などがあり、これらは現在までに多くの人々や生物の死滅につながっています。さらに、窒素やリンを含む化学肥料の使用により、河川などに含まれるこれらの化学物質の濃度が高まり、湖沼での急速な富栄養化が進んでいます。アオコや赤潮の増加により、水中の酸素が減少し、その結果水中生物の多くが死亡しています。
限られた肥沃遅滞と土壌破壊、砂漠化の問題
自然環境を構成している3つめの要素は土壌です。土壌は、地表面の非常に新しい層を形成しており、生物の栄養源は土壌に依存しています。土壌は、植物が必要とする水分を保持するため、温暖な気候が形成されます。土壌が自然環境に果たしている重要な役割の1つに、分解・浄化作用があります。土により汚染物質や廃棄物が急速に分解され、無機物となり、分解された成分は再び自然のサイクルに戻ります。
土壌は、廃棄物の埋め立て処理のためにきわめて重要です。しかし、最近は残念ながら、肥沃な土壌の塩化、さらには酸性土壌やアルカリ土壌の問題、地力の低下といった変化が見られています。そのため、自然はもはや活用できなくなり、自然環境が脅かされています。一方で、人々が農牧業のために土地を過剰に使用していることから、植物が激減し、自然環境が知らず知らずのうちに破壊されているのです。
複数の統計によれば、地球上の陸地の面積はおよそ132億ヘクタールとされています。しかし、農業の作付けに使用できるのはそのうちわずか22%に過ぎず、しかも世界におけるその肥沃な地域でさえも、その多くは地力の低下や破壊に直面しています。学術的な調査結果では、世界の肥沃な土壌のうちの10%から11%が汚染されており、その再生はほぼ不可能とされています。また、これまでに行われた調査では、地力の低下や土壌の破壊の原因は森林破壊や伝統的な形式による農業、不適切な灌漑、化学肥料や農薬の過剰な使用、家畜の過放牧などとされています。こうした活動の結果、世界の多くの地域では肥沃な土壌や放牧地が日々破壊され、砂漠化が進んでいます。
自然環境の研究者の見解
自然環境の研究者は、自然環境に影響を与える要素を別の方法で分類しています。彼らの見解では、水や土、熱、光、空気が自然環境に物理的な影響を与える要素であるとされています。しかし、自然環境には細菌やバクテリアなどの病原体も存在しており、これらは人間や動植物、昆虫に好ましくない影響をもたらします。科学者らは、こうした要素を生物学的な要素とみなしています。
これらの研究者の見解では、様々な宗派を含めた宗教や文化、経済、政治、正義、圧制や、そのほかの社会生活的な側面も、社会的な要素として生活や自然環境に影響を与えるとされています。こうした区分の方法では、それぞれの出来事がこれらのカテゴリーのいずれかに当てはまることになります。例えば、戦争は光や炎、破壊的な音を引き起こすことで、水や土壌を汚染し、自然環境を破壊することから、物理的な要素とされます。
次回は、自然環境のそのほかの側面についてお話しする予定です。どうぞ、お楽しみに。