視点
サウジがイランとの国交回復合意に踏み切った理由
イランとサウジアラビアは、7年ぶりに国交を正常化させることで合意し、今後2ヶ月以内に相手国内にある自国大使館の業務を再開する運びとなりました。
イランとサウジの関係は2016年、サウジの側から一方的に断絶されました。サウジ政府はさらに、その後も数年間にわたりイランに対し敵対行動を取ってきました。その例には、アメリカの最大限の圧力行使政策にシオニスト政権イスラエルとともに同調してきたことが挙げられます。
アメリカの政治専門紙ザ・ヒルのウェブサイトによりますと、イランとサウジは表向きは直接的な戦争にいたったことがまだないものの、代理的なぶつかり合いで互いに反目しあってきました。
ここで、重要な疑問が浮上してきます。それはサウジはなぜ7年ぶりにイランとの国交正常化に踏み切ったのか、ということです。
第1に考えられる理由は、西アジア情勢がサウジ政権の思う通りには進まなかったことです。サウジの政治の実権を掌握している人物、特に若きムハンマド皇太子の情勢認識・解釈は、攻撃的な政策を取りイスラエルや米国と協調することでイランにその地域政策からの撤退を強いることができる、というものでした。しかし実際には彼らの考えに反し、イランとその同盟諸国は以前よりも強力になっています。イエメン戦争などはその好例です。
第2の理由には、これまでの攻撃的な外交政策がサウジに利益をもたらず、さらにはアラブの競争相手により今のサウジの優勢が奪われることにもなる、という結論に同国が達したことが挙げられます。サウジが2016年に発表した国内改革計画「ビジョン2030」を実現するためには、安定や安全保障が国内にとどまらず他国との関係においても必要となってきます。
第3の理由としては、サウジが自国の外交政策に関して、米国の土俵で動いても自身の利益につながらないばかりか自らのアイデンティティを辱めることになり、しかも米国側はそのような行動を道具として扱い軽蔑視する、と考えるに到った点が指摘できます。
第4の理由は、サウジがシオニスト政権イスラエルについての現実を悟ったことです。同政権は今日、大規模な内部危機に直面しており、当局者でさえ内戦の危険性について警告しています。これに加えて、この2年間に起きた米・サウジの間の緊張をめぐっては、同政権だけでなくシオニスト・ロビーさえも、なすすべもなかったもしくは手を出したくないと見られる反応を示してきました。
そして第5の理由には、イランの持つ力や地域的な位置づけが挙げられます。イランは疑いなく、サウジやトルコと並ぶ3大イスラム勢力です。この3国はそれぞれが、地域に影響を及ぼしたり陰謀を阻止できる様々な能力を持っています。したがって、イランに敵対することはサウジの利益とならないのみならず、同国に多くの損害を与える可能性すら出てきます。
パレスチナ人政治アナリストのウェサム・アブシャマレ氏は、「サウジは、地域で敵対的な立場をとったりイエメンで破壊的かつ無意味な戦争を開始するなどの自身の行動が誤算だったと気づき、現在はこの泥沼から抜け出すために真剣に努力しているように見受けられる。また同国は、地域および地域外の国々と国際的な政治・経済的関係を拡大するためにはこれまでのアプローチを変更する必要があり、西側および米国との戦略的同盟を守りつつアジア諸国との仲やロシア、中国、イランとの同盟関係を強化すべきだとも感じている」との見解を示しています。