視点
20年間の米軍の占領の軌跡、アフガン撤退記念日に寄せて
米軍の最後の部隊がアフガニスタンから撤退した記念日は、20年間にわたる失敗したアフガン駐留でのアメリカの行動を振り返る1つの機会だといえます。
アメリカは2001年、テロとの戦いを口実にアフガニスタンに侵攻し、同国を占領しました。そして、その後20年間にわたる同国での失敗に終わった駐留により、アフガン国民に負の遺産を残しました。その破壊的な悪影響は今後数十年にわたり残ると見られています。
アメリカとこれに同盟するNATO北大西洋条約機構の加盟国は、当時の支配勢力・タリバンおよびテロ組織アルカイダの掃討を口実に、20年間に渡りアフガンに駐留したものの、過激派を弾圧できなかったばかりか、逆に同国でISISのようなテロ組織が活動を活発にする温床を作ることとなりました。彼らはまたアフガンで、治安悪化やテロ蔓延に加え、20年の間の実りない戦争の間に同国のインフラを破壊したうえ、何千人もの罪のないアフガン民間人を殺害し、さらに麻薬生産やその他国への輸送を増加させました。
2021年2月にアメリカとタリバンの間で調印された合意書の条項は、この合意がガニ・アフガン前政権の転覆および、タリバンの同国での政権再掌握の下地を作ったという見方を強めるものです。
米軍のアフガン撤退から1年が経過した現在も、アフガン国民に対するアメリカ政府の懲罰的な政策は今なお続いています。そのもっとも代表的な実例には、アフガン名義の資産凍結が挙げられます。
90億ドルにのぼるアフガン中央銀行名義の外貨資産がアメリカにより凍結され、しかもアメリカのこの政策にヨーロッパ諸国が協力していることは、アフガン国民の基本的な生活に深刻な問題を生じさせ、彼らは食料はおろか基本的な生計必需品の確保さえも困難となりました。
アフガン通貨価値の下落と際限極まりないインフレ率の上昇に加えて、アフガン中央銀行名義の外貨資産に対するタリバンのアクセスを遮断する米国の制裁は、アフガン人数百万人が飢餓に見舞われるといった人道上の危機の発生につながりうると、国際機関は警告を発しています。
アメリカと西側諸国は、タリバン支配という口実の下にアフガン国民を逼迫し続けていながら、実のところ自分自身が、ガニ前政権時代の政府と軍の弱体化をはじめとした様々な理由において、現支配勢力・タリバンの政権掌握に大きく関与していたのです。
イランは、昨年8月にアフガンでタリバンが政権運営を始めて以来これまでに行われた同政権当局者との二者間または多者間の会談において、アフガンでの包括的政権発足の必要性を繰り返し強調するとともに、それがアフガンにとって問題の多い現在の段階を乗り越える唯一の道であると表明してきました。
これに関しては、エルシャーディ・イラン国連次席大使も、29日月曜に開催されたアフガン関連の国連安保理の会議において、アフガンの多民族社会が正しく反映された適切な包括的政権発足についてタリバンが答えるべきだ、と強調しています。
アフガンでの包括的政権発足に関するイランの立場は、アフガンでの安定確立や危機緩和のしかるべき助けとなりうる戦略なのです。