視点;RCEP調印、最近の中国けん制におけるトランプ大統領の最新の失敗
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RCEP調印、最近の中国けん制におけるトランプ大統領の最新の失敗
日中韓およびASEAN東南アジア諸国連合など15カ国の政府関係者が15日日曜、オンライン会合でRCEP東アジア地域包括的経済連携に調印しました。報道各社は、この日を歴史に残る日として報じています。
さて、RCEPはどのような点から重要性を持つのでしょうか?
この地域諸国が参加する経済協定の重要性に関しては、以下のような幾つかのキーポイントが指摘できます。
第1の点は、RCEPがベトナム・ハノイで開催されたASEAN地域会合の傍らで、アジア太平洋地域の15カ国により調印されたということです。RCEP参加国には、ASEANを構成する10カ国のほか、中国、日本、韓国、オーストラリアおよびニュージーランドが含まれています。
第2の点は、東アジアにおける世界最大の経済協定という、8年前に始まったこの広範な経済協力に関する協定の交渉が、18回の閣僚会議での31度にわたる協議の後、今月15日にようやく貿易協定の署名という成果にこぎつけた、ということです。
そして、第3の点は、中国および、14のアジア太平洋諸国が、ベトナムにおいて世界最大の貿易協定への調印を行ったことで、共同分野の多くににおける来年以降の関税削減に動き出したことが指摘できます。実際に、この合意のおかげで調印国間の通商における関税は削減され、共同貿易を監督する法令が編纂されるうえ、製品の輸送の下地も促進されます。
これらの点に加え、この合意に基づき、この地域的包括的経済協定に署名した15カ国の統計によりますとこの合意を参加15カ国の統計から見れば、これらの15カ国を合わせた総人口はおよそ23億人、すなわち世界の総人口の30%を占めることになるということです。また、この15カ国の国内総生産の合計は25兆ドル以上に上り、言い換えれば、これらの国による合計貿易額は世界全体の貿易額のおよそ29%にあたるということです。そして、このことは即ち、現在この協定の傘下にある地域が世界最大の自由貿易地域と化す、ということです。別な言い方をすれば、現在アメリカと貿易戦争という形で角を突き合わせている中国は、これらの国との通商により、アメリカとの軋轢・摩擦による緊張の経済的影響を緩和できることになります。
これに加えて、専門家の多くはこのような世界最大の自由貿易協定の成立が、中国にとっての一大成功になるとみなしています。アメリカは特に、トランプ政権時代を中心としたこの数年間、香港問題や新疆ウイグル自治区、台湾などの問題、人権問題などの様々な問題をめぐって、中国との間に軋轢を抱えてきました。しかし、米中間で常に基本的な対立の元凶となっていたのは貿易戦争であり、このような状況において中国は8年かけて、東アジアでの世界最大の経済協定結成の下地を作ることに成功したというわけです。別の言い方をすれば、世界最大の貿易協定成立における中国の成功は、世界で鎬を削る二大経済大国であるアメリカと中国のうち、この協定に中国のみが参加しているという状況を作り出し、それにより中国政府にとって、協定署名国との経済関係を拡大する絶好のチャンスが生まれたという点にあります。
そして付け加えておくべき最後の点は、アメリカがインド・太平洋地域に焦点を向けた政策において、中国政府の強大化と対立しようとしている中、このたびのRCEPは、世界第2の経済国にのし上がった中国の地域的な位置づけを、特にアジアにおけるアメリカの同盟国である日本や韓国との取引において、飛躍的に改善させるものと思われます。実際に、アジア太平洋という戦略的な地域の15カ国は、トランプ現米大統領の独りよがりな行動を逆手に取り、中国の地域的な位置づけの向上につながる一大貿易協定を成立させたことになります。言い換えれば、トランプ大統領が牛耳る時代の末期段階を迎えている現在にあって、アジア太平洋地域の15の経済国は、中国を中軸として世界最大の経済ブロックを形成したことになるのです。事実上、このたびのRCEPの署名・成立は、第2次オバマ前米政権時代に成立しトランプ現大統領が脱退し、もはや形骸化しているTPP環太平洋パートナーシップ協定への決定的な打撃とみなされます。TPPは、トランプ大統領が2016年に就任した直後に脱退した最初の多国間条約の1つでした。このように、アメリカはトランプ政権の末期に、世界最速で経済成長を遂げている地域である、アジア太平洋地域の2つの協定から締め出されたことになります。実際に、東アジアでこのたび世界最大の貿易協定が調印されたことは、中国制御におけるトランプ大統領の最後の大失態ということになるでしょう。
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