視点
中露印ほか11カ国による極東大軍事演習、ロシア孤立化に失敗した欧米
ウクライナ戦争を理由に他国にロシアの孤立化を迫るアメリカの工作をよそに、ロシアが他13カ国が参加する大規模な陸海空の軍事演習を実施しています。
極東軍事演習「ボストーク2022」は、ロシア、中国、インド、およびその他11か国の軍隊がプリモルスキー地域(日本海に面したロシア極東の最南端であり、ロシアの海岸沿海地域)に参集することにより開始されました。この演習は今月1日から7日まで開催され、140機の航空機と60隻の船舶を含む5000の装備と、5万人超の兵士が参加します。
ロシアのユヌス=ベク・エヴクロフ国防次官 は、「ボストーク2022」軍事演習の開会式で「各国連合の合同演習は、部隊訓練の組織、管理、および作戦および戦術レベルでのそれらの相互作用に関する共通の理解を深めるのに役立つとともに、また、軍関係者間の仲間・友好意識を強化するものである」と述べています。
米国を筆頭とする西側諸国が、ロシアの孤立化や、中国やインドをはじめとした他国とロシアの関係遮断に熱を上げている中でのこの大規模な演習の開催は、ロシアの国際的地位の失墜や格下げを狙った米国とその同盟国の大規模かつ前例のない喧伝に対するロシアの勝利とみなされています。
アメリカが、ロシアにとっての貿易・経済・政治上の2大パートナーである中国とインドに対し、西側の対ロシア制裁への参加や、ロシアとの経済、安全保障、軍事関係の停止を繰り返し要請したことは注目に値するものです。しかし、中国とインドはいずれも、アメリカのこうした非論理的な要求には耳を貸さず、これまでどおり自らの国益を優先し、自らとロシアの経済、貿易、エネルギー、安全保障、軍事面での関係を継続しています。
アメリカ・ホワイトハウスのジャンピエール報道官は、大軍事演習「ボストーク2022」へのインドの参加に関する記者団の質疑に回答し、「アメリカは、ロシアとの軍事演習への、いずれの国の参加をも懸念している」と語りました。
インドと中国がアメリカの要求を無視したことは、両国がBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5カ国)とSCO・上海協力機構のメンバーであり、ロシアと広範な軍事関係を保っていることからして意味があるものです。
政治評論家のAlexander Gabuyev氏は、「中国にとって、アメリカとその世界的利益を圧迫する力を持つことを示すことは非常に重要である」と述べています。
一方、ロシアは友好国、特に中国やインドとの関係の強化により、西側の対ロシア制裁を克服しようとしています。経済、貿易、金融、銀行のほぼすべてを網羅する西側諸国の包括的な制裁により、ロシアはアジア諸国、特に世界の2台経済国とされる中国およびインドとの関係拡大に向けた幅広い努力を開始しました。
西側の新たな連携的制裁措置は、ロシアとその経済の完全な粉砕を狙いとして実施されています。中国とインドは西側陣営とは異なり、ウクライナ戦争に関する国連安保理と国連総会の決議採択でを棄権票を投じ、この問題で中立的な立場を取る意思を示しました。現在、西側からの圧力にもかかわらず、インドと中国は、経済、貿易、エネルギー、軍事、武器分野での対ロシア関係の継続を追求しています。
この点で、西側当局は繰り返し、中国とインドに対し、対露制裁への参加を促し繰り返し要求しましたが、両国は否定的な反応を示しました。実際、西側の意向に反して、中国とインドは特にエネルギー分野での対ロシア関係を大きく発展させています。
両国はまた、米国から対ロシア貿易に制限を課すよう迫られていることをうけ、中国元、インド・ルピー、ロシア・ルーブルなどの自国通貨の使用を含む、二国間の経済・貿易さらには軍事面での交流に向けて他の方法を模索しているのです。
現在、「ボストーク2022」軍事演習に中国とインド、および他11 か国が参加していることは、ロシアへの圧力と同国の孤立化を強めるための西側の全面的な取り組みに対する新たな打撃であると同時に、新興世界大国とロシアとの協力関係の拡大という、別の兆候でもあるといえるでしょう。